2.固有魔術”代償”

 物事には、得るものと失うものが必ず存在する。


 呼吸をすることで、酸素を得て、呼吸という動作に使うエネルギーを失う。何かを得るかわりに何かを捧げる失う、これが代償のシステムだ。


 だから冥界に存在するただ一人の彼の固有魔術”代償”の根幹はこのようなものであるはずだ。いや、あるべきだ。


 だが、彼は異質イレギュラーであった。


 ”代償”において、虫の命と人の命は等号イコールで結ばれないものである、


 だが、彼の固有魔術”代償”は価値を強制的に等しくする。

 それが彼の強さの根源である。

 そして今、”代償”を行使しようとしていた。


「”代償”」

 

 そうして彼は、[種の殲滅の経験]を捧げて[断罪の剣]を得た。


 断罪の剣の効果は、罪を断つこと。

その剣で彼はあることをしようとしていた。


穢れなき罪なき者には、死後に天界への招待状が贈られる。

彼自身が死を迎える騙すことをしても天界へは行けるのだろうが、魂としていくのだから行動に制限がかかる簒奪できない


 だから別の魂を使うことにした。

 そう、意思のない、魂の器を。


 魂を漂白しても、その魂に刻まれた記憶、は消えない。

 だからその罪を消してやる。


 奪おうとするものは魔術だ。だから物質から乖離した魂を使ってそれを成しうることができる。


 「”断罪”」


 断罪の行使は限りあるものに許された特権。

 人の身で行使すれば罪をすべてその身に受け入れ、滅びへと歩み始める。    

 だから剣で代行するのだ。


「”存在理由last order”」


 刻んだ命令は「天界へ行き、神の瞳を手に入れること」であった。

 


 


 


 

 

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