第75話
【作者のあとがき】
パラメーターの項目を一新しました。
()内は20%の補正が掛かっていない時の数値で《》内の数値は装備している装備品の+合計値となってます。
一番左の数値が20%補正が掛かった最終的な数値です。
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「……なんであんたがここにいるんだ?」
俺が手ごろな宿屋を見つけ、そこに入った時に受付をしている男を見た時に咄嗟に出た言葉だ。
なぜならばそこにいたのは俺が始まりの街で泊まっていた宿の受付をしていたあの無駄に身体つきのいい店主と顔も身体も何もかもが同じだったからだ。
「む? すまんが俺と兄ちゃんは初対面だと思うが?」
「いやいや、始まりの街で宿屋やってたじゃん!」
「始まりの街って……ああ、そりゃ俺の弟だ」
「……双子なのか?」
「いいや、アイツの方が三つばかり年下だが」
……いやいや、ふざけんなふざけんな。似た者兄弟にも程があんだろ。
お前らは某アニメに出てくる看護婦さんか? ジ〇ーイさんならぬ、ヤドシュ(宿主)さんなのか?
まあ他人の空似という言葉もあるから、可能性としてはゼロではないのだろうがドッペルゲンガーと言われても俺は信じるぞ。
ともかくヤドシュさん――俺が勝手に呼んでるだけであって、彼の名前じゃない――の事はいいとして、部屋を確保しよう。
俺はヤドシュさんに部屋を借りたい旨を伝え、必要な手続きを取った。
ここのヤドシュさんも始まりの街にいたヤドシュさんと同じく細かいことは気にしない性格のようで、自分の仕事を淡々とこなしていた。
彼から鍵を受け取るとそのまま部屋へと向かう。
木造の階段を十数段登った先にあった六つの部屋の内の一室に鍵を使って入ると、そこも似たもの仕様なのか、始まりの街で泊まった部屋と内装が全く一緒だった。
まあこの世界が仮想現実のゲームであるから、そういう細かいディティールにこだわる必要はないと思うが、もう少しひねりを入れてもいいのではないだろうかと思ってしまう。
「ま、前の部屋と変わらないのはいいことだし、気にするだけ無駄か……」
「クエー?」
ああそうだった、今回の旅からこの焼きとり――コホン、クーコが仲間になってたんだったな。ヤドシュさんとのやり取り中は、肩に止まって鳴かなかったから完全に装飾品扱いになってたぜ。
こいつを見てると一昔前にちょっとだけブレイクしたお笑い芸人さんを思い出す。
たしか一発ギャグがあった気がするが、なんだったかな……ってかそんなことはどうでもいいことだな、失敬失敬。
とりあえず部屋の内装は変わらないので、次に俺は収納空間から適当なアイテムを取り出し並べていく。
食材系のアイテムは取り出すと鮮度が落ちていくので、あとで取り出すことにしてさっそく始めていこうじゃないか。
……うん? 何を始めていくかって顔をしてるな。……ああそうだった言ってなかったな。
順を追って説明しよう。
まず、これは話したと思うが多人数参加型という種類のゲームには監視者《ウォッチャー》と呼ばれる存在がいる。
上位プレイヤーや特定のプレイヤーに対し、バレないように尚且つゲームの規約に反しないような付きまとい行為をして、ゲームの情報やプレイヤー個人の活動を観察する行為を生業とする所謂“暇人”だ。
その行為自体は規約に反していないので、悪質行為にはならないのだろうが俺個人の意見を言うなら「鬱陶しい」の一言に尽きる。
向こうが合法的にその監視行為を行っている以上、実力行使に出ればペナルティを受けるのは間違いなく先に手を出した俺の方になってしまう。
もっともこのゲームにはプレイヤーを直接攻撃して戦闘不能にする行為、俗に言うPKがないので精々がPvPを吹っ掛けるという嫌がらせのような八つ当たりのようなことができるくらいだ。
そして、PvPは両プレイヤーの合意によってのみ許可されるものであるため、相手が拒否をすればそこでおしまいということになる。
しかも相手は、確実に俺よりも格上の隠密行動に特化した職業を有する手練れであるため、接近する事すら難しいだろう。
鬱陶しいから何とかしたい、でもそのためには近づいてPvPに持ち込む必要があるが近寄ることもできない。
よしんば近寄れても、PvPを拒否されれば八方塞がりという負の螺旋が完成されてしまっている。
そこで俺は考えたのだ。
奴らを排除する事も、不満をぶつけるための八つ当たりをすることもできないのなら、看破困難な新たなスキルや魔法を修得してしまおうと。
見つかるから厄介なのであれば最初から見つからなければいいのではないかという結論に至ったのだ。
だがそのために必要な事はなにか……それは現在持っている盗賊と鑑定士のレベル向上が必要だ。
さて、くどくどと長い講釈を垂れたが、ここからが本題だ。
現在俺が修得している隠密行動に関するスキルは二つ、【気配感知】と【隠密】だ。
盗賊などの相手の位置を特定する能力を持たないプレイヤーに対しては、今修得しているスキルで十分対応可能だ。
だが前にも説明したように、このFAOではスキルや魔法の効果の優先度は修得している職業レベルの高い方が優先される。
そして今俺を監視している監視者は俺よりも職業レベルの高いプレイヤーであるため俺の【隠密】スキルを容易く看破してしまう。
加えて看破された場合、隠密状態が解除されてしまい他のプレイヤーに対しても無防備になってしまうのだ。
そこで今俺が必要とする能力は三つ。
一つ、格上のプレイヤーの看破能力を欺ける能力。
二つ、見破られた場合でも隠密状態が解除されない能力。
三つ、そもそも自分の存在を認識できないようにする能力。
以上の三つが俺が現在修得すべき能力だろう。
まあ一つ目と三つ目は似たようなものだが、結局のところは“他の誰かに見つからないようにする能力”が必要だという事だ。
「簡単に言うけど、それができれば苦労はないんだろうな」
まさに言うは易し、行うは難しである。
だがこのまま何もせずただ奴らののさばらせておけば、俺のまったりのんびりプレイの道は閉ざされてしまうだろう。
だからこそ、だ・か・ら・こ・そ! 新たな能力を取得せねばならぬのだ。
【したい】、【やりたい】ではなく、【やらなければならない】のだ。
“ウォント”ではなく“マスト”なのだ。
英会話のレッスンはこれくらいにして、さあこれから地獄の鑑定デスマーチが始まる。
「【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】【鑑定】……」
その後予定していたログアウトの時間一杯まで自分が持っている手持ちアイテムの全てをひたすら鑑定しまくるという傍から見たら常軌を逸したプレイを敢行した。
そのお陰もあって、鑑定士のレベルが一気にレベル22まで上昇したのは僥倖だった。
そして、【鑑定士の心得】、【鑑定詐称】という新しいスキルを覚えることに成功した。
ちなみに前者は常時発動型のスキルで、鑑定の成功率が上昇するスキル、後者は鑑定スキルを使った相手に正しい情報を読み取られないよう誤魔化すスキルだった。
(うし、これで隠密が解けても他のプレイヤーに見つかりにくくなったぞ)
隠密が解除された所に鑑定スキルを使えば一発で俺だとバレるが、この鑑定詐称を使えば鑑定情報を偽装できるようになるため少なくとも囲まれる心配はなくなりそうだ。
だが他のプレイヤーには見つからなくなったのはいいが、肝心の監視者からは依然として付きまとわれることになるため、他にもスキルの修得が必要になってくる。
とりあえず、今日は鑑定詐称をゲットしたのでよしとしようじゃないか。
そう一人納得すると俺はアイテムを片付け、ログアウトした。
余談だが、夜這いがあることを想定してドアノブにはもちろん椅子を噛ませた。
※今回の活動によるステータスの変化
【プレイヤー名】ジューゴ・フォレスト
【取得職業】剣士、鍛冶職人、料理人、盗賊、魔導師、鑑定士
【各職業レベルと補正値】
【剣士レベル37】
《パラメーター上昇率》
体力 +228
力 +160
物理防御 +148
俊敏性 +87
命中 +68
【鍛冶職人レベル35】
《パラメーター上昇率》
体力 +217
魔力 +85
力 +138
命中 +52
賢さ +60
精神力 +111
運 +8
【料理人レベル33】
《パラメーター上昇率》
体力 +165
魔力 +107
力 +72
命中 +60
精神力 +66
【盗賊レベル31】
《パラメーター上昇率》
体力 +145
魔力 +68
物理防御 +85
俊敏性 +142
命中 +107
賢さ +67
【魔導師レベル7】
《パラメーター上昇率》
体力 +14
魔力 +47
命中 +10
賢さ +34
精神力 +27
【鑑定士レベル22】
《パラメーター上昇率》
体力 +66
魔力 +66
物理防御 +66
命中 +66
賢さ +66
精神力 +66
運 +7
【各パラメーター】
HP (体力) 1108(923)
MP (魔力) 532(443)
STR (力) 456(380)《+82》
VIT (物理防御) 373(311)《+125》
AGI (俊敏性) 286(238)《+75》
DEX (命中) 445(371)《+48》
INT (賢さ) 284(237)
MND (精神力) 403(336)
LUK (運) 42 (35)
『スキル』
【剣士】
十文字斬り、身体能力向上、縮地、地竜斬、天空斬
【鍛冶職人】
鍛冶の心得
【料理人】
時間短縮
【盗賊】
気配感知、隠密、盗賊の心得
【魔導師】
魔道の心得
魔法:ファイヤー、アイス、サンダー
【鑑定士】
鑑定士の心得、鑑定詐称
称号:勇猛なる者、武闘会の覇者、魔物の友
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