第23話 お兄さんと仲良くなりがち

 先に言っておきましょう。

 タイトルに変な意味はありません。笑


 今回も、前回に引き続いて旅先でのお話となります。最近、旅行したい〜って思いすぎて、日記を見返しちゃうことが増えまして。

 そうやって夜な夜な日記を見返すと、ホテルのレストランのお兄さんとめっちゃ話すやん、ってことに気づきました。笑



 旅行行くと、ホテル取るじゃないですか。

 日本にいる時はめっちゃワクワクして予定を立てるし、消耗される体力とかはあまり考えずに行く場所考えちゃうんですよね。

 でもいざ現地に行くと、欲張りすぎて色んな観光スポットに足を伸ばし、普通に2万歩くらい歩いてヘトヘト……なんてことがよくあります。

 そうすると、自然と足が向かうのは滞在先のホテル。ねぐらが近くにある場所でご飯を食べたいと思うわけです。笑 また、朝食もホテルのビュッフェになりがちなので、ホテルのレストランへ足を運ぶ回数が増えるのです。

 だから、ホテルのレストランのお兄さんと仲良くなりがちなんです。


 でも、どう仲良くなるの? って思うでしょう。ただの店員と客で、常連じゃないなら話すこともなかろう、と。


 ぶっちゃけますと、彼らは隙あらば喋りかけてきます。笑

 例えばメイン料理が運ばれて、「いただきまーす」と私が一口、二口食べ始めても、彼らは近からず遠からずの超絶妙な距離にい続けるんです。で、「美味しい!」の単語が口から飛び出そうなあたりでテーブルに近づき、


「お味はどうですか?」


 って聞いてくるんですよね。いやタイミング絶妙すぎか。どこで学んだのその技術。


「美味しいです〜」


 と言えば(言わされてる感もありますが、普通に美味しいのでちゃんと答えます)、相手はニンマリ。そしてお兄さんは語り始めるのです。


 やれこの肉は産地にこだわってるだの、やれこの味付けの隠し味はどうこうだの、やれこの料理にはあの酒が合うだの等々。

 こっちがもしゃもしゃ食べてる間に、まぁよく喋るんですよ。笑

 で、それだけ話されるとこちらも何かリアクションを取らないといけないような気がしてきて、


「あ、隠し味やっぱそれなんですね! どことなくスパイシーで美味しいと思ったんですよ〜」


 的なことを私は喋ってしまいます。

 あ、ここまでの会話は全部英語なんですけど、お兄さん達って出稼ぎに来ている人が多くて。だからちょっとゆっくりで、聞き取りやすい英語なんですよね。だから私もあまり躊躇なく話せるというか、互いの速度がピタリと合ってしまいがちなんです。


 まぁ、そんなリアクションを取るとお兄さんはさらに喜び、今度は自分が出稼ぎに来るまでの経緯を語り始めるんですね。バイクで何時間かかけて出勤するとか、本国に家族を残してるとか、まぁ色々出てくる。……そうこうしている間に、私はメインを食べ終わる。そして自然な流れで(待ってましたと言わんばかりに)、彼らはデザートの注文を待つのです。笑

 私も何だかんだで現地のスイーツ食べたさに、頼んじゃうんですよね。まぁ英会話の練習にもなるしって思って。笑



 最も印象的なお兄さんは、イギリスで出会ったフィリピンの人でした。

 彼も魚の産地だの、付け合わせの塩のこだわりだの、こちらが食べている間にめっちゃ喋る人でした。舌平目の魅力を延々と語られたのです(内容は忘れた)。あ、あと付け合わせの、灰入り真っ黒バターについても力説されました。

 そして料理の説明が終わると、例外なく自分の出自を語り始めました。笑 フィリピンからスペインに出稼ぎに行ったのだけど、財政難で苦労してイギリスに渡ってきたようです。

 彼は私との会話を楽しんでくれたのでしょう。同じアジア人でしたし、私の(ちょい引き気味の)リアクションの良さにも、何かシンパシーを感じたのかもしれません。

 デザートも食べ終わって、さぁホテルの部屋に戻るか! と思った時、彼は私を呼び止めました。


「ちょっと待って。見せたいものがあるんだ」

 ↑普通に彼の方が年上だったので、こんなニュアンスになった


「?」

「いいからいいから」


 すると、彼は一瞬厨房に消え、また舞い戻ってきました。「許可は取ったよ」と。何の許可やねん。


 私はなぜか厨房に案内されました。笑 「ここであのグリルを作っていたんだよ! こんな風にね」と、ウェイターのお兄さんはまるで自分がシェフであるかのように得意げに話し、ズンズンと奥へ突き進んで行きました。


 謎に始まった社会科見学。

 厨房だけかと思ったら、謎のツアーはまだ終わりではありませんでした。お兄さんは突然私に聞きました。マジで唐突に、です。


「ねぇ、結婚してるの?」

「?! してないです」

「そっか。じゃあ、彼氏いるの?」

「??!! いないですね」

「そっかそっか! じゃあ、将来的にってことなんだけどさ——」


 待て待て待て待て待て待て待て。

 この男、一体何しようとしてやがる?

 厨房の奥で、客に一体何を聞くんだこの男は??


 怪訝けげんに思っていると、いつの間にか開けた場所に出てきていました。

 厨房を抜けた先にあったのは、大きな宴会場ボールルームだったのです。確かに、豪勢な食事を直通通路で宴会場に届けられる動線は良いですよね。

 ……なーんて、感心していると。


「今ね、ここ電気暗いんだけど、電気をつけて人が集まると、とっても華やかで美しい空間になるんだ」

「はぁ……。確かに広いし、すごそうですね」

「でしょ? だから……」

「だから……?」

「結婚式は、ここで挙げないか?」

「……んーと、誰と?」←冷静にツッコミました

「そりゃ、君の将来の旦那さ」

「なるほど……?」

「君はここで結婚式を挙げ、披露宴をやった方が良い。プロポーズしてもらったら、すぐに僕に連絡をするんだ。そうしたら必ず、僕がこの会場を押さえておくから」


 …………あ、あなたは予約要員ってことですね何か言い方アレですけどホッとしたわ!笑笑

 急に「結婚してる? 彼氏いる?」ってグイグイ聞いてくるから、何事かと思ったわ!

 てか私は海外で挙式が前提なんですね?


「な、素晴らしいだろ? 君はここで式を挙げるんだ」

「お金がかかるよ」←圧倒的そこじゃない感

「じゃあ、5%オフにしておくさ」


 正直、たった5%……って思いました。はい。笑

 てか私が結婚できそうな時には、彼はフィリピンに戻っている説が濃厚です。

 その後は適当に受け流した記憶があります。笑

 あ、ちゃんと社会科見学のお礼は言いましたよ! 多分チップも多めに渡したはず。


 まぁ多くのお金を支払うことにはなったのですが笑、強奪等されない限りは、良い経験の1つになるかなと思いました。



 他にもシンガポールでマレーシアの話を延々とするお兄さんや、風景写真を撮りたい私をめっちゃ邪魔して写り込んでくるお兄さん、なぜか東大を知っててめっちゃリスペクトするお兄さん、日本のガイドブックの内容を疑うお兄さんなどなど、面白兄さんは結構いたんですけど、それは今回割愛します。とにかく、今回のフィリピン兄さんが強烈だったんだわ。


 他にも、旅先での面白エピソードをたまーに載せられたらなと思います。



 海外旅行は、現地の観光スポットに行くだけではもったいないです。

 かけがえのない経験をするには、(犯罪に十分気をつけながら)現地の人、あるいは現地で働いている人と実際に喋ってみることが大事なんだなってつくづく思いました。そのためにも、英語を勉強するのは大事だな〜と思う日々です。


 なので、お家時間を有効に使って、英語(と韓国語)をもっと勉強します!笑

 韓国語? って思った方は、以前公開した『結局、英語しか勝たんのだ……』をぜひ見てみてくださいね〜。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る