15 将来の進路(強制)

 ご挨拶行脚を終えて、再びいつもの生活に戻ったアンジーちゃんです。

いや、いつもと同じではないか。


 まず、変わったことと致しまして、この邸が私のものになりやんした。

何で、私の?アンドリューは?と思って聞くと、アンドリューはお勉強のために本邸に呼ばれたそうな。


 何でアンドリューが本邸に呼ばれたら別邸が私のものになるのか、ちんぷんかんぷんですが、この世界はそういう仕組みなのかもしれないと、そう思うことにしたのであります!

わーい!アンジーのおうちー!と喜んでいたところに爆弾を放り込まれて頭が真っ白になったんだけどね。


 な、な、なんと!!

アルジャーノンお兄様の執事見習いクリフ君が私の婚約者になったんだってさ!ビックリじゃない?ていうか、早くない?あたち、3歳よ?


 でもさ、クリフ君って確か11歳だったよね?あたち3歳なんですが、それは良いのかい?私が20歳も過ぎればクリフ君は28歳くらいだからそうでもないだろうけど、ねぇ?11歳くらいになっていれば恋とかに興味もあるお年頃だよね?……彼女とか、いたりするのかな?


 まあ、悩んでいても仕方がないと、だって、婚約を決めたのはパパなんだもん。私が何か言って変わるわけないじゃんね。


 ということで!!

ゼクスに、邸をどんな風にしたいか聞かれたんだけど、これといって浮かばない。


 だって、文句のつけようというか、どこをどうすれば良いのかも分からないし、もう一つ言えば訪ねてくるのはアルジャーノンお兄様くらいなわけで。

そのまんまで良くねっスか?私が下手にいじると雰囲気をブチ壊しそうで嫌なのもあるんだけどね。


 いや、なんかさ。玄関のタイル何にしますか?とか聞かれても困らない?リノベーションゲームなら選択肢出てくるし、気に入らなければ変更し放題だけど、ここ現実でっせ?やっぱ、やーめた!は、やれないっス。


 困った顔をして微笑むゼクスから、「どうして変えないのか、聞いても良いですか?」と尋ねられて、逆に変えなきゃいけない理由が分からないと頑張ってターナを介して伝えた結果、彼は額に手を添えて俯いてしまったんだけど、え?そんな悩むこと言ったかな?


 「えーっとですね、アンジェリカ様。この邸はアンジェリカ様のものになりました。ここまでは大丈夫ですか?」

「うん。アンジーのおうちお家

「……本当に分かっておられるのだろうか。それでですね、アンジェリカ様のものになったということは、自分の好きなように変えても良いということなのです」

「うん」

「…………。ですから、好きなように変えても良いのです。……アンジェリカ様のお好きな色は何色でしょうか?その色のタイルにしても良いのですよ」

「ピンクしゅき。でも、ピンクの床、おめめチカチカするゅよ?」

「あ、あのゼクス、横から失礼するわね。アンジェリカ様がもう少し大きくなられてからにいたしませんか?まだ、邸の管理ということを理解していただくには、少し、いえ、だいぶ早いと思うのよ」

「言葉さえ通じれば理解するだけの能力はあると判断したのですが、その理解出来る言葉の数が少なく、イマイチ伝わっていないようですね。分かりました。アンジェリカ様、邸の内装を変えたくなったらいつでもお申し付けくださいね」

「うん。ありがちょう!」


 何かターナと早口で喋って諦めた感じのゼクスが、変えたくなったらいつでも言ってと去って行った。

いや、だから、何でタイルを変えなきゃならんのさ!タイルだけじゃなくて壁紙とかもだけど!


 うん?あー、あれか。中古の家を買って畳を張り替えるような、そんな感じなのかしらねぇ?

まあ、張り替えない人もいるだろうけど、お金に余裕があれば張り替える人が多いような気がするから、うーむ。悩ましい。


 「たーにゃ、床、変えにゃきゃダメ?」

「そうですねぇ。このままで何も言われないのは、10歳くらいまでですので、それまでに考えるというのはどうでしょうか?」

「うん、わかっちゃ!でも、にゃんで10歳?」

「えーっと……、10歳で半成人、つまり、半分大人になったというお祝いがありまして、そのときに色々な方をお招きいたしますので、その頃までに少しは印象を……、えっと見た目を変えておかなければいけないのです」

「半分、おちょにゃ大人。クリフ、半分、おちょにゃ大人?」

「ふふ、ええ、そうですよ」


 おふっ……、ターナの視線が温かい。婚約者、つまり結婚する相手がクリフになったから、ついつい話題にしたいのね。みたいな視線やめてぇ〜。


 そっかー。10歳で半分大人なのか。あれ?でも、成人って15歳じゃなかったっけ?まあ、いいか。

10歳になったら規模が少し大きい誕生日会みたいなのをするんでしょうかねぇ。……じゅる。おっと、ヨダレが。スマンね、ターナさんや。


 ということで!クリフが婿に入ってくれることになったらしく、私はお嫁に行かなくても良くなったわけですよ。えへへ。ターナと一緒にいられる〜。

お嫁に行かないとなるとお勉強の種類がちょっと変わるそうで、来週くらいに我が家お抱えの劇団がやって来て、建国の様子を子供向けに分かりやすくしたものを披露してくれるんだってさ。……劇団も抱えてるって、マジっすか。どんだけお金持ちなんだろうね、この家。


 うふふふー、劇やってくれるんだって!楽しみ〜!!

テレビもスマホもないし、漫画もないからね。娯楽は大歓迎でっせ?まあ、漫画があってもまだ読めない文字があるので指をくわえていることになっただろうけど。


 

 

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