『星空に託して』 その6


 人の恋路の邪魔をするなんて、そんな邪道は、やってはなりません。


 むかしから、そう言われます。


 すると、恋人らしきふたりが、この展望台を目当てにやってきました。


 もう、深夜一時ですよ。


 よいこは寝なければならないでしょう?


 いま、この場所は、わたくしと、おじいちゃんが占領中ですよ。


 『あれ、やだなあ、ホームレスのじいさんか。ちょっと、あんた、向こうにいってくれよ。ここは、ぼくらのためにあるんだ。あんたは、床下でいいだろう。』


 『そんな。こんなのが、床下にいるなんて、耐えられないわ。』



 な、なんと、好き放題を。


 良いでしょう。


 人間に、姿を見せるためには、いささか、エネルギーが、必要です。


 仲間内では、『出現』と、よんでいますが、それは、宮沢賢治さまに、ルーツがあるとか。


 お姉さんの受け売りですけど。


 そこで、わたくしは、ぐわ〰️〰️!と、深呼吸いたしまして、不意に、ふたりの前に、出現したのです。


 『ぎょ。ぎわ! な、な、な、ぎえ。逃げよう。』


 『きょわ〰️〰️〰️、で、でましたあ。』


 ふたりは、慌てて、坂をかけ降りて行きました。


 ふん、良いきみだ。


 わたくしと、おじいちゃんの邪魔はさせない。


 『なに、やってんだろ。なんだい、迷える幽霊さんか。ま、ぼくには、縁がないな。いいか。』


 一応、分かってはいるらしいなあ。


 わたくしが、見えたはずです。



 『やっぱ、お薬がいるね。ここなら、良いな。彼女と、決裂した、その場所だから。その、ベンチだから。すべてのおわりで、すべての始まりだったから。ここ、こそが、最後にふさわしい。ここで、ぼくの恋は、いや、人生は、終わったんだから。』


 おじいちゃんは、そんな、のんきなことを言っています。


 え?


 まてまて、それって、最終宣言かしら。


 やったあ。素晴らしい。


 覗いてみれば、おじいちゃんの持っているずだ袋のなかは、お薬が、山盛りになっておりました。



     💊 💊 💀 💊💊

 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 

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