4『酒場』べろべろ亭
王様の押しに負け、魔物の討伐を引き受けてしまったシュン。
少々の理不尽さを感じながら、彼は街の中を彷徨っていた。
(何で喚んだのが、低身長系人形作家の僕なんだ? もっと強そうな人が
いたでしょう……)
そんなことを考えていたシュンの元に漂ってきたのは、強烈なアルコールの臭い。
彼が臭いのする方に視線を向けると、そこに建っていたのは一軒の酒場だった。
(酒場? ってことは、お酒の臭い? いや、この臭いはお酒というか薬品の……)
すると突然、無意識に酒場へ近づくシュンの身体は、酒場の中から出てきた人々によって店内へと引きずり込まれた。
突然の事態に驚くシュン。
それに対し、いきなりまとわり付いてきたのは店内の酔っ払いたちだった。
制止の声を上げるシュンだったが、酔っ払いたちは全く聞く耳を持って
いなかった。
(駄目だこの人達、全く話が通じない!)
酔っ払いたちに揺さぶられ、更には強烈なアルコールの臭いにより意識が
もうろうとする中、シュンはどうにかこの状況を打開する方法を考える。
(そういえば、リュックサックの中にナイフが……いや駄目だよ!)
(きっと怪我なんて負わせたら騒ぎになるだろうし、どうしよう……)
もはや無策である彼の腕に、突然感じる謎の違和感。
シュンが腕へ視線を向けたその瞬間、彼の腕から白く光る無数の線が
周囲の酔っ払いたちに目掛けて伸びていった。
酒場に響き渡る酔っ払いたちの絶叫。
あの覚えのある感覚から、シュンは何が起きているのかをすぐに理解した。
程なくしてシュンの目に映ったのは、彼の周囲で倒れ、必死にもがく酔っ払いたちの姿だった。
シュンは正面で倒れている酔っ払いに視線を向ける。
酔っ払いを拘束していたのは、何重にも絡まった糸の束。
更には口元にも糸が絡まり、上手く声も上げられない様子であった。
(……やっぱり間違いない、あの時の糸だ)
真剣な表情でその糸を見つめるシュン。
そんな彼の耳に聞こえてきたのは、背後の席からの喝采だった。
……。
その後、シュンはこの一連の出来事を面白可笑しく見ていた酒場の人々によって
歓迎された。
無一文であることを伝えたシュンだったが、代金は不要とのことだったので
彼も素直に応じた。
そしてシュンが食事を終えた頃、いつの間にか先ほどの酔っ払いたちは
酔いつぶれて気を失っていたため、彼は恐る恐るその糸を解いて酒場を後にした。
(さすがにお酒は強すぎて飲めたものじゃなかったけど、料理は美味しかったな)
シュンは酒場を出る際に手渡されたアルコールと干し肉をリュックサックに
詰めると、再び街を歩き出した。
※次回予告のダイスロール「3」
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