第56話 アイドルの期限(その2)
今回も、アイドルの期限に関する考察をしていきたいと思います。推しの期限とか考えるだけで悲しくなってくるんですが、やはり目を逸らして良い問題ではないと思っているのですよ。
さて前回、中居さんがある番組で話していたアイドル論を中心に、彼の考える「アイドル」がファンとの相互作用によって起こされる一瞬の煌めき、つまり「現象」であることや、アイドルのいわゆるキラキラ期は六年程度で、そのうちの二、三年が満開期間に該当することなどをお話してきました。
キラキラ期が六年。満開はそのうちの二、三年。
この中居さんの説には、少々反発したい気持ちもあります。笑
じゃあ結成17周年、デビュー11周年を迎えたキスマイはどうなるのよって。笑
まぁでも、キスマイは逆境のグループですから(『アイドルとは何か(その1)』参照)、デビューからの六年間で、満開の期間はなかったんじゃないかなとも思っています。八分咲きみたいな。
キスマイが7人グループとしてデビューしたって、7人の中で、常に後列を務めていた四人が『
ただあれだけのJr.が
もちろんデビューにおいて最も大事なのは、本人達の相当な努力。ですが他にも離れず応援するファンの存在、関係者と交渉を進める事務所の存在など、多くの力が彼らをデビューまで連れて行ってくれます。
デビューシングルの後のいくつかのCDリリースに関しても、作詞作曲やセールスの面において、本人達以外の努力が関わっています。CDリリースやライブ開催に多少慣れてきた、その時期が真の踏ん張りどころです。
キスマイも2016年までに15のシングルと四つのアルバムを出していますが、いわゆる前列三人と後列四人の格差があった時代の出来事。本当の意味で7人が一つになった2016年、さらに言えばコロナ禍でデビュー10周年を見据えることになった2020年頃からが、彼らにとっての踏ん張りどころだったのではないか? と私は考えています。
その時多分、中居さんが言っていた、こんなようなことを考えていたと思うんです。
「満開ってのも不思議なもんで、自分達の力で満開になったわけじゃないから。(中略)やっぱりアイドルってほら、デビューで山頂に連れてってもらうとか。じゃあ次の山、二曲目。それも連れてってくれる。そうすると、あれ俺達……と思っちゃうのよ。でも、その分山頂に行ってるんだけども、このリュックに、誰が、何が詰まってるか分からない。誰が詰めてくれてるかも分からない。この中身が何か分かんないのに山頂まで来ちゃうの」
恐らく皆が、ガムシャラに突き進んできた10年だったでしょう。前列三人は知名度アップのために休む暇もなくドラマや映画に出てきた。後列四人はグループへの想いもあったと思うけど、まずは自分を売り出す必要があった。
全員の格差がなくなって、これからまた同じ方向を見つめて歩き出す中で、それぞれが「この10年がどんなものだったのか」について深く考える必要がありました。なぜなら、もうこの先は、今までのような手厚いサポートはないからです。もちろんファンは応援を続けます。だけど中堅になってきて、事務所としては新たなグループの売り出しにも着手しなければならない。今まで以上に、自分自身で売り出し方をしっかり考えていく必要があるわけです。
中居さん流に言えば、「自分でリュックの中身を詰めて、自分で山頂に辿り着くスキル」が必要になる、ということです。
こうした中で10周年を実際に迎えて、キスマイのメンバーはそれぞれ、次のように話しています(『RIDE ON TIME(シーズン4)』より)。
「まだ10年だからって感じなんっすよね。面白いねっていう方にパンって変われる勇気もずっと持っていたい」(北山さん)
「進化し続けているものをファンの皆さんの前で見せて、やっぱキスマイってカッコいいんだなって思ってもらえるようなキュンとさせられるようなダンスを作りたい」(千賀さん)
「自分が夢に向かって頑張ってるっていうのはやっぱりグループにも繋がることだと僕は思っていて」(宮田さん)
「何歳までアイドルってやっていけるのか。先輩達がやってきた50歳までっていうのも、じゃああと20年、まぁ下手したら10年かもしれないし。自分で考える力、行動する力が大事。言われるがまま操り人形のままやってった時に、その人がいなくなった瞬間何もできなくなる。やっぱ自分達である程度動けるようにしてないといけない」(横尾さん)
「こっからは自分で考え行動してますね。焦りじゃないけど、何ができるようになってなきゃいけないんだろう、もし10年経ったら。何ができるようになってるかなって自問自答したけど全然できてたことないし、周りの方に恵まれて、こういう挑戦できる場があるっていうこと。かつここからはまた新たなスタートだなって気づきましたね、何か」(藤ヶ谷さん)
「あぐらかいてたらすぐ抜かれますよ。売れるためにやってるし。自分のためでもキスマイのためでもあるけど、やるからには上を狙ってかなきゃいけないし。強いグループになんなきゃなっていう気持ちでやってますね」(玉森さん)
「You達はちゃんとお客さんを楽しませられてるの? って多分言われると思うし。今が一番ジャニーさんのことを思うかもしれない」(二階堂さん)
言葉は違うけど、全員「自ら積極的に動いて、まだまだ上を目指していく」という心意気が窺えます。
キスマイのメンバー内格差が酷かった頃は、後列も見るからにやさぐれてたし、ある種諦観のようなものも見えていました。でもそこに中居さんが『舞祭組』という新たなリュックを四人に背負わせて、前列三人のお尻も叩いて、諦めない姿勢を学んできたんだと思います。
彼らは明らかに、自分でリュックに物を詰めて、新たな山頂に手をかけようとしている。
こういう姿が伝わってくると、険しい山道でも歩けるトレッキングシューズを、ファンは渡したくなってきます。この「手助けをしたいと思わせる才能」が大事だと、最終的に中居さんは説いているのです。
逆に言えば、この才能を磨けなくなった時が、アイドルの期限になるのだと思います。トレッキングシューズの交換ができず、ズタボロで破けた瞬間とも言えるでしょうか。
キスマイは今「国立競技場でコンサートを開催する」という山を全員で目指していて、ファンがそこに辿り着くためのトレッキングシューズを渡したり、道を整備したりしている最中です。
7人がどこを最後の山とするのか、私には分かりません。メンバーも年齢差があるし、上記で引用した言葉の中にも、微妙なニュアンスの違いは見て取れるし。
でも本人達が山を登るんだと決めているうちは、キラキラ期の六年を過ぎていようと、たとえ満開の時期ではなかろうと、こちらも一生懸命に応援して、煌めきを灯し続けたいと強く思うのです。
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