17 改装するんだって

 なんだかんだとありまして、5歳になったアンジーちゃんです。


 チャラ男パパが手配してくれたお抱え劇団による演劇は、とても素晴らしかった。

あんまりセリフがなくてナレーションが多かったのは、この世界の仕様なのか、それとも新人さんでセリフを言わせると大根なのか、その辺は分からないんだけど、ちょいちょい劇団を呼んでお芝居を見せてもらえているので楽しかったよ。今までは無邪気に喜んでいたけど、内容が5歳から始まった歴史のお勉強とかぶっていたのは、気付かなかったことにしておくで?


 双子の兄アンドリューが病気らしいということから始まり、何やら天才だということで本邸に呼ばれたんだけど、その後は音沙汰もなく、誰に聞いても曖昧なお返事。

もしかして、本邸へ移ったと見せかけて実は、もう……みたいなことでもなさそうだったので、未だによく分からんのです。


 それで、アンドリューが本邸に移ったことで、別邸が私のものになったんだけど、もしかしたらクリフと婚約するにあたって邸をプレゼントされたのかな?って思うわけですよ。

だから、ゼクスはタイルを変えないのかとか聞いてきてたんだろうね。新婚夫婦の新居なのに改装しないのかって。


 そう思ったので、改装するにあたって一番何に時間が取られるか聞くと、タイルだと言われた。

時間がかかるから「タイルは?」と聞かれてたのねん……。


 何が良いのか分からないのでクリフに尋ねると、めちゃくちゃ嬉しそうに相談に乗ってくれて、コーディネーターを呼んでくれることになったんだけど、アルジャーノンお兄様は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

イチャコラしててゴメンよ。アルジャーノンお兄様にもそのうち素敵な婚約者ができるよ。


 そうそう、私が5歳になるちょっと前くらいなんだけど、何かスコンっ!てスイッチが入ったような、思考がクリアになったというか、何かが起きたような気のせいなような、そんな感じのことがありましてね。

それ以降、言葉が分かるようになったし、喋ってるのが早くても聞き取れるようになったのよ。レベルアップしたかねぇ?とかアホなこと思ったりもしたんだけど、この世界にはステータスウィンドなんぞありゃしません。間違っても「ステータスオープン!」なんぞと唱えてはいかんのだよ。分かったかい?


 あと、滑舌は、ねぇ?相変わらずよ。まあ、全く改善されていないわけじゃないけど、噛み噛み頻度は減ったくらいかな?


 クリフは私の婚約者になったことで、アルジャーノンお兄様の執事ではなく、仕事の補佐に回ることになったらしくて、一緒にお勉強してるんだってさ。

それで、アルジャーノンお兄様にはクリフの代わりに彼の弟が見習として付くことになったんだけど、どうも文より武の方がしょうに合ってるみたいで、護衛寄りの執事になるそうな。

 戦闘もこなせちゃう執事って、それは執事なんだろうかと疑問に思ったけど、クリフも強いらしいで?アルジャーノンお兄様と剣の稽古もしてるんだってさ。剣がいるような世界なんだね。怖っ。


 ということで、今日はコーディネーターが来てくれてます!

何のコーディネートかっていうと、邸の改装をするにあたって、職人が出来ることと出来ないこと、手配できる資材とか、客の意見を現実に落として込んでいってくれる人でっせ。


 「まず、こちらの見本帳は職人が作るタイルで、こちらの見本帳はタイルにそのまま使える自然素材でございます。中には同時に使えないものもありますので、ご注意ください」

「どうして、同時に使えないにょ?」

「違う素材を隣り合わせて使うと、片方が割れてしまったりといったことも起きますし、強度の違うものを使うと弱い方は頻繁に取り替えなくてはならなくなります。その際には、全てを張り替える必要が出てきますので、あまりオススメはいたしません」

「なるほど。傷んだところだけを取り替えることは出来ないんでしゅか?」

「傷んだところだけを取り替えることも可能ではあるのですが、そういうことをなさるとお金がないのかと侮られることになりますので、おやめになられた方が良いでしょう」


 お金持ちっていうか、貴族って大変ね、と思いながらパラパラと見本帳をめくっていくと、可愛らしい小花柄の模様や涼しげな模様、ド派手な熱帯植物のようなジャングル柄みたいなの、幾何学模様とか、これが床って落ち着かないのではなかろうかという物まであった。

コーディネーターさんは、5歳、10歳、15歳、となったときに改装をしていくのが基本だと言っていたんだけど、そんなにお金をかけたくないんだよね。毎年やる豪快な人もいるらしいんだけど、それ落ち着かなくないかな?


 てことで、入口付近を5歳らしく淡い色のピンク、黄色、黄緑色を使った小花柄、次に黄色と黄緑色と水色を使った小花柄、その次は水色と緑色を使った流線模様、最奥は青色と紫色の幾何学模様といった感じで年齢的なグラデーションを提案してみた。

これだと15歳くらいまで取り替えなくてもイケそうかな?と、思いましてね。いかがっスか?


 「ふむ。入口から奥にかけてグラデーションカラーにされる方はおられましたが、年齢的なグラデーションですか。そうしますと、階段は奥に行くにつれて華やかな愛らしい色合いになるようにしてはいかがでしょうか?」

「あ、それ良いでしゅね。そうしましょう。全体に柄があると落ち着かないので、奥の方は柄は控えめでお願いしましゅ」

「かしこまりました」


 主要な場所の改装が終わるまで、私は本邸がある敷地内に建てられている別宅に住まわせてもらうことになったんだけど、それって、アレですか?愛人を住まわせておく的な、そんな場所ですかい?アンジー、5歳だから何も言わないけど。


 


 

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