13『豊な森』トレルの森

 橋を渡り終えた先にシュンを待っていたのは植物が茂り、多くの野生動物が暮らす

自然豊かな森だった。


 橋の時と同じように、彼は森の中に広がる光景を楽しみながら歩いていた。

(……あれ食べられるのかな……無理かな……いや、でも以外に……)

 そんなことを考えながら森を見渡すシュンの目に、周囲の木々の異様な姿が

映り込んだ。


 木々は乱暴に傷付けられ、中には黒く汚れているものも見られていた。

 その穏やかじゃない光景に、シュンは自然と危機感を感じていた。

 

 そんな彼の前に突然、謎の一団が現れる。

 一団は疑問の表情を浮かべたシュンへ近づくと、自分たちの事情を尋ね始めた。

 この一団は近くの村の人々であり、この森に薬草を取りに入った子供が行方不明になってしまったので、大人が総出で探しているということだった。


 シュンは捜索の手伝いを申し出ようとしたが、自身の身の程をわきまえ思い

留まった。

(武器も森の知識も無い僕が手を貸しても邪魔になるだけか ……それにこの世界にだって何日もいられる訳じゃない)


 ……。

 村の一団と別れ、再び森の中を進むシュン。

 森の中は想像していたよりも深く、初めて足を踏み入れる彼にとってはコンパスが無ければ進む方向も定まらないほどであった。


 しばらく進んていたシュンの目に、先の道から明るい光が差し込んてきた。

 光が差す方向へ進み、森を抜けたシュンの手には森で採取した一束の薬草が

握られていた。

 これは村の一団と別れる際に、彼が村の人から教わった知識であった。


 無事に森を抜けられたことに安心したシュンだったが、気掛かりになっている一件を思い出し、浮かない顔で森の奥を見つめた。

(探しながら進んだけれど、村の子供には会えなかったな……)


 迷わないように念のためと木々へ張っていた糸を解き、子供の無事を

祈ろうとした時、森の奥から騒がしい声が聞こえてきた。


 シュンが警戒しながら耳を傾けると、聞こえてきたのは村の一団の悲鳴

であり、その悲痛な声は一団の身に起きた不幸を理解するには十分だった。


 一団の悲鳴が響き渡る頭の中で、シュンは木々に付けられた傷跡の事を思い出す。

 そして、力の抜けたその手から薬草の束が地面に落ちた。




※次回予告のダイスロール「4」

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