7『旅立ちの橋』ブリッジ橋
酒場での一件の後、シュンは片手に持つコンパスを頼りに歩いていた。
彼の進むべき場所を示すそれは、旅立つ際に王様から手渡されたものだった。
そしてシュンは歩きながら、あの不思議な糸について考えていた。
(……でも、あれで魔物が倒せるかな? 確かに便利ではあるけど討伐には
向かないよな)
(折角ならもう一つ武器になるような、あのお城の兵士さんが持っていた槍みたいなのが使えれば……)
頭の中であれこれ考えている内に、街の外へと続く石造りの橋へと辿り着く。
(まずは街の外へ出ろってことか……まぁ、そうだよね)
橋へと歩く人々の流れに合わせて、シュンも橋の掛かる先へと歩き出す。
橋は一般の市民から武装した冒険者まで様々な人が行き交っており、シュンも
その賑やかな光景や橋から見える景色を楽しみながら先を目指していた。
しばらく進み、橋の中間地点に来たあたりで何故か人々による渋滞が起きていた。
シュンは解消されることを望み、しばらく待機していたが一向に進む気配は
見られず、ついに痺れを切らしたシュンは意を決して人込みの間を縫って進む
ことにした。
(……背が小さくて助かった)
渋滞を抜けて安心したシュンの目に,
驚きの光景が飛び込んできた。
橋の淵へと足を掛けて声を荒らげる少年と、それを説得したり見物する人々の姿。
これを見たシュンはすぐに起きている状況を理解した。
(……きっと彼にも深い事情があるんだ、無関係の僕なんかが関わらないほうが
良いだろうな)
そう考えたシュンは速やかに立ち去るが、その足取りは重いものとなっていた。
少年にもためらいがあったのか、しばらく人々と少年の言い争いが続いていた。
しかし人々の説得も虚しく、ついに逆上した少年が橋から身を投げた。
橋から水面目掛けて落下する少年の身体。
すると突然、橋と水面の中間あたりで少年の身体は宙に浮いた。
少年を宙で支えたのは、網状の物体。
突然の事態に混乱と恐怖で暴れ出す少年の耳に青年の声が聞こえてくる。
「ちょっと暴れないで! 絡まったら危ないから!」
人々が声のする方へ視線を向けると、そこにいたのは両手で網を支える
シュンだった。
あれから立ち去りきれずシュンは慌てて引き返していた。
そして少年を支えている網は、生成した糸にとって形作ったものであった。
シュンの様子を見た橋の人々も救出に加わり、少年はすぐに橋へと
引き戻された。
シュンが網を解くと少年は青ざめた表情で座り込む。
そんな少年に対しシュンは寂しそうな表情で近づいた。
「余計な事して、ごめん」
シュンは頭を下げてそう告げると、その場から逃げ出すように橋の先へと
走り出した。
※次回予告のダイスロール「6」
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