第51話 りんごを裏切りそうになった件
今回は、気軽に読めるお話を用意してみました!
今、私が小説執筆に使っているのはパソコンです。MacBook Airで、2代目です。初代は完全に壊れたわけじゃないんですが、一部機能が使えなくなったり、反応が遅くなったり、経年劣化が否めなかったりということで、現在はあまり使われなくなっています。
初代の調子がおかしくなったのは、2020年6月のこと。オンライン授業で頻繁に使うようになった中での不調だったので、私は慌ててAppleのサポートセンターに連絡を入れました。
『こんにちは。Appleサポートセンターです』
「こんにちは。あの、今使っているMacBook Airのカメラが、急に作動しなくなってしまって……実は今、既にオンライン授業も始まっていて遅刻しちゃってて、早急にどうにかしたくてですね……」
電話越しのお姉さんの指示に従って色々やってみたものの、それでも直ることはありませんでした。するとお姉さんは、「分かりました。ちょっと担当を変えますね」と言い、今度はお兄さんに代わりました。
『担当代わりまして、林檎(仮名)です。水無月様が使われている、MacBook Airのシリアルナンバーを教えていただけますか』
早速シリアルナンバーを探してみると、ありました。「CSFCEJ3MW」です(めっちゃ適当に改変してます)。
「えっとですね、最初がC……」
『CanadaのCですね』(発音がバカ綺麗)
「あ、はい。次がS……」
『SpainのSですね』
ここで私は、(あ、国名で言った方がいいやつ?)と悟りました。英語表記の国名の頭文字で対応してくるグローバル感、さすが世界のAppleです。
「次が、FranceのF」
『FranceのF』
「CanadaのC」
『CanadaのC』
「次が……E……」
『……EnglandのE』
「あ、そうですそうです。で、JapanのJ」
『JapanのJ』
「次が数字の3」
『3』
「次が……えっと……」
次はM。しかしMから始まる国名が思い出せません。
先ほど、Eから始まる国名を思い出せず、お兄さんに先を越されてしまった私。(Mから始まる国名くらいは私が先に言いたい)という、謎プライドが芽生えたのです。
私は必死に考えました。M……M……。ダメだ、国名が出てこない!
次に考えました。国名じゃなくてもいいや、とにかくMから始まる名詞を探そうと。
でも焦っている時ほど、こんな簡単なことも分からないものです。
しかし突如、私の脳に光が差しました。
(あった……! これなら通じる!)
『水無月様?』
「あ、次は、マ…………あーっ! 違う違う! 嘘です!」
『マ……? 水無月様?!』
マ、と言いかけて私は発狂しそうになりました。
電話越しの親切な相手のことを、すっかり忘れていました。
あろうことか、Appleの社員様に向かって、「MicrosoftのM」などと言いそうになったわけです。堂々とライバル企業の名前を出すカスタマーなんて、国家反逆罪にも等しいのです。こんな憎たらしい客をサポートしてやろうなどと、誰が思うでしょうか。
私は必死に考えます。Microsoft以外のMから始まる名詞……何があるんだ……。
お兄さんを待たせている罪悪感、先ほどEnglandを出されてしまった劣等感に苛まれながら、私は起死回生のスーパー名詞を思いついたのでした。
「あっ! 次は、MacのM!」
『あ、MacのMですね!』(自社商品名出されて嬉しそう)
「次は……」
『次は……?』
「次は、WashingtonのW」
『WashingtonのWですね。……えーっと、CSFCEJ3MWですね。ありがとうございます』
あれだけ悩まされたMの後にWが来て、つい勢いで「WindowsのW」と言いそうになったのですが、必死に堪えました。その結果出てきた単語は国名ではなく街の名前になってしまいましたが、よく頑張った私。
結局、シリアルナンバーを伝えてプロの目で診断してもらったものの、ハードソフトそのものが一部やられていたらしく、買い替えとなりました。
まさか、シリアルナンバー言うだけでこんなに冷や汗かくとは思ってなかったです。
今度2代目の調子が狂い始めたら、またあのシリアルナンバーの戦いが始まるのでしょうか……。次もMとW入ってるんだけど、どう切り抜けよう……。
そんなことを、今のうちから考えています。笑
アルファベットに関するエピソードはあともう1つあるので、それはまた次の機会に。
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