新たな出会い

Kolto






「あーもう!あのモブ強すぎる〜!倒せない〜!悔しい〜!!!!」


悔しがりながら手配書を握りしめる小柄ながらも大斧を持つアウラ族の女性



「アミス…そんな事言ったって僕達のできる限りの事やった結果なんだから仕方ないだろ?」



そう溜め息をつきながらなだめる幻具を持つアウラ族の男性


2人とも髪の色、目の色、肌の色とも瓜二つの双子



「アロン!!もうちょっとちゃんと攻撃してよぉ!!」


「はぁ?アミスが敵の攻撃に当たるから回復しなきゃいけなんだよ!」


「アタシのせいだって言うの!?戦闘になるとあわあわしてるの誰よ!?」


「うっ…考えもしないですぐ突っ込んで行くの誰だよ!」



モブハントボードの前で喧嘩を始める2人

なかなかに邪魔である



「……すみません、そこ通してもらっても構いませんか?」



「あ…ごめんなさい…アミスもちゃんと謝れ」


「…すみませんでしたぁ」



少し離れた所でも謝り方の喧嘩をしている


やれやれといった感じでモブハントボードを見ると、Bモブの手配書を見つけるなり手に取り持っていく



「…!アロン、あの人迷わずBモブの手配書持って行ったわよ…!?」


「えっ!…すごい…見る限り1人なのに…」


「ねぇねぇ!あの人にアタシたちのも手伝って貰えないかな!?大鎌持ってるしきっと攻撃に特化した人よ!」


「確かに…僕たちだけだとヒーラーとタンクで火力不足で長期戦になってしまうからな…。アミス、たまにはいい事思いつくじゃないか」


「はぁ!?たまにはって何よ!!!」



声が大きくてこちらまで聞こえてくる

フッと笑うと双子に近付いて行くと驚いたような表情をしている



「良かったら一緒に討伐しに行きますか?」


「え!?いいんですか!?お兄さんありがとう!!」


「話し声が聞こえてきたもので…」


少し笑うと2人は顔を真っ赤にした


「アミス、声がでかいんだよ!それにありがとうじゃなくて『ありがとうございます』だろ!」


「いちいちうるさいわね!アロンの声の方が大きいわよ!!」


この2人はよく喧嘩をするようだった

ずっと2人で冒険しているのだろうか、この調子で一緒にいるのはすごいと関心した



「あぁ、自己紹介します!僕はアロン、こっちは双子の姉のアミスです!」


「よろしくね、お兄さん!」


「コルトです。よろしく」



またアロンはアミスを睨みつけると、べーと小さく舌を出すアミス


苦笑しながらも賑やかで楽しそうな1日になりそうな事に期待をし、モブハントに向かう





______________________












コルトのBモブを先に発見したものの、2人はBモブにすっかり怖気付いてしまっている

2人には休んでもらい、1人でいつも通りBモブを狩る



「す、すごい…あんな大きいやつを1人で…!」


「攻撃も全部避けて的確に相手の動きを止めつつ攻撃してる…タンクもヒーラーも無しで戦えるのか…」



あっという間に倒すと、目を輝かせた2人がいつの間にか側に寄ってきている



「い、いつも1人でモブハントしてるの!?」


「どうやったらコルトさんみたいになれるか教えてください!!!!」


「あ…ははは…まぁ、君たちの分もやりつつ行こうか…」


「「はい!!!!」」



指導をしながら少しずつ手配書のモブを狩っていくと、あっという間に日が暮れてしまった

3人は酒場で食事をしつつ酒を飲み、双子の話をゆっくり聞いていた



「お兄さんアタシたちと歳あんまり変わらないのねー!なのにあの強さ!すごいわ!いつから冒険者やってるのー?」


「10代後半ぐらいだったか…それくらいだな」


「じゃあ10年ぐらいって事ですね!さすがです!僕たちはまだ1年も経ってなくて…」


「そうか…何故冒険者に?」


「僕たちはアジムステップのダタク族出身なんですけど、旅をしている内にもっと広い世界が見たくなったんです!」


「…ダタク族?」


「ダタク族は拠点を持たず馬と一緒に旅をする部族なんです!…コルトさんはゼラですけど、アジムステップ出身ではないんですか?」


「あぁ…俺はクルザスで育ったから。育ての親はアウラでは無かったから親の事も知らないんだ」


「そうなのね…クルザスってずーーーっと雪ばかりでとっても寒い所って聞いた事あるわ!」


「確かに極寒だが…景色がいい所だ。温泉もあるし、機会があれば行ってみてくれ」


「わー!見てみたい!アロン、絶対行こうね!!」


2人はニコニコしながらこれからの冒険に期待を膨らませているようだった




「…ところで冒険者になる事には両親に反対されたりはしなかったのか?」



「両親は僕達が産まれてすぐに事故で亡くなってしまったそうで…その時に兄もいたみたいなんですが」


「でも、兄は行方不明らしいの!それをね、族長から聞いたの!もしかするとどこかにいるかもしれないって思ったらさ、アロンもアタシも会えるんじゃないかって思ったの!」


「でも手がかりは名前しかなくて…『アステル』って名前らしいです。聞いた事ありますか?」



「…すまないがその名前のアウラ族に会ったこと無いな」


「そう…やっぱり世界は広いわねぇ〜」



そういうと2人の尻尾が先程まで活発的に動いていたのが、力が抜けたようにダラりと垂れ下がる

それを見ると自然と2人の頭に手を置き優しく撫でる

2人は少し驚くもののすぐに表情が柔らかくなった



「きっとその兄さんはどこかで生きている…会えるといいな」


切なくも優しい声

本心から会える事を願う




「うん…」


撫でられるのが心地いいのか照れながらも小さく頷く2人

尻尾もゆらゆらと揺れ始めた



「じゃあそろそろ宿屋で休もう」



「アタシ、お兄さんと同じ部屋で寝る!」


「…え????」


「お兄さんは絶対に変な事しないって確信してるもの!それにお兄さんの話もっと聞きたい!!」


「ぼ、僕も話聞きたい!!!」


「…それなら…大きめの部屋を借りるか…」



部屋を借り夜が深くなっても話は続いた

いよいよ酔いも回り2人はうとうとしてきた

ベッドは2つしか無いので2人をベッドで寝かせ、自分はソファで寝ようとするとアミスが腕にしがみついてきた


「お兄さんと一緒に寝るのーーーっ!」


「あー!アミスずるい!僕だってぇ!コルトさんと一緒に寝るんだー!」


「アロンと寝たらベッド狭くなるじゃない!!」


「アミスなんて寝相最悪だろう!」


だいぶ酔っているようでフラフラとしている

話が弾んだもののその勢いで酒もすすんでいて…やっぱり止めれば良かったと後悔した



「もうめんどくさい!3人で寝よう!」


「え…」


「コルトさん真ん中!」


「…は」



引きずられベッドに寝かせられると両腕にしがみつかれてそのまますぐ2人は寝てしまった


かなり狭く抜け出そうにも身動きが取れない

アミスはまだしもアロンの力が強く動けない


「はぁ…」



諦めてそのまま身を委ねる

2人の体温が心地いい

何故だか懐かしくも感じる

今まで感じたことの無い感覚と心地良さ、酔いもあってか意識が遠のく







_____________________







目が覚めると2人はまだ寝ている

アミスは何故か頭上にいてコルトの頭を抱えるように寝ている

アロンは少し下がってコルトの腹を抱えるように寝ている

通りで苦しくて目が覚める訳だ


そして寝ている間に身動きが取れなかったせいか身体中が固まっている感じがした



今日はゆっくり休もう…そう思った



両腕が使えるようになったのでアロンを引き離し、アミスからもゆっくり抜け出し、アミスの身体を元の位置に戻す


一息つくとまずはストレッチをして身体をほぐす



2人の顔を見るととても穏やかな幸せそうな顔をしながら寝ている

そんな2人を愛おしくすら感じる


気が付くと2人に近付き角を合わせていた


角同士のゴリゴリとした振動が頭に直接響く


何故こんなに懐かしい気持ちになるのか…



ハッとして2人から離れると自分の頬に涙が伝っている


「…は?」



自分のやっている事、今起きている事が理解できていないのか頭の中が混乱している


「…チッ…また飲み過ぎかよ…」


頭を荒く掻くと涙を拭い出発の準備をする



「…コルトさん…おはようございます…」


「ふわぁ〜〜…おはよ…」



2人が同時に起きると「おはよう」といつもの微笑みで言う



「は!?アロンが何でアタシと同じとこで寝てるよの!?!?」


「げっ!嘘だろ!?最悪だ…」


「何よその言い方!!!」


朝から元気に言い合っている2人を見るとこちらも元気を貰える気がした





_____________________





「昨日はコルトさんと過ごせて良かったです!勉強になりました!」


「次会った時は強くなってお兄さんをびっくりさせるわ!」


「フ…楽しみにしているよ」


「あ!もしも兄らしいアウラ族に会ったら教えてね!!」


「あぁ…その時は必ず」


「では、失礼します!」


「お兄さんバイバーイ!」


元気に駆け出していく2人の後ろ姿を見ながら小さく手を振る


いつもの静かな日常が始まったことに寂しさを感じる



「…さて…そろそろ戻るか」






____________________






「ただいま」



「よぉ!コルト!遅かったな!」


「おかえりコルト!見て!ちーちゃんとお昼ご飯作ったの!」



テーブルの上には黒焦げになった肉と何だかよく分からない料理

キッチンはやたら散らかっている


「あぁ………はは…ありがとう…」



3人で食べ始めるとコルトはいつもと表情が変わらず食べるものの、白雪とちとせは苦い顔をして食が進まない



そんな2人を見て落ち着く日常







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