第22話 全力で指を求められた話

 今回は、海外で起きたハプニングについてお話しようと思います! タイトルだけ見るとちょっとホラー感ありますが、ホラーじゃないのでご安心を。

 今のご時世、海外に気軽に行けなくなってしまいましたからねぇ……。早くまた海外に行ける日を願いながら、このお話を書こうと思います。


 早速ですが、皆さんは、誰かに不当に疑われた経験はありますか?


 私は、人より割とある方だと思います。人相悪くないんだけどな。笑

 以前、『ブラック校則は冤罪を生む』でお話したように、私は校則違反の冤罪にかけられたことが何回もあります。マジで何回もです。笑 校則だけでなく、「本当にこの仕事やったのか」とか、「実は○○と付き合っているのか」とか、「いや目の前に証拠あるだろ!!! 見ろ!!!」って叫びたくなるような疑いをかけられてきました。何なんでしょうね本当に。そういうの引き寄せちゃう体質なのかなぁ。



 この体質(?)は、海外でも発揮してくれちゃいました。


 ある年、ハワイから日本に帰国する時の空港にて。


「shoes 脱いで!」←ハワイなので日本語が結構入ってくる


 全身の金属探知機で引っかかり、金属のカケラもない靴を脱いで裸足で再度機械の中に入ったのですが、尚も「問題あり」を示す赤いランプが点灯。最終的に女性スタッフにくまなくボディチェックされ、原因不明のままでしたが飛行機への搭乗を許可されました。私からしてみれば、「絶対機械がぶっ壊れてたろ」って話なんですけどね。だって私の前後で数名、同じように赤いランプが点灯してたんだもん。笑


 空港の本人確認とか、怪しいのを持ってない確認が大切なのは非常によく分かります。ヤバい奴の出入国を水際で防ぐのは、空港に課された大事な使命です。

 だからこちらも最大の協力をするし、ちょっと疑われたくらいならきちんと身の潔白の証明に努めます。でも執拗に疑われると、こちらも気分下がっちゃいますよね。日本語で放送禁止用語言ってやりたくなります(日本語ならきっとバレないと信じて)。笑



 もう1つエピソードをお話しましょう。

 これまた、ある年、シンガポールでのことです。

 楽しい旅を終え、チャンギ空港から日本へ帰国しようとしていました。

 出国エリアに行くためには、パスポートの提示と指紋認証が必要だったのですが、ここで事件に見舞われます。


 なんと、私の指紋に機械がウンともスンとも反応しなかったのです。正常なら、指紋をかざした所がピカッと光って音が鳴るのですが、何も光らない。何も鳴らない。

 ちょっと慌てる私を見た女性スタッフが言いました。


 " Push little bit stronger. Like this." (もう少し強く押してみて。こうやって)


 私は頷いて、さっきよりも少し強めに親指を押し当てました。

 ……でも状況は変わらず。

 私は手のひらを確認しました。「指紋あるよね?」って。笑


 スタッフは唸ります。そりゃ唸るよね。だってもう5回くらいやってこれなんだもん。" One more time."、この言葉を何回聞いたことでしょう。笑


 そろそろ10回に達しそうな頃、スタッフは" Just moment."(ちょっと待ってて)と言い残し、少し離れた場所へ小走りして行きました。1人残された私ですが、ゲートは固く閉まっているので脱走はできません。それしたら指紋どころじゃないし。

 スタッフが走って行った先は、小さな事務所みたいなドア。その時、私は初めて震えました。


 ——これってアレじゃん! よくテレビの「衝撃映像集〜空港編〜」とかで見る、違法に出入国しようとしてる奴らを取り締まる時に出てくる部屋っぽかったじゃん!!


 海外の空港での検査で、おちゃらけた男性(実は麻薬密売者、あるいは不法滞在者)とかが「ん〜なんで問題ありなんだろうねぇ〜」なんてすっとぼけ、最終的に事務所に連行されてスタッフに真実を吐かされ、捕まるアレです。あくまで他人の話、と笑いながら見ていたあの番組の光景が、今まさに自分に降りかかろうとしている……!

 今まで何度も冤罪事件に巻き込まれてきた私だけど、ついにここで海外編が出来ちゃうの?! ってか同行者いるんだけど、離れ離れになるってやつ?! 私いつ帰国できるの?!


 私の脳内は色々とフル回転。

 ゲートを通過できず10分以上が経とうとしていて、冷房ガンガンの空港内で1人、私の体は少しずつ汗ばんで行きました。

 と、そこにスタッフが帰還。


 " Please come here and one more time, please." (ここに来て、もう一度お願いします)


 まさかのカウンター(機械)そのものを変更。笑

 私は動揺を隠せないまま、リトライしてみました。あの事務所の中で、別のスタッフに「時間をおいて、機械を変えてやれば、きっと通過できるんじゃないか?」とでも言われたのかもしれません。

 でも反応なし。私ではなく、機械を疑え機械を。笑


 だんだんスタッフもイライラしてきているのが伝わりました。いやぁそんなこと思われたって。私にイライラしないでよお姉さん。

 とうとう、彼女はイライラがピークに。先ほどより声を大きくし、私に軽く叫びました。


「オヤユビ please!!!!!!!!!!」


 怒っている彼女に失礼ですが、笑うの堪えるのに必死でした。

 まさかシンガポールで「オヤユビ」の単語を聞くとは。私のパスポートを見て日本人と分かり、咄嗟に日本語が出てきた彼女にびっくり。笑

 あと、さっきからずーっとオヤユビ出してますが何か。笑


 それでも私の指紋を認証しないクソ機械。

 もう感情のタガが外れた彼女は、ついに実力行使を始めました。


「オヤユビ…………!!!!!」←絶対怨念籠もってた


 そう言って、彼女は私のオヤユビを掴み、それはもう、とんでもなくすんげぇ力で、認証部分に押し当てたのです。怪力の持ち主でした。

 すると……。


 ——ピカッ! ピッ♪


 ゲート開いた!!! え???!!!


 " Your thumb is cold. Heat was important for this machine." (あなたの親指が冷たいのよ。機械が反応するためには、熱が必要だったんだわ)


 いやそれ先に言えよ。笑

 確かに空港はガンガンに冷えていたので、末端冷え症の私は指が冷えていました。時間をおいて機械まで変えてリトライした所で、さらに指が冷えて逆効果だったのでしょう。

 まぁとりあえず、某番組のように事務所に連行→不当逮捕、とならず一安心しました。

 ずっと預けていたパスポートが手元に戻って、やっと開かれたゲートを出ようとした時。


 " Have a good time!"


 イライラが収まってきた彼女は、私にそう声をかけました。" Thank you."と答えはしましたが、内心では(good timeも何もないやろ)と毒づいていましたね。


 この出来事は、私の中では空港で起きたハプニング第1位を獲得しました。こうして話のネタにできただけ、逆にラッキーと考えた方がいいんでしょうかね。笑

 このシンガポール旅、すごく充実して楽しかったんですけど、この事件のせいで旅のハイライトは「オヤユビ please!!!!!!!!!!」がかっさらっていきました。



 今度は、ハプニングのない平和な旅をしたいものです。笑


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