第55話 アイドルの期限(その1)

 前回はBTSの活動休止に関して、自分なりの考えをつらつらと書いてみました。


 本当は色々、アイドルネタまた語りたかったんですけど、7月に私がカクヨムの活動休止してたので、たくさん溜まってしまって……。

 もうちょい続きます。ご容赦を。笑 アイドルそんな好きって人でなくとも、読みやすいように工夫はしてみます!



 早速参りましょうか。

 元ネタは2022年5月22日に放送された『中居正広のただただ話すダーケ』という番組なんですけどね。ここで30分くらいかけて、私の大好きなキスマイが「兄貴」と敬愛する中居さんのアイドル論が語られていまして。この番組での発言をピックアップしつつ、私が考えたことや感じたことと絡めて話していきたいなと思ってます!



 私はアイドルを、以下のように定義しています(『アイドルとは何か(その3)』参照)。


 アイドルとは、実力や才能に加え、“可能性”を秘める存在である。

 アイドルとは、ゴールではなくスタートにもなりうる存在である。

 アイドルとは、輝きだけでなく時には泥臭さも見せる存在である。

 アイドルとは、結果のみならず過程も消費の対象になる存在である。


 つまりアイドルを「存在」として定義しているわけです。この定義は間違いではないと思っています。

 ただ中居さんは、アイドルを「」と定義しています。どういうことなのでしょうか。


「アイドルって…………出来上がってないんですよ(中略)でね、見てる人もね、キラキラした目で見るの。で見られてるアイドルも、キラキラしてるの。もうキラキラとキラキラがぶつかった時の明かりって、ものすごいものを発してるんですよ。その現象が、僕はアイドルだと思うのね。この、なんですよ」


 私がアイドルを「可能性を秘める存在」「過程も消費の対象になる存在」と定義したように、中居さんも、誕生したてのアイドルはまだ未完成だと言っています。だからこそ、ファンは我が子を見るような気持ちで「大丈夫かな、頑張れてるかな」ってテレビ越しに応援するんです。可能性を信じて、キラキラした目で。

 そんなファンとアイドルが出会えるのがコンサートで、そこで頂を目指そうとガムシャラになる中で発する光と、ファンの視線が重なり合う。互いの光が熱を帯びてスパークする。このスパークしている現象こそが、中居さんの言う「アイドル」だというわけです。なるほど、雷のような一瞬の煌めきというわけか……。


 ただ注目したいのは、直後に彼が「嘘のような現象」と述べていること。これは深いな……と唸ったポイントでした。


 私の理解では、中居さんの言う「アイドル」という現象を引き起こすには、いくつかの前提が必要です。例えば……


 ◯ 純粋に頂を目指せる人間であること

 ◯ 事務所の意向やパブリックイメージから逸脱しないこと

 ◯ 見守ってくれるファンがいること


 つまり、イメージ通りにキラキラできる人間と、ファンとの相互作用なしに「アイドル」は生まれないのです。

 ですが、芸能人だって人間です。特にアイドルは一定の若さが求められますが、その年齢はいわゆる「お年頃」。自我同一性の確立に向けて動き出す時期とちょうど重なってくるが故に、ファンからすれば裏切りに見えてしまうような行為をする場面も出てきます。

 例として「ちょっと不良っぽくなる」「ちょっと髭を伸ばす」を中居さんは挙げていますが、熱愛なども普通に含まれると思います。そうなると「担降たんおり」、つまりその人のファンを辞める、もっと言えば夢から覚める人が一定数出てくるわけです。そうなれば当然ファンとの相互作用は弱まり、共に作り出していた煌めきも、以前ほどの明るさは失います。


 中居さんはこの点に関して、こんなことを言っています。


「(夢から覚めてしまうまでの)期間が、三年なのか、四年なのか、すごく短いんじゃないかなって思うんだ。どっちも夢見てるのかなぁ。キラキラしてる方も夢を与えて欲しいんだけども、立ってる人達も夢見てるしなんか。この現象に。で見ているキャーって人達も、なんか夢を見てるんですよ。で、パンッ! って、わっ! って時に、おぉっ! て、あれ何だったんだろう……って。(夢から覚めさせないような努力は)してるんだけども、やっぱその夢って、夢だから。現実じゃないから、長くは続かないから。だから、アイドルさんは難しいなって思います。(中略)未完成だから、完成してしまった時に、パンッてなる瞬間が来ちゃうかもしれない」


 こう考えるとやはり、「アイドル」という現象は、すごく曖昧で、脆弱ぜいじゃくで、儚いものだと言わざるを得ません。


 まだ自分で(これはきっと夢だな)とか(目覚めたら現実が待っている)という俯瞰ふかん的思考が持てていたら、儚い瞬間が終わったって、きっと空虚な気持ちにはならないと思います。

 寝ている間に夢を見てても、目が覚めたら割とすぐ現実に適応できるし、夢の国に行ったって、舞浜駅を出てしまえば、翌日からの生活について半ば冷静に考えられるのです。


 でもアイドルは違うんです。

 夢が覚める瞬間を、コントロールできないじゃないですか。


 寝ている時の夢は、毎朝決まった起床時刻で終わるって分かってる。

 夢の国で夢を見られる時間は、開園から閉園までだって分かってる。


 だけどアイドルは、起床時刻や閉園時間が事前に決まってるわけじゃない。

 しかも場合によっては、一斉に起床、あるいは閉園とも限らない。

 さらに言えば、本人自身がその瞬間を把握していないことだってある。


 この不確実性が、「アイドル」という現象を「嘘のような現象」たらしめているのでしょう。現実世界で、現実じゃない現象を追っていく。この輝きがどのくらい続くのか、本人達すら分からない、文字通り未知の旅。そんな不思議な物事が、いわゆる推し事なのだと思います。


 まぁ経験者の中居さん曰く、この輝きが続く期間はおおよそは分かっているようです。それは大体、六年間くらい。そのうちの二、三年程度がいわゆる満開の瞬間になると言います。


 さて、これを長いと見るか、短いと見るか。

 こりゃあ難しい所です。

 ファンになってしまったら、10年でも20年でも続いて欲しいって思ってしまう。

 でも一瞬の煌めきが何度も何度も起きて、それが六年間という時間に達したのなら、それはとてつもなく長くて尊いものだと思うのです。


 そういう意味で言うと、私の大好きなKis-My-Ft2キスマイは2005年7月26日に結成して、2011年8月10日にデビュー。2005年から2011年まではJr.でしたが、既に多くのファンを獲得して単独ライブも行っていたので、彼らが「アイドル」である期間はもう、17年を超えているわけです。7人とファンとのスパークが17年続く——その時生まれた赤ちゃんがもう、成人を目前にするまでの時間——ということは、とてつもなく奇跡に近いと言えるような気がしてきました。


 ただ、もし、もし彼らに「その時」が訪れることがあったなら……

 自分はどうなってしまうのだろう、と時々考えます。ファンでい続けた10年以上を、夢だと受け入れられるのだろうか。



 次回はデビュー10周年を過ぎ、次のステージへと歩き出すキスマイの様子ももう少し交えながら、アイドルの期限についての考察をもう少し、続けたいと思います。

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