第2話 とある朝

 レンガ造りの平屋の家に、甘ったるい女子の声が響く。

「まだ寝てるの兄さん、早くしないと靴下にイチゴジャム入れるよ〜」

 寝室のベッドで大の字に寝ている二重の目が少し開く。

 朝日に照らされた銀髪が眩しい。兄さんと呼ばれた青年は何やらブツブツ呟きながらテーブルのあるリビングまで気だるそうに移動した。

 席へ着くなり。

「靴下が甘くてネチャネチャして誰が得するんだよソフィーリア」

「毎日、起こすの大変。分かんないよね兄さんには」

 流し目で彼を見るソフィーリアはエプロンのままサラダを取り分けている。

「そんなに毎日毎日眠いなんて、ナニしてるのかな〜」

「男には色々あるんだよ妹よ」

 何事もないようにレタスを頬張る青年。

 ハァ……。ため息とともにスープを飲むソフィーリア。

「大変だ」

 いつもの朝に、切迫した声が割り込んできた。

「ダニーおじさん、いつもノックしてって言ってるでしょ」

 ソフィーリアは朝食を邪魔された事にイライラしているようだ。

 しかし兄の方は、目つきが変わった。

「ダニーさん、外へ出よう」

 食べかけのレタスを放って手の甲で口を拭った青年は真剣な顔で来客と玄関を出た。

 残されたソフィーリアは、呆気に取られていたが、しばらくして。また兄さん何かしてるんだ、ボソリと誰もいない食卓へ呟いた。

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乞眼のタイラント・フェアリー ヒロロ✑ @yoshihana_myouzen

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