第24話 ホモ・サピエンスの奇跡とは?

 何か大仰なタイトルがついてしまいました。笑


 このお話は、私のアイドル観(?)と深く関わったお話です。

 それと同時に、一部の人にはある程度の共感をいただき、大多数の人には人生で最もドン引きされたお話でもあります。そのもはや伝説的なテーマが、『ホモ・サピエンスの奇跡』なのです。

 あえてこれを紹介することでドン引きされても仕方ありませんが、むしろここまでヤバいことを真顔で言う人間も稀有けうだと思ったので、このエッセイに書いておこうと思います。怖いもの見たさ的なノリで、お付き合いいただければ。



 私ね、ちょっとでも「好きだ! 気になる!」って思うと、みるみるうちに沼に入ってしまう人なんです。何でも気になって、細かい所まで調べてしまう。

 この研究者的な性格が奏功して論文を世に出せたことがあるのですが、対象がアイドルになると、結構イタいことになります。笑


 今まで何度も書いてきたように、私はKis-My-Ft2にハマり、SKE48にハマり、今はBTSにハマりかけている身です。

 グループアイドルを好きになりかけると、まずはメンバー・ニックネーム・生年月日・血液型・メンバーカラーを調べ、次に今までにリリースしたシングルとアルバムを徹底的に洗います。そして、狂気的に音楽を聞き込み、時には振り付けを覚え、メディア出演や雑誌掲載の情報にいち早く飛び付きます。

 まぁ、ヲタクになるってこういうことなんですけど、私は情報を漁るスピードと熱量がハンパないのです。あらかたの情報を漁って、外ヅラだけは「ファンです」って顔をするのに、1週間もかかりません。短期間で身に付けた私の知識を前に、「ガチヲタじゃん」と言う人もいます。笑


 ……これだけでも自分結構ヤバい人だなと思っていますが、まだまだ序盤。

 ここから、私はさらにヤバくなっていきます。


 基本情報(笑)を覚えると、次はメンバーの表情、性格や人柄、価値観まで見るようになっていきます。

 例えばキスマイの藤ヶ谷太輔さんの場合、歌ってる時の「ら」の発音が綺麗とか、そういう所に目が行くようになってしまうんです。

 そうすると、単に「このアイドル(グループ)が好き」ではなく、「この人(達)のが好き」に変わっていきます。笑

 ただし、私はいわゆる「リアコ(リアルに恋する)」タイプではありません。むしろ彼らの幸せを願い、熱愛報道に喜ぶタイプです。また全てが好きと言いつつも、カメラ前の様子しか知り得ないことは十分自覚しています。笑



 全てが好き、の状況になると結構危なくなってきます。

 私が藤ヶ谷さんに最もヤバい意味で心酔していた頃、友人(同じくドルヲタ)とこんな話をしていました。


「ねぇやぎ。ほんと、担当(ジャニーズでは推しを担当と呼ぶ)がいるって幸せだよね」

「それなぁ。担当の美貌があれば普通に生きていけるわ」

「担当と同じ世界にいられて良かったよ」

「ね! この平成(当時は平成)の時代にさ、この日本でさ、彼が生きている時に自分も生きているからこそ、出会えたんだもんな〜」

「う、うんそうだね!」←ここから友人若干引き気味


 ここから、私の暴走が始まりました。


「すごいことなんだって! この西暦○○年に、この地球という星で、日本という国で生きていないと、彼と出会えないし、彼の言葉だって分からなかったんだから」

「お、おぉ」

「しかもだよ、日本に生きていたとしても、じゃなきゃ彼の素晴らしさに気づけなかったんだよ? 同じホモ・サピエンスだからこそ、彼の存在を私が認知して、ファンになって、彼の美貌と言葉と振る舞いに心打たれることができるんだから。これは奇跡なんだよ? この時代に同じ星で同じ国でホモ・サピエンスとして互いに生きていることが奇跡なんだって!」

「…………えーと待って待って待って。ホッ、ホモ・サピエンス???!!!」


 ここで友人、腹筋崩壊して崩れ落ちました。笑

 そうしてこの話は、『ホモ・サピエンスの奇跡』として永久保存されることになったのです。


 でも、「言われてみればそうだな」って思いません?←必死に同意を求める


 もし私が今日本に生きていたって、Gとかだったら人間に見つかった瞬間無残に殺される人生だったじゃないですか。雑草だったら踏み潰されるだけじゃないですか。飼い犬だったとしても、興奮を言葉にして共有するのは無理なわけで。アイドルの輝きなんてまともに拝めないまま、一生を過ごす可能性があったわけです。

 でもたまたま、幸運なことにホモ・サピエンスとして生まれることができた。チンパンジーでも、ゴリラでもなく、過去の北京原人でもネアンデルタール人でもなく、この21世紀にホモ・サピエンスとして存在している。その中でも地球を選び、日本を選んで生まれてきた。

 私の大好きな藤ヶ谷さんもまた、チンパンジーでも、ゴリラでもなく、過去の北京原人でもネアンデルタール人でもなく、この21世紀にホモ・サピエンスとして存在している。その中でも地球を選び、日本を選んで生まれてきた。


 そして私は彼を見つけ、本気で応援するようになる。


 ——この奇跡って、なかなかすごいことだと思うんですよ。笑


 まぁ冷静になれば、ただのヲタトークでホモ・サピエンスというパワーワードを真顔で出した自分は結構ヤバいなと思いました。なので、この話をする相手は慎重に選んでいます。笑



 ただ、最近このエピソードに改めて納得してしまう自分がいます。あんなに激ヤバな理論なのに。


 なぜなら、BTSの魅力に気付いてしまったからです。

 顔立ちだけでなく、パフォーマンスや発音の流暢さに惹かれて、いつも通り徹底的に調べてARMYアーミー(ファンの愛称)の端くれになろうとしているのですが、それが今までで最も難しかったんです。


 なぜなら、言葉が分からないからです……。


 せっかくメンバーの公式SNSを開いたのに、羅列されたハングル文字が全く読めなくて、ガックリしました。その時、ふと『ホモ・サピエンスの奇跡』論を思い出しました。


 やっぱり、大事だったんですよ。

 同じホモ・サピエンスとして、同じ時代に同じ地球に生まれるだけでなく、「日本」に生まれることがどれだけ重要だったか。

 私は藤ヶ谷さんと同じ日本に生まれたから、彼の言葉を苦労せずに、また彼の出すニュアンスそのままに受け取れたのです。

 でもBTSは韓国。ただお隣というだけで、こんなにも言語の壁に苦しめられるとは思っていませんでした。

 ……あ、「翻訳機能でいいじゃん」なんて野暮なコメントはなしで!笑 推しの言葉は機械に頼らず、自分で理解したいのです。自分が結構完璧主義なので、機械に頼るくらいならファンをやめるくらいのつもりなんです。だから今、韓国語を割と本気で勉強しています。おかげで、苦手なパッチムをほぼ克服したっていう。やっぱり、愛情からくるモチベーションって質が違いますよねぇ。


 なので私は今、ホモ・サピエンスとして、この時代にBTSの面々と共に地球に生まれ落ちた奇跡だけはありがたく拝受しながら、言語の壁は努力で乗り越えようとしている所です。そうしたらメンバーのSNSメッセージの一部が読めるようになってきて、嬉しい毎日。


 これからも『ホモ・サピエンスの奇跡』を噛みしめながら、しがない日本イルボンホモ・サピエンスの私は、Kis-My-Ft2素晴らしきホモ・サピエンス韓国ハングクホモ・サピエンスのBTSを応援し続けたいと強く思うのです。



 さて、このお話にドン引きされた方はどれくらいいらっしゃるんでしょう……?笑


 ただアイドルが好きってだけで、ホモ・サピエンスの奇跡とか言ってしまうくらいに、私が沼にハマりやすい人間だということは分かっていただけたと思います。


 皆さんは『ホモ・サピエンスの奇跡』、感じたことありますか?笑

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