21 情報のすり合わせ

 お昼寝から目覚めると、呆れたパパと遭遇しやんした。

ゼクスがパパを呼びに行っている間に満腹になった私は睡魔に負けてしまったんだけど、起きるまでの間にクリフから話を聞いていたそうな。


 「まったく……。クリフから聞き終わって来てみれば丁度起きたみたいだから良いけどさ。暢気な子だね」

「おはよーござーます、パパ」

「ああ、はい、おはよう。それで?ボケたおじいちゃんって何?」

「ボケたおじーちゃん?ああ、アンジーが5歳だって言っちゃら、何か呼ぶにょ早かっちゃとか言ってたにょ」

「ちょ……っ、本当にやめて!!お前は、誰に向かってそんなことを!?」

「えぇ……。何も言われにゃかったにょ?」


 滑舌の悪い私と頭を抱えたパパの話し合いは、ゼクスとターナを仲介して行われ、私が塔で聞いた男性の声は精霊王だと知った。へぇー、と間の抜けた返事をしたら、ほっぺを潰されてタコにされたんだけど、美幼女の変顔って誰得なんだろう?


 「ちゃんと本を読ませてなかったのか!?」

「アンジェリカ様は、読んでおられました!おられましたがっ、まだ5歳にございます!!」

「旦那様、落ち着いてください。アンジェリカ様が塔におわすお方が精霊王様であると知る本を読むのは10歳を過ぎてからでございます」

「あっ、ああ……、もうっ。そうか、5歳で読む最初の絵本しか知らないのか。でも、ああっ、もう!!どうしたらいいんだよ!!」


 パパご乱心。


 とにかく塔へ呼ばれたところから余すことなく全部話せというので、真の愛がどうのって感じで初っ端から同じことを3回も言われた、みたいなことを言ったら「お手数をおかけするな!!」と怒られた。


 そんな感じで、真の愛を捧げてくれる人がいないのに飛び降りると、元いた場所に戻れるという話だったんだけど、それが私以降の人にも適用されているのかまでは確証を持てないんだな。


 「はぁ……。つまり、これまでと変わらない、で良いってことだね。確信が持てないなら下手に飛び降りて帰らぬ人になるより、一日待った方が良い」

「ねぇー、パパ。にゃんで、アンジー呼ばれちゃ?」

「パパの子だから」

「しょっかー。パパも呼ばれちゃ?」

「呼ばれるのは女性だけだよ」

「うん?あ、身投げしちゃお姫しゃま!あれ?でも、最後、逆?」

「は!?何!?まだ、何かあるの!!?」

「お姫様は塔から身投げしてから求婚されましたが、アンジェリカ様は求婚されてから塔へと呼ばれた、そういうことですか?」

「そう!さすが、たーにゃ!」


 パパは、「もう、やだ、この子」って頭を抱えたんだけど、アンジーはあなたの子やで?


 それと、精霊王に認められたということで、私とクリフの結婚は揺るぎないものとなったんだけど、まあ、横恋慕してくるような人がいた場合は、物理的にさようならされるみたいやで?

二人を引き離して精霊王様が激おこ!とか、そんな状況は勘弁らしい。


 何で、精霊王が出てくるのかを簡単に説明してもらって、私が竜騎士の花嫁というものになったことを教えられた。

詳しいことは10歳になってからだと言われ、今は与えられた課題を順番にこなしていくしかないんだってさ。


 そんでもって、クリフが与えられたドラゴンは金色だったんだけど、ランクがあって、それは私が塔から飛び降りるのにかかった時間によって下がるんだとか。

なんじゃそのタイムアタック。


 私が読んでいた絵本に出てきた身投げしたお姫様をキャッチした騎士こと王子様が、白銀、つまりプラチナカラーだったわけよ。

それは、その王子様以外に与えられたことはないんだけど、次のランクが金色、銀、銅、鉄と下がっていき、全4種類あるそうな。大会のメダルと参加賞みたいだね。


 「今までで金色のドラゴンを与えられたのは、クリフを入れて3人だよ」

「少にゃい?」

「普通は、下が見えないほどの高さから即座に飛び降りたりとか出来ないから!」

「見えてる方が怖いにょ」

「……だあぁっ!!」


 パパご乱心リターン。


 ゼクスが入れてくれたお酒入りの温かい紅茶を飲んだパパは、深いため息をつき、「アンジェリカ。いや、アンジー、よくやった。これで、お前は役目を果たした。アッシュフィールド公爵家令嬢だと大きな顔をして過ごせばいい」と、頭を撫でてくれた。


 「アンジー、お顔はちいしゃい方がいいなぁ」

「…………言語学の教師を入れるか。言葉が通じん!!」

「アンジェリカ様。旦那様は、肩を小さくせずに過ごせば良いと仰せに、えっと、言ってくださいましたよ」

「そうなにょ?わかっちゃ!!」


 何となくそんな気はしてたけど、ボケてみた。

たぶん、ゼクスは私がボケたことに気付いてんね。パパの後ろで肩を震わせてるもん。


 パパとの漫才が終わったので、クリフがアルジャーノンお兄様と部屋に入って来たんだけど、私の方へダッシュしてきたアルジャーノンお兄様は、勢いをそのままに私を抱きしめたから、グエェっ!てなった。10歳と5歳の体格差で、そんなことしたらアカンで?


 「アンジー……、無事で良かった。おかえり」

「えへへ、ただいま、アルお兄様!」


 なお、未だにアルジャーノンお兄様のことを「アルジーお兄様」とは、呼べていません。

「にゃるにー」になることはなくなったけど、「あるにー」にはなるので、もう少し待っておくれ。


 

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