第19話 女子校の生態(その1)

 今回は、女子校についてお話してみたいと思います!


 女子校出身の人って、思ったより少ないんじゃないかな? と思って。

 きっと、よく分からない人からすれば、


 ・ 女子校は女の花園

 ・ 女子校はドロドロの沼

 ・ 女子校はみんなおしとやか


 ……的な、様々なイメージがあるのではないかと思いまして。

 そこで、6年間を女子校で過ごした私が、その謎の生態(?)を解き明かしていきたいと思います! ただ、これはあくまで私の学校についてですので、他の女子校にどの程度一般化できるか、には確信を持てません。また、特定防止のため、ある程度モザイクをかけて記述しますことをご了承くださいませ。



 記念すべき初回は、バレンタインデーのお話をしましょう。

 逆に共学のバレンタインってどんな感じなんでしょう? 少女漫画で見るような、女子が朝一とか放課後とかに意中の男子を呼び出して渡すスタイルが王道なんでしょうか? それとも、女子同士で友チョコを交換したり、男子にも分け隔てなく義理チョコを渡したりするのかな。


 私の学校では、バレンタイン=最大級のチョコレート交換イベント、でした。

 女子しかいませんから、友チョコ交換がメインとなります。時におじいちゃん先生に渡すこともありましたけどね。ここまでは、共学でも“あるある”かもしれません。

 しかし特筆すべきは、そのです。


 大体、【50〜100個くらい】必要になります。笑


 内訳は、

 ・ クラスメイト全員分(約40)

 ・ 部活の同期(約15)

 ・ 他クラスの仲良い友人(約5)

 ・ 部活の関わりが濃い先輩(約15)

 ・ 部活の仲良い後輩(約10)

 ・ その他にもらった人への返礼用予備(約15)

 となります。


 当然、いつもの通学カバンだけでは事足りません。そのため、「今日は帰りが遅くなるの?」と聞きたくなるような、別の大きなカバンにチョコレートを詰めて登校しました。チョコだけで1つの荷物です。笑

 前日の夜から、手作り派は入念に準備をして、チョコを大量生産します。包装済みのチョコがキッチンに所狭しと並べられた写真がSNSに上がるのですが……まぁ、圧巻の量です。甘い香りがプンプンと写真越しに伝わってきそうなくらいの量です。

 私は事情があって手作りできなかったので、既製品の大容量パックをいくつか購入し、それらを適当に組み合わせて可愛く包装していました(既製品組も割といましたよ)。特に仲の良い友人や、尊敬している先輩には、ちょっとお高めのチョコを用意していました。いわゆる“本命”、ってやつになるんでしょうかね。


 そして当日、教室に入るなり「おはよう〜」の挨拶と共に、チョコ交換会の始まり始まり。さすがにこの日は、完全夜型の私も部活の朝練並みに早起きしていました。だって、朝渡さないと先輩方に失礼な気がして。

 順番は、クラスメイト→他クラス→先輩→後輩、でした。最も緊張するのはやはり、先輩に渡す時。先輩の教室へ行って、オドオドしながら、出入り口で先輩の名前を呼ぶのです。


 これ、中1の時は本当に緊張しました。

 私の学校では、部活の最高学年は高2だったのですが、当時私は高2の先輩に憧れていたんです。

 とってもスタイルが良くて、美人で、優しくて、面倒見が良くて。

 私の部活では、開始前に2人組でストレッチの時間があり、中1と高2は必ず一緒に組むシステムでした。ただ、そのペアは流動的でした。

 しかし、私ともう1人の同期(Aちゃん)だけは、ペアが固定だったんです。なんと、先輩方が私達を可愛がってくれて、この2ペアだけは絶対に不変でした。

 そんな優しい先輩方に、私とAちゃんはメロメロ。部活が楽しみで楽しみで、ずっと前から「バレンタインはちゃんと渡そう!」と決めていました。

 でも、中1が高2のフロアに立ち入るなんて、とんでもないことなのです。

 それは例えるなら、単体のシマウマがライオンの群れへ突っ込んでいくような……。笑 それくらい、怖いことでした。

 それでもやっぱり、先輩への愛を伝えたい! という気持ちが強く、私とAちゃんは高2のフロアへの階段を上がり、チョコを渡したのです。

 結果、お2人ともすごく喜んでくださって。とても良い思い出になりました。


 逆に私が上級生の立場になると、自ら先輩の場所へ出向くことはほぼありません。同級生とのチョコ交換が終わる頃になると、いつかの私と同じような目をした後輩が、教室の出入り口に立っているのです。あぁ、なんて可愛いの。

 下級生の頃は、先輩はライオンみたいに怖いと思い込んでいたけれど、当事者になると全然そんなことありません。むしろ、天使みたいにあどけない後輩がやってくるのを、そっと見守っています。笑


「水無月先輩、ハッピーバレンタインです!」

「ありがとううううううううううううう」


 あぁ可愛い。しかもお手紙までついてると、本当に愛情溢れちゃいますよね。



 こんな感じで、女子校のバレンタインは、同級生とチョコ交換をワイワイ楽しみ、優しい先輩に緊張の面持ちでチョコを届け、可愛い後輩にデレデレになるイベントなのです。

 前日に50〜100個用意し、当日に交換して同量のチョコをもらうというトンデモイベント。1日で自分の机に収まりきらないくらいのチョコをもらって帰宅するのは、ちょっと不思議な気持ちがしました。昼食の前後に食べるのも楽しかったな。どのチョコが誰からのか、判別不能だったけど。笑

 あと、すっごいモテモテな気分になれました。あんな経験、もう二度とないでしょうし。机いっぱいに広げて、写真撮って、「私こんなにもらったの」って言えるのちょっと嬉しくないですか?笑



 ここまで女子校のバレンタイン事情をサラッと見てきましたが、最後に私がガチで驚いたバレンタインを紹介します。


 確か、高2か高3のことでした。

 学校にチョコを持っていく、それは本来禁止事項でしたが、バレンタインは黙認されていて。それでも(特に女性の)先生の目に入ってはいけなくて。

 そんなスリルを味わうことにも慣れてきた学年でした。


 例年のように、チョコの大荷物を抱えて教室に入ると。


「やぎちゃん、おはよーう」

「おはよ…………?!」


 なんとそこにあったのは、ドーナツが20個くらい入った、大きな箱。

 そして……


 


(え、待って待って、もはやっていう発想ですか)


「これめっちゃ重たかったんだよね〜」


 そう言いながら、コンセントを差して早速チョコの甘〜い香りを漂わせていたのは、中1の時に一緒に先輩にチョコを渡しに行ったAちゃんでした。笑 そりゃあ重いだろ。「家出でもしてきた?」って聞きたくなるようなカバンを見れば分かるわ。


「で、でも何かすごいね。その発想はなかった」

「へへっ、でしょ〜? 持ってくるの大変だから、ママに車で送ってもらっちゃった」

「なっ……?!」


 そうです。バレンタインのためなら車通学にするくらい、彼女は本気だったのです。彼女のパッションがその日の教室のネタをかっさらったことは、言うまでもありません。

 その後、私は朝食を取った胃の中にドーナツを収め、チョコレートフォンデュに漬けたお菓子を収め、同級生からのチョコを収めました。全て朝礼前までのお話です。

 先生にチョコレートフォンデュの機械が見つかってはマズいので(ガチ勢すぎて色々マズいと考えた)、朝礼始まる5分前くらいには適当に洗って撤収した記憶があります。笑


 後にも先にも、バレンタイン当日にチョコレートフォンデュの機械を持参した人間は見たことがありません。一生忘れないでしょう。笑

 ハロウィンもここまで大規模ではありませんが、お菓子交換会やミニ仮装パーティーが開かれたのでした。



 いかがだったでしょうか。

 皆さんの女子校のイメージと、似ていましたか? かけ離れていたでしょうか?

 次回も、同じようなテーマでゆるりとお話しようかと思います〜。



※追記※

 今までに、私はチョコが苦手だとお話してきました。生チョコとかダークチョコが特に苦手なので、それは帰宅後、一部家族に渡していました。でもホワイトチョコやイチゴチョコ、クランチチョコは好きなので、ありがたく頂いて食べていました。何だかんだ、もらっていたのはホワイトチョコやイチゴチョコでコーティングした手作りチョコが多かった記憶があります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る