第45話 バリすごい国産のトラがいるって知って欲しい

 今回は、えぇ、久々にアイドルネタとなります。第42話でアイドル語ってますけど、個人的には久々なのです。笑


 タイトルの「トラ」とは、ジャニーズJr.のTravisトラヴィス Japanジャパンのことです。

 先日というか結構前に、Travis Japan、略称・トラジャはメンバー全員での、武者修行という名の米国留学を発表しました。3月末に彼らはLAに到着し、何とそのにはWORLD OF DANCEというコンテストにて、チーム部門で3位入賞。夏の本戦への切符を瞬く間に手にしてしまった、とんでもないパフォーマー集団です。言っときますが全員日本人です。バリすごい国産のトラなんです。

 そんなジャは今年の干支、になぞらえ、「寅年デビュー(願望)」を宣言しています。この留学についてデビュー前提という発表はありませんでしたが、彼らの目指す場所はCDデビューです。



 元々トラジャは、私の大好きなマイケル・ジャクソン(『脳がマイケルに支配されてた話』参照)の『THIS IS IT』の振り付けを担当していたトラヴィス・ペイン氏が選抜したメンバーを基に構成されており、その実力は折り紙付き。YouTubeチャンネル『+81 DANCE STUDIO』では、嵐の『A・RA・SHI』やTOKIOの『花唄』など、歴代ジャニーズの代表曲を、主にZ世代の有名振付師監修のもと、トラジャ流にアレンジしたダンス動画を数多く投稿しています。

 ネットを経由して、ダンスの魅力が徐々に海外ファンへも広がって来たトラジャ。そんな中で決行された米国留学ですが、このトラ達、やはり只者ではないんです。だから、まだデビュー前だし今日本にいないけど、ちょっとで良いから知って欲しいんです。笑


 このトラジャの米国留学を、あるメディアは『BTSへの挑戦』と題して記事にしていました。

 BTS(防弾少年団)とは、現在世界中で旋風を巻き起こしているK-POPアイドル。本エッセイでも度々登場しています。韓国発ですが特に『Dynamite』の大ヒットによってアメリカでも絶大な人気を誇り、グラミー賞やBillboard Award等でも名前が散見されるグループです。韓国が生んだ、とんでもないスーパースターです。



 でも私、トラジャは別にBTSを追ってる訳ではないと思うんです。

 なぜなら、この2つのグループは魅せ方が決定的に異なるからです。


 

 BTSもトラジャも、共にダンスを大きな武器としています。でも両者は同じ「アイドルダンス」ではありません。


 BTSとトラジャメンバーの身長を比べると、その違いが少し見えてきます。

 まずは平均身長。BTSは軒並み175〜180cmのメンバーが多い中、トラジャには160cm台のメンバーもいます。念の為申し上げておくと、身長が高いから良いとか、そういうことを言いたいのではありません。

 次に標準偏差です。標準偏差とは、データの散らばりを表す指標です。この数値が大きいほど散らばりが大きい、つまり各人の身長にばらつきがあることを示します。BTSの標準偏差は2.65cm。対してトラジャは4.09cm。トラジャの方が身長のばらつきが大きいのです。


 BTSは平均身長が高い分、各人の手足も長く、そのリーチを有意義に用いたダンスが目立ちます。個人的所感ですが、『Butter』のサビは特に手足の動きが大きく、各人の可動域の広さ、ひいてはステージの広さや奥行きを感じるような振り付けになっています。また身長のばらつきが小さいため、普通に立つ時でも、誰がセンターに来ても、収まりが良く見えます。これだけ書くと、BTSに軍配が上がるようにも思えます。



 しかし、ここで是非、『Butter』のPerformance動画と『+81 DANCE STUDIO』を続けて見てみて下さい。どちらもYouTubeで見れます。



 トラジャ、全然見劣りしてませんよね? 本当、贔屓目なしで。

 しかも動きが見事にシンクロしていますよね? 同じ人間が立ち位置を変えて、何度も撮り直して編集しているようにすら、見えてきませんか?



 平均身長も低いし標準偏差も大きいのに、なんでなんでしょう。

 これこそが、トラジャがバリすごい国産のトラである秘訣なのです。各人のダンススキルが卓越しているのです。


 全員が自分の魅力を分かっているんです。強みも弱みも含めて。


 手先爪先まで神経の行き届いた動き。非常に細かいのに正確な足捌き。肩の力を程良く抜いて首を長く見せ、上半身の詰まり感をなくす工夫。激しく動きながらも、全くブレない体幹。計算と天性の感覚によって紡がれた、緩急のバランス。カメラが寄っていなくてもひしひしと伝わってくる、弾ける笑顔や色気に溢れた表情。表情と振り付けがブツ切りになっているのではなく、なめらかにつなげられる表現力の高さ。歌詞がない場所でも情景を感じさせるターンやステップ。目線を交わさずとも互いに感じ取る感覚や感情。

 これらが相俟って、結果として全員が同じ大きさに見えるんです。大掛かりな装置がなくたって、ただの鏡と床だけのスタジオを、瞬く間に華やかな舞台にしてしまうんです。


 嘘だぁ。水無月の誇張だよぉ。って思ったら、もう一度動画を見返して欲しいです。


 だって彼らが踊る時、照明の色は変わるかもしれないけど、じゃないですか。チャンネルの公式ユニフォームしか着てないんですよ。下はジャージだし、スニーカーなんですよ。それなのに、『花唄』では大輪の花が見えて、『スシ食いねェ!』では板前さんが見える。

 加えて、メンバーはヒップホップもジャズもロックもハウスも、どんなジャンルのダンスでも軽々こなしてしまうオールマイティ対応。さらに振り覚えが早く、基本の枠に従いつつ自分の味を出すことに長けている彼らはトラを超えて、もはや鬼なのです。笑


 そして先日、正真正銘のチャレンジャーとして迎えたLAでのダンス大会では、超高得点かつトップと僅差で3位という好成績。最初から衝撃と爪痕をガッツリ残したのです。平均身長が低くても、標準偏差が大きくても、トラジャが世界に通用することを端的に表した出来事です。彼らはBTSの背中を追って挑戦してるんじゃないんです。誰の背中も見ずに、自分達の道を突っ走ってるだけなんです。




 繰り返しになりますが、こうしたことから、トラジャは決してBTSの作ったわだちを追いかけるだけのグループではないと言えると思います。別にBTSの方が良いとか、トラジャの方が優れてるとか言いたいんじゃありません。どちらも素晴らしいのです。各自の最高の魅せ方を知っているのですから。


 その上で、トラジャはトラジャなりに、「日本産の世界的アイドル」ではなくて、「日本産の世界的パフォーマー、ないしはエンターテイナー」を目指すのだと思います。

 素質のある子ども達には、何度も本場のエンターテイメントを見せてきた故ジャニー喜多川氏。トラジャは彼が望んでいた、原点回帰を促すグループだと思います。

 言い方が悪いですが、「アイドル」にはどうしても賞味期限がつきものですから、いつまでも衰えないエンターテイナーを目指して欲しいな、と、キスマイの可愛い後輩であるトラジャに対しては思うのです。



 そりゃあCDデビューしてもらいたい気持ちもあるけど、多分トラジャはそれだけでは終わらない。『+81 DANCE STUDIO』見れば分かります。ゴリ押ししてごめんなさいね。でも見れば分かりますから。笑


 ドームツアーも良いけど、ブロードウェイ公演とか……いつかぶちかまして欲しいですね。

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