3 3歳になって出来るようになったこと

 よちよちコロコロしている間に3歳になりやんした。

今では普通に歩けるし、何なら走れますが、それでも誰かが視界の中にいないと泣くね。

 何でかっていうと、前にも言ったけど庭は軽く遭難しそうなほど広いんよ。

なので、一人になるのがめっちゃ怖い。というか、一度迷子になってガチ泣きして、その泣き声で見つけてもらったっていう、ね。羞恥心なんておっぱい飲んでオムツ替えてもらった時点で、どっか行ったわ。


 でもさー、夕食の時間にしか会わなくなった双子の兄アンドリューなんだけどね。ちっさい。もう一つ言うと軟弱?貧弱?双子のはずなのに目線が合わないほど私より小さい。何でや?同じものを食べてんでしょ?知らないところで、まんま食事抜かれてるとかナイっしょ?


 「リュー、いっぱい食べ!大ききゅにゃれにゃーよ!(大きくなれないよ!)」

「……。」

「むちか!(無視か!)」


 耳は聞こえてるんだろうけど、喋っているのを見たことっていうか、聞いたことないんだよね。

アンドリュー専属メイドのミザリーが言うには、「用があるときはお喋りになられますが、それ以外でお声を聞くことはございませんね」ということでした。


 しかもアンドリューの声は本当に小さいらしく、耳をすまさないと聞き取れないほどらしい。

しんそー深窓の令嬢でも目指してんのかねぇ?


 そんなアンドリューは、既に一人で本を読めるらしく、3歳にして家庭教師がつけられることが決まったそうな。

私?私は、やっと絵本を読めるようになったよ。開いて片側が絵で、片側に1行だけ文章がある幼児向けのやつを辛うじて読める程度だけど。


 どうやらアンドリューは天才らしく、2桁の計算どころか掛け算や割り算も余裕なんだって。

私?私もできるけど、この世界の数字を覚えきれていないので、問題を出されても数字が読めないっていう、ね。

 アンドリューが天才ならアンジェリカは!?みたいな感じで問題を出されたようなんだけど、書かれたものをペチペチして終わったよ。「読めねぇつーの!」みたいな?


 ということで、私は今までと同様にのびのびと生活していくことになった。

5歳になったらお嫁さんになるためのお勉強が始まるとターナに言われたのだけど、やっぱりお金持ちだと教育は早くから始めるのかしらね?


 それまでは、てちてちキャハハ!と楽しく過ごさせてもらいまっせ!

何が悲しくて幼児期から勉強を自主的にせにゃならんのだ。やれ!と言われるまでやらないからね?


 「アンジェリカ様は本当に可愛らしいわねぇ」

「あら?あなた、またサボってるの?」

「サボってないわよ、失礼しちゃうわ。アンドリュー様って大人しいというか、あまり動き回らないから人手がいらないのよ。それに加えて家庭教師がついたから、その時間は手が空いちゃって」

「ああ、今日は家庭教師が来る日だったのね。でも、本当に凄いわよねぇ〜」

「でも、ちょっと大きな声では言えないけど、薄気味悪いわよ?」

「ちょっと、ミザリー……」


 アンドリュー付きのメイドであるミザリーがやって来て、何か小さい声で喋ってる。「悪い」って最後に聞こえたけど、具合でも悪いんかな?お金持ちの家だから、具合悪くてもお医者さんすぐに呼んでくれるし大丈夫でしょ。


 私は積み木を重ねるのに忙しいので、ターナとミザリーのお喋りはあんまり聞いてない。

とりあえず、自分の目線と同じになるところまでは積んだけど……、ここからどうしようね?崩しちゃう?いっちゃう?やっちゃう?


 つーん。

ガラガラガラーーー。


 あ、おもしれぇ!

「キャハハハっ!たのち楽しいーーー!!」


 3回繰り返したところで積むのに疲れたので、ターナに積んでもらって崩したけれど、ターナさん分かってるぅー!5ヶ所に分けて積んでくれたので、つん!つん!と連続で崩して大はしゃぎしました!


 この後は、おやつを食べてお昼寝の時間です。

たくさん遊んでモリモリ食べて楽しいわぁ〜。ストレスフリーな生活マジ感謝!転生させてくれた神様らしき人?神様らしき神様?にも感謝せねば!


 そして、お昼寝から目覚めると、人の顔がドアップだった。

近過ぎて判別不能だけど、顔よね?いや、誰やねん。


 「お前が僕の妹か」

「うん?」

「弟が神童だと言うから見に来てみたが、あのくらいなら僕だって出来る」

「うん?にーちゃ?(兄ちゃん?)」

「お兄様だ」

「おに?」

「お・に・い・さ・ま」

「おにたま?」


 そんなやり取りをしていると、「ぶふぉっ!」と誰かが吹き出した。

たぶん、お兄様なんだろう少年の他にもう一人少年がいた。どっちも美少年だね。私?私は、鏡で確認済みです!美幼女です!


 「クリフ、笑うな!」

「ぶふっ、も、申し訳っ、ございません。アルジャーノン様っ」

「フンっ!……それにしても、弟より大きくないか?」

「あれ?そう……いえば、そうですね。アンドリュー様より大きいですね」


 ちょっと、レディに向かって大きいとかやめてくれるかなー?

確かに夕食のときに会うアンドリューは私よりも小さいけど。


 でも、本当に何であんなに小さいんだろうねぇ?

体が小さい分、私よりも食べる量は少なくなっているのは分かるんだけど、それじゃあ、いつまで経っても小さいままじゃない?


 




 


 

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