力と代償

いちげつとーか

始まりの始まり

1.最後の欠片

 世界最高峰の山の山頂には、小屋がある、と言われている。

 言われているだけであって、未だに到達したという記録は残されていない。

 飛竜が蔓延り、紫電が降り注ぐなど食物連鎖の頂点にのみ許される場所に人が住んでいるなどありえない。やがてこの噂は噂として昇華され、霧散していった。

 だが、そこには”最強”がいた。


「”死”」


 彼がそう唱えると対象の生物は有機物しがいと化す。


「”生誕”」


 彼がそう唱えると対象の有機物しがい熱を帯びるふっかつする


~冥界~

 ここ冥界は一人の人間、いや、捕食者におびえていた。

 それは悪魔を食べて喰らって嚙み砕いて飲み込んで吸っていた。悪魔えさは捕食者に抗おうとするも、止めることは誰一人として出来なかった。

 次第に悪魔の数は減少していき、遂には一匹のみとなった。


「な、なんだよあいつは!悪魔を食うだなんて!もう俺以外に仲間はいなくなってしまった!なんとか生き続けているが、これからどうすれば・・・」


 悪魔の彼には固有魔術”転生”があった。使用者が死ぬと彼より低位の同種を支配し、自我を取り戻す。ただし転生後は元の力を取り戻すことはできず、その体の力しか使うことはできない。既に彼は3度転生した後であった。


 そして、今、本当の死が訪れようとしていた。


(見つけた)


「!!!”敗者の権利loser pride”」

 

 固有魔術”転生”の派生魔術”敗者の権利”を発動し、一定時間、両者攻撃のできない制限をした。


「これで時間稼ぎをしている間に逃げなければ・・・!」


  だが、捕食者最強は彼に逃げることを許しはしなかった。


「”永遠の白銀世界とわのしろ”」


 それは生命を漂白し、魂を白、すなわちただの魂の器となる。

 そして、冥界からは悪魔が絶えた。



 


 


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