プロローグ

 ある日の朝、都内の路地を歩く青年がいた。


 彼の名は駒木こまき しゅん

 この付近にある工房で働く人形作家である。


 そんな彼は今、職場へと向かうために見慣れた道を歩いている。

 

 すると突然、左腕に感じた違和感。

 気になって自身の腕を見た紃は、その光景を見て硬直する。

 違和感の正体、それは自身の腕に絡みついた無数の糸だった。

 驚いた彼に心の整理を与えるよりも先に、糸は力強く紃の左腕を引き寄せた。

 紃も初めは強く抵抗したが、糸は思った以上に頑丈であり、このまま続けて

自分の腕が千切れることを恐れた彼は、素直に糸の導く方へと向かった。


 糸に従って歩いた紃は、路地裏へと辿り着く。

 そして彼を待っていたのは、異様な光景だった。

 自分を引き寄せていた糸は、その地面から伸びたものだったのである。

 紃がその光景を不思議そうに見つめていると、足元が突然光り出した。


 光に驚いた紃は咄嗟に目を覆う。

 その直後、彼は宙を舞ったような不思議な感覚に襲われた。


 ……。

 目を開いたシュンの視界には、予想外の光景が広がっていた。

 

 豪華な造りの広い場所、足元には描かれた魔法陣。

 そして周囲には王様と魔法使いの老人、さらには武装した兵士たちが

シュンを見据えていた。

 状況が飲み込めずに目を丸くするシュンに対して、王様は一方的に状況を

説明する。


 この世界の辺境には国を脅かす脅威の魔物がおり、それを討伐するために

自分はこの城、ボーケン城に召喚されたのだということ。

 そして、7日間以内に魔物を倒さなければ元の世界へ帰ることはできないと

いうことを。

 この説明の後に王様の発した言葉は、シュンにとって予想通りの言葉であった。


 ……。

 しばらくして王城から出てきたのは、肩を落としながら静かに歩くシュンで

あった。

 そしてその手には、王様から手渡されたリュックサックが握られている。


(結局、引き受けてしまった……)

(でも、もし断ったとしても穏やかなことにはならなかっただろうな)




 ※次回予告のダイスロール「4」

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