第63話 焼かれる身にもなってみてよ

 今回は、名前のお話をしようかなと思います!


 皆さんは、ご自分の名前に対して何か思っていることや感じていることって、ありますか?


 私は生まれるまで男の子だと思われていて(『ケロッグとの約束』参照)、それまで男の子用の名前しかなかったんですが、ぶっちゃけるとその名前は苦手だなぁと思うものでした。笑 決してその名前自体が良くないんじゃなくて、あくまで自分には似合わないな、と思うものだったんです。

 生まれてから性別が想定と違うことが発覚し、両親は慌てて名前を考え直したようですが、それにもA案とB案があったらしく……。笑 結局B案になったのですが、私はその名前をとても気に入っています。あだ名にすると少し可愛らしさがあるし、フルネームで書くと綺麗だよね、と人に言われることが多いからです。まぁ、中国語にすると結構驚かれる意味を持っているようですが。笑


 とにかく、姓はともかく、名前は一生背負っていくものです。もし気に入らなくても、変えるには一定の手続きとその許可が必要です。

 裁判所によれば、条件の例として「書きづらく読みづらい」「いじめや差別を助長する」「同姓同名の犯罪者や被疑者がいる」「結婚などで家族と同姓同名になる」などが挙げられるようです。

 最近有名になった改名に関するニュースと言えば、「王子様」のニュースでしょうか。出生時に母親の独断で「王子様」と名付けられた方が、裁判所に申し立てて無事に改名を許可された、なんて話がありました。


 私の周りにも、珍しい読みの人がそれなりにいます。でも彼らはその名前を気に入っていると公言しているし、海外でも通用する名前として名付けられた例もあるようで、グローバル感ゼロの本名を持つ私は、興味深く思っていたものです。笑


 それから、以前DQNネームと言われていたものが今はキラキラネームとなり、さらに昨今はジェンダーレスな名前ってのもよく見かけますよね。


 キラキラネームの有名どころとしては、「光宙」で「ピカチュウ」、「男」で「アダム」、「苺愛」で「べりーあ」、「泡姫」で「アリエル」、とかですかね。この当て字の発想がまずすごいし、小説としては結構良さげな名前のような気もしますが、やはり実際に戸籍に書かれて、学校や病院で呼ばれるとなると、本人的には思うところがあるかもしれません。

 ジェンダーレスな名前としては、「葵」、「紬」、「凛」、「蓮」などがあるようですね。読み方はごくごく一般的ですし、字面も可愛らしさと凛々しさが両方あるような感じです。唯一混乱しそうな点を挙げるとしたら、それこそ名前だけじゃ生物学的性別が分からない、ってことでしょうか。でもまぁ生物学的性別が必要な場面ってそんなに多くないから良いのか。



 とまぁ、こんな感じで名前にまつわる話をしてきたのには、理由がちゃんとあるんですよ。



 数年前、バス停でバスを待っていた時の話です。

 バス停近くの電柱には日々色んなお知らせや広告が貼られているのですが、その日は迷子になってしまったペットのお知らせが貼られていました。

 掲載された写真を見ると、何とも愛らしいセキセイインコが一羽。しかしそこに書かれた文言に、私は唖然としたのです。


************

 迷子のペットを探しています!


 ◯月◯日◯時過ぎ、ペットのセキセイインコが脱走してしまいました。何でも良いので、目撃情報があれば、下記の連絡先まで一報お願いいたします。


 鳥種:セキセイインコ

 性別:オス

 年齢:三歳

 名前:テリヤキ


 連絡先:090-××××-△△△△

************


 テリヤキ……。


 鳥に、テリヤキ……。


 この子は家でずっと、「テリヤキ、おはよう!」「テリヤキ、おいで!」「テリヤキ、ご飯だよ!」「テリヤキ、可愛いねぇ」なんて、言われていたのでしょうか。


 焼かれる身にもなってみてよ。笑


 ペットのマイクロブタに対して、「生姜焼き」とか「トンカツ」って名付けるのと同じ原理やで……。


 まぁインコに人間の言語概念がどこまで分かるか不明ですが、きっとテリヤキの意味が分かっていたなら、脱走しても無理はありません。ご主人様は今だけ自分を可愛がっていて、後で餌食にされるかもしれないという恐怖が、テリヤキくんを突如襲ったのでしょうか。


 その後、テリヤキくん探しのポスターは長期間風雨にさらされ、目にすることは無くなりました。

 果たして無事に戻ってきたのか、それともカゴを出て広い世界へと飛び出したのか。


 真相は闇の中ですが、やはり人間だろうが動物だろうが、名前は本当に大事に考えて授けるものだと思うのです。

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