幕間「開発スタッフたちのFAOカンファレンスその2」



スタッフA「おいおい、マジかよ」


スタッフB「なんで、あの人ダンジョンの入り口見つけちゃってるんですかね?」


スタッフC「流石はFAOナンバーワンプレイヤーね」


スタッフD「てか、止めなくていいのかあれ?」


スタッフE(以下スタッフ省略)「ダンジョンの入り口見っけただけだろ? なら問題ないんじゃないのか?」


A「そもそも、あそこってプレイヤーは入れなかったんじゃないのか?」


B「それは、ダンジョンに入るための扉には制限ありましたけど、今彼がいる場所自体には何の制限も掛かってませんよ」


C「どうするのよ!? まさかこのままダンジョンに入っちゃったりしないわよね?」


D「それはいくらなんでもプロテクト掛けてんだろ? そんな初歩的なミスをするわけが……」


E「あっ、なんか合言葉言って開けようとしてるみたいだぞ?」


C「ふふ、“開けゴマ”ですって、彼もなかなか可愛いところがあるのね」


A「でも、扉を見た時に真っ先に言いたくなる言葉だよな」


B「そうですね」


D「右に同じく……」


E「おい、なんか扉開いたっぽいんだけど?」


ABCD「「「「え?」」」」


A「おいおい、マジかよ!? どうなってんだ? 誰か説明しろ!」


B「あー、あれは多分プレイヤーだけ認識して、それ以外は制限掛けてないタイプのプロテクトっぽいですね」


C「それってつまり」


B「プレイヤー以外の、例えば彼と一緒にいるクエックなどのNPCが近くにいた場合、その存在を認識して扉が開く仕様になってますね」


D「な、なんでそんな仕様になってんだよ!?」


B「そもそも前提条件として、“プレイヤーはNPCと行動を共にしない”という制限がありますからね。NPCの入場を制限するというプログラムを惜しんだ結果が、今の状況を生み出してしまったのかと……」


A「だったら、あのクエックはなんで彼にくっ付いてるんだ?」


B「……惚れたんでしょうね」


C「……惚れたのね」


D「……惚れたな」


E「……愛に種族は関係ないということだね」


A「おいおい、それで片付けちまうのかよ……」


B「おや、モンスターを発見した様ですよ」


C「まあ鎧袖一触でしょうね」


D「まあ最初は雑魚しかいないからな」


E「フレイムバレットでコボルト一掃か……」


A「わかってたこととはいえ、これはモンスターが可哀そうだな(笑)」


C「ブルーボアが、ヘッドロックで絶命しちゃってるわよ」


B「それよりも彼って剣士ですよね? なぜ剣を使わないんですか!?」


D「拳(けん)は使ってたけどな」


A「誰が上手いこと言えと言った?」


C「次はブルーファングね、次こそはちゃんと剣を使うでしょ」


B「……鯖折り、ですね」


A「鯖折りだな」


D「てか各階層を守るボスをプロレス技で倒すとか、どんだけだよ!」


E「さすが彼だね、誰もができないことを平然とやってのける……そこに――」


ABCD「「「「痺れなくてもいいし、憧れなくてもいい!!」」」」


E「言わせてくれてもいいじゃないか!!」


B「彼の放ったフレイムストームが暴走してます」


D「確かあの魔法って、一定確率で味方を襲うんだよな?」


C「どれくらいの確率だったかしら」


E「確か、7%だったような」


ABCD「「「「なんでいつもニコルソンしか見てないお前がそんなことを知ってるんだ?」」」」


E「俺の扱い酷くないですかね皆さん!?」


A「ってか、下に落ちたぞ!」


B「どうやらスイッチ式の落とし穴が勝手に発動したみたいですね」


C「それより、彼は無事なの!?」


D「まっすぐ落ちてるなこりゃ」


E「このままだと、かなり下の層にまで落ちるな」


B「……66階層ですか」


A「これはまたとんでもないところに落ちたな」


C「てか、未実装なのになんでそんなに深層まであるのかしら」


E「実は10階層から60階層まではまだ作ってないってダンジョン担当が言ってた記憶が……」


D「じゃあなんで彼は66階層まで落とされてんだよ?」


E「なんでも61階層から下の階層の設計に力を入れ過ぎて間の階層がまだ手付かずらしい」


B「それは僕も聞いてましたけど、まさかホントだったとは……」


C「大丈夫かしら彼?」


D「なあ、66階層に出てくるモンスターってどれくらいの強さなんだ?」


A「ああ、それは俺も気になった。ダンジョン担当が力入れてるってんだからかなりヤバイんだろ?」


E「確かレベル帯が110くらいで、今の彼よりも強かった気が……」


ABCD「「「「ゴクリ……」」」」


B「ああ、何か出てきましたよ!?」


C「な、なによあのムキムキ筋肉だるまは!?」


A「見た目完全にミノタウロスだな」


D「だが、纏ってるオーラが半端ないぞ」


E「あれって確か、レベル200近くあるミノタウロスだったはず」


ABCD「「「「な、なんだってぇーーー!!」」」」


D「おいおい、どんどん距離が近づいてるぞ」


C「このままじゃ追いつかれちゃうわ!」


A「なにか、なにか手はないのか!?」


B「そんな手があるならもっと早く使ってますよ!」


E「こうなったら、ポチッとな」


D「おい、あの首飾りってまさか……」


A「おいE! お前なにプレイヤーに干渉してるんだよ!?」


C「そうよそうよ、私だって我慢してるのにぃー!」


B「特定のプレイヤーへの干渉は規則で禁じられてるじゃないですか!?」


E「それは通常時という注釈が付いた規則だろ? 今の彼の状態が通常時だと断言できるのか?」


B「確かに、未実装のダンジョンでボスクラスのモンスターに追いかけられる状態が普通とは思えませんが……」


C「それを決めるのは上であって私たちじゃないしね……」


D「それにお前の渡したアイテムって結構使えるやつじゃないのか?」


A「まあ、やっちまったもんはしょうがないし、この際見なかったことにしよう」


C「かなりスピードが上がったみたいね」


D「これなら逃げられそうだな」


B「そうですね……って大ジャンプしましたよ!?」


A「なんで跳んだんだ?」


E「多分、罠を警戒したんじゃないか?」


C「あ、ミノタウロスが追いついて来たわ」


D「なんで逃げないんだ?」


B「あ、危なーい!」


ABCDE「「「「「ええええええええええええええええ!!」」」」」


赤羽「こほん、君たち仕事をサボって何をやっているのかね?」


ABCDE「「「「「あ、赤羽代表!!」」」」」


赤羽「仕事をしないのならそれでも構わないが、その分給料から天引きさせてもらうからそのつもりでな」


ABCDE「「「「「す、すいませんでしたぁああああ!!」」」」」


赤羽「はぁー、まったく……それにしてもあのミノタウロスから逃げ切るとはさすがはジューゴ君だね。その調子でゴブリン軍の相手も頑張ってくれたまえよ、ははは」




 こうして、彼らのカンファレンスは思わぬ形で幕引きとなってしまった……。




――――――――――――――――――――――――――――――――



 【作者のあとがき】



 皆さんお久しぶりです。こばやん2号です。

 更新が遅くなってしまい大変申し訳なかったですが、一先ず第十二章の幕間だけでも投稿しておこうと思い頑張って仕上げました。



 さて、気付けば最後の投稿(2019年6月30日)から七か月経過してしまったわけですが、次章からいよいよゴブリン軍団との戦いに入って行きます。



 二週間という短期間でジューゴがどれだけ仕上げてきたのか。そして、十万以上のゴブリン軍に対抗するためのプレイヤーは集まったのか? すべては第十三章で明らかとなります。



 それから、次の章から視点をジューゴ視点に切り替えていこうと思うのでよろしくお願いします。(やっぱり、この作品はジューゴ視点の方がいいと思ったので)



 それでは皆さん、次回更新を楽しみにお待ちください。では第十三章の幕間でまたお会いしましょう。 ではでは!

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