『星空に託して』 その2
『幽霊にも、あつい恋が欲しい。』
そうなんです。
しかし、恋人が現れる前に、わたくしは、この世のものではなくなりました。
もうすぐ、この世のものではなくなりそうな、このおじいちゃんが、何を想って、毎晩、墨絵のような、海と島を眺めながら、座り込んでいるのか。
近くに、コンビナートがあるせいで、ここは、真夜中でも、真っ暗にはなりません。
しかし、わたくしは、この山から向こうには、なぜか、移動できずにいます。
あの、もと大学生のお姉さんが言いますには。
『あなたは、エネルギーを、この街から得ているタイプです。そのつながりが切れないと、その先には行けないのではないかと、推測します。原因なんて、わからない。ただ、死にかたに、影響されてるのではないかと、考えたりもしています。ちなみに、あたしは、わりに、自由に動きます。そのぶん、多少、不安定です。もし、移動先で、エネルギーの取得にしくじったら、消滅するかも。』
お姉さんは、ここしばらく、姿が見えません。
消滅したのかしら。
あるいは、昇天できたのか。
おじいちゃんは、回りが見えてるのか、なにかの思い出だけしか、見えていないのか。
『あのう。こんばんはー。お話ししても、いいですかあ?』
でも、返事はありません。
『あのう。聴こえませんか?』
だめかなあ。
すると、突然、おじいちゃんが、言ったのです。
『ああ、ここで、はなしをしたのが、二人で過ごしたさいごだったなあ。』
『え?』
『恥ずかしいことでした。でも、すでに、事は終わりになり、針は落ちていました。』
なんだあ、そりゃ。
『あのう。聴こえてるんですよね。』
やはり、直接の反応はありません。
『でも、その前に、昼間のここで、ぼくは、見るべきではないものを、見てしまった。あれは、破滅の始まりだった。最後の審判の鐘が鳴り、らっぱのおとが、頭じゅうに響き渡った。』
おじいちゃんは、なんだか、苦しんでいるようでした。
わたくしの頭にも(アタマガあるかどうかは、別としても)、なぜか、衝撃的な鐘が、らっぱが、鳴り渡りました。
そのあたり全部に、爆弾が落ちたみたいです。
『これって、普通は逆だよな。幽霊が、生きてる人間の苦痛の音に、脅かされるなんて。』
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