第62話 本当に輸入品でいいのか?

 今回は、激震が走りまくっているアイドル界(ゆーてジャニーズ)について語ります!



 今年のジャニーズ事務所は、例年以上に動きがありました。


 10月28日、長らくJr.として活動していたTravisトラビス Japanジャパンが、ジャニーズ初の世界デビューを達成。


 11月1日、ジャニーズ事務所の副社長と子会社ジャニーズアイランドの社長を兼任し、後進の育成に力を注いでいたタッキーこと滝沢秀明氏が退社。


 11月4日、絶大な人気を誇るKing & Princeの平野紫耀しょうくん、岸優太くん、神宮寺勇太くんが2023年に脱退・退所を報告。


 12月27日、休養していたSexyZoneの最年少、マリウスようくんが年内での活動終了、及び芸能界引退を報告。


 12月26日には、タッキーが命名したJr.のユニット、IMPACTorsインパクターズの全員退所疑惑を文春が報道(公式発表はないので不確実です)。



 10月からの3ヶ月、ジャニヲタには処理しきれない量の情報が錯綜・投下されました。トラジャのデビューしか嬉しい報告がないのが何とも悲しい……。


 特にタッキーの退社は衝撃を突き抜けました。

 Jr.の22歳定年制など、新たな制度を立ち上げて後進の育成に取り組んでいたからです。

 Jr.としてデビューだけを夢見る時間と、一般社会に帰る時間のバランスを考えたり、厳しい練習を乗り越え力をつけたJr.には目をかけたりなど、非常に説得力のある指導者でした。彼自身がアイドルだったからこそできた指導です。


 タッキーの力を感じたエピソードが一つあります。

 生前のジャニー喜多川氏が「YOU達デビューできないよ」と言い放ったユニットが、実は今のSnowManなんです(当時は6人組)。

 病床に伏すジャニー氏との調整を重ねながら、ラウールくん・目黒蓮くん・向井康二くんの3名を追加し、9人組としてSnowManをデビューさせたのがタッキーだったのです。今じゃ2022年最もアルバムを売り上げたユニットに成長するなど、タッキーの売り方が非常に才能に溢れたものだったことを思い知らされます。目黒くんが出演したドラマ『silent』も人気すごかったし。天国でジャニーさんがどんな顔してこの現象を見ているのか気になりますもん。笑


 そんな若き経営者が、なぜ自分の育った場所を去ることになったのか。

 これは色んなメディアが考察していますが、真実は本人しか分かりません。

 まぁそれを言っちゃあおしまいよ、という感じではあるのですが、私から言えることは、きっと前向きな退社ではなかっただろう、ということです。あれだけ責任感の強い彼が、自分で作った育成システムも、精一杯目をかけたJr.のデビューまでの道のりも中途半端なままで、仕事を投げ出すはずがないからです。


 キンプリだってそうです。

 常にメンバーみんなで一緒に仕事することを大事にしてきたのに、他のデビュー組と比べてもかなりメンバー同士の仲が良かったのに、不自然にメンバーが分裂する。そんなこと、彼らが自ら望んだこととは考えられないのです。

 案の定、各メディアが様々な考察を繰り広げた他、ティアラと呼ばれるキンプリのファンの一部が事務所幹部による陰謀論を唱え出す事態にまで発展しました。



 複数人で歌って踊って、俳優まで担う、完璧な男性アイドル。

 そんな革新的なアイドル像を作ったのは、ジャニーズ事務所でした。

 半世紀近くにわたって日本のテレビ局を席巻し、芸能界に絶大な影響力を及ぼした事務所です。だからこそ、多少の特別扱い(出演枠をかなり増やすとか、ジャニーズだけネットでの画像使用を許可しなかったりとか)が許されてきたんだと思います。


 ですが、ジャニーズ以外のボーイズグループも乱立し、昨今のアイドル市場は急激に拡大。K-POPもかなり日本市場に食い込んできて、純国産アイドルもうかうかしていられない状況になりました。


 何より、日本の若者がアイドルを目指して「韓国に武者修行に行く」「韓国のオーディションを受ける」という現象が起き始めたことが、何よりの革命だと思っています。日本ではなく韓国で認められて、初めてトップアイドルとなれるのだと、そういう意識が浸透しているように思えるのです。

 その意味でもジャニーズ事務所は正直非常に危うい立場にいると思いますし、こういった潮流をタッキーは敏感に感じ取ったからこそ、ジャニー氏亡き後から現役ジャニーズのSNSアカウントやYouTubeチャンネルを開設したり、ネット上での画像掲載を許可したりなど、新たな動きを取らざるを得なくなったのだと考えられます。


 端的に言えば、半世紀前と比べて、「ジャニーズに所属している」ことの価値が薄れてきたということでもあると思います(言い過ぎかな)。

 公開オーディション発信で出てくるアイドル達は、その瞬間に最も力を持っているカリスマプロデューサーに認められてデビューを許されている。一方でジャニー喜多川というカリスマを失ったジャニーズ事務所は、同族経営の難しさに直面している。

 ジャニーズの場合、事務所内でユニットごとにレーベルやプロデューサーの系統が全く異なることも課題としてあると思います。だからこそ、同じ社内のプロデューサーAにはこのユニットがハマるけど、プロデューサーBにはハマらないから売り出してもらえない。そういったねじれが起こるのです。いわゆるこうした分業体制による同一社内での意見の対立が、所属タレントの不信感を生み出しているのだと思います。


 ジャニーズJr.はともかく、デビュー組にとっての退所は非常に重たい意味を持ちます。

 早ければ小学生から所属していた場所を離れるのです。社会=ジャニーズだった世界から離れるのです。芸能界で圧倒的な権力を持っている事務所から飛び出すのです。相応の覚悟が求められるのは必至です。

 だって、昔ユニットごと退所したJr.は未だに地上波に出られないのですから。そうした事例を見ているのですから。

 それでも退所を選ぶ人間が大量に出ているのです。これがどういうことなのか、真剣に考えなければならない時はもう来ているはずです。


 このままジャニーズ事務所が体制を変えないなら、それはそれでいいと思います。その価値観に見合う人間が所属し続けるだけです。同時に、価値観に合わないだけの有能な人材が大量に流出するだけですから。タッキーとキンプリを失うのは、かなり大きな損失だと私は思うんですけどね。あれだけの輝きを持った人間を流出させるなんて、勿体無いにも程がありますよ。ダイヤモンド何個ゴミ箱に捨てたんだよってレベルです。



 タッキーさえも失った事務所はどこへ向かっていくんでしょう。

 日本の男性アイドル業界は、どう変わっていくのでしょう。

 このままでは、海外に完全に市場を奪われるのではないか、という大きな危機感が私にはあります。

 アイドルは「」になります。


 日本のファンに夢を、希望を与えるアイドルは輸入品でいいのか?

 言葉が通じない舶来品になってしまってもいいのか?

 もう日本の文化として誇らなくていいのか?


 2022年の年の瀬、私はそんなことを思うのです。

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