22 花嫁=人妻?

 私が竜騎士の花嫁となったことに、お祭り騒ぎとなった本邸。


 試練の塔にグロリアーナ王女がいたことをボケたおじいちゃんから聞いて、熱を出して寝込んでいるって話だったなと、そのことを伝えたら癒しの精霊とかいうのをつけてくれると言っていたことを報告したんだけど、そのおかげで彼女が誘拐されたなどといった騒ぎには、ならなかったそうな。

パパが試練の塔にいる可能性をお城に伝えてもあったから、それほど騒ぎにはなっていなかったんだけど、グロリアーナ王女がいなくなったところを目撃した人もいなければ、熱も出しているということで、周囲の人はとても心配していたんだって。


 グロリアーナ王女の侍女候補としてクリフの妹さんがいたんだけど、彼女もかなり優秀な子で、ベッドに寝ていたはずの王女が掛け布団もそのままに忽然と姿を消したことに疑問を覚え、即座に侍女長のところまで走ったんだって。

廊下は走らないとか、怒られなかったのか聞いたら、そういう意味じゃないと、パパに口をタコにされた。言葉のあやってやつね。アンジー知ってる。


 侍女長から王妃様に連絡が行ってる頃に、国王陛下のもとにはパパからの第一報が届いていて、恐らく精霊王から試練が与えられたのだろうから、グロリアーナ王女がいなくなったことは絶対に周囲には知られないようにと徹底されたんだって。

そりゃ、王女様が忽然と姿を消したとか、とんでもない醜聞だもんね。


 そして、そんな話を私はアッシュフィールド公爵夫人ことディアナローズ様に抱っこされながら聞いていた。


 何かね。私が生まれたとき、娘ができたと嬉しかったんだそうな。

でも、ディアナローズ様って迫力美人な上に圧力がものすごいのよ。それで、茶会とかで年齢一桁の少女たちに怯えられて、たまに泣かれることがあったため、私と初めて会ったときもテンパっていたんだってさ。可愛いかよ。


 「これでアンジーを娘にできるわ。よくやりました、えらかったわね、アンジー」

「うん。うん?娘にできる?」

「代理母から産まれたアンジーには、ミドルネームがないだろう?つまり、公爵家の令嬢としての権利が半分しかないようなものなんだよ。でも、アンジーは竜騎士の花嫁となったことで、正真正銘の公爵家令嬢になった。竜騎士の花嫁は、父親が国王、または王位継承権を持つ者の娘でなければなれないからね。ようこそ、王族の一員へ」

 

 うわ、めんどくせ。

ていうのが顔に出ていたので、またパパに口をタコにされた。やめれ。


 そういうわけなので、アッシュフィールド公爵家の一員として認められたことで、本邸にはいつでも好きなときに遊びに来ても良くなった。

本邸に住まうことにならなかったのは、私が既に竜騎士の花嫁となってしまっており、入籍はしていないものの既婚者扱いになるため、別邸で過ごした方が良いとなったのだ。5歳の既婚者。犯罪臭しかせぇへんで?この場合は、変態はクリフかい?


 ということで、本日がめでたく結婚記念日となりやんした。

わーい、パチパチパチー。


 お昼ご飯食べたくて帰ってきたら人妻になりよったで?異世界、こわ。


 この場には、パパと奥さんのディアナローズ様、アルジャーノンお兄様とクリフもいる。

でも、本邸に移ったはずのアンドリューはいない。


 もう一度だけ尋ねてみようかと思わないではないんだけど、たぶん、はぐらかされる気がするんだよね。

何か私に隠しておきたいことがあるみたいだからさ。好奇心は猫をもバキューーーン!しちゃうじゃん?だから、あっちから話してくれるまで待とうと思ったのさ。

 あ、バキューーーン!なのは、私が猫派だからでっせ。具体的な言葉にはせんけどね。猫がつく言葉は使いたいねん。


 気になっていたことが他にもあったから、そっちを尋ねてみようかな。


 「ねぇ、なんで、アンジーの服、毎日違うにょ?」

「は?毎日、違う?そんなわけないだろう?別邸にそこまでの予算は割いてな……ローズ?」

「ホホホ……。可愛い娘を可愛らしくしていただけですわ」

「……予算は?」

「お金はかけておりませんわ。あちらにお針子をやって、わたくしのお古を使わせただけですもの。残った生地は下賜しておりましたから、とても好評でしたわよ?それに、一度しか着ていない新品同様のアンジーの服もお気に入りは除いてそれも下賜していましたから」

「いや、まあ……、うん。好評だったならいいんだけど。さすがに大きくなれば毎日違う服を用意するというのも難しくなるからね。竜騎士の花嫁となった今回のことを切っ掛けに、それは止めるように、いいね?」

「…………。」

「ローズ?」

「分かりましたわ……。でも、アンジーへの予算は増やしていただけるのでしょう?」


 なんと、私の毎日の衣装は、ディアナローズ様が用意してくださっていたのか。

大人用の服を子供服にアレンジすれば生地も残るし、何なら2着使って3着作るみたいなことも出来たんだろうし、リメイクもしていたんだろうけど、さすがに大きくなればそんなことは出来ないもんね。


 「増やすのは構わないけど、報告によると予算のほとんどを使ってないだろう?ゼクス、アンジーの予算で出費が一番多いのって何だ?」

「積み木です」

「……は?」

「積み木でございます」

「そういえば、アンジーのおもちゃ部屋に積み上がっていたよね、積み木セットが」

「ちょっと、アルジー。積み木セットが積み上がってたって何?積み木って、そんなにいるものなのか?」

「全部で27セットございますよ」


 ターナとゼクス以外のみんなが目を見開いて私を見るもんだから、私はディアナローズ様を見てみた。

パパに「どこを見ている、お前のことだよ」と言われて、また口をタコにされてしまった。


 だから、やめれ!



 






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