乞眼のタイラント・フェアリー

ヒロロ✑

第1話邂逅

「何だお前は、まるで悪魔じゃないか」

 本来、虹色に輝く翼を持つはずの妖精の羽がどす黒く不穏な禍々しい姿、衛将が驚き戦慄いていた。

 鬼子だ。その言葉と共に皆が一斉に城の広場から逃げた。

 当の妖精は顔を歪ませて啼いていた。

 騎士王の孫、ハンスロットは笑みをたたえて近づいた。

「騎士様、お願いやめて。私はどうも呪われた存在みたい。きっと貴方を不吉にさせてしまうわ」

「私の剣は、その運命すら断ち切ってみせます。どうか私と契約を」

「ダメよ、私なんかと契約したら貴方は」

「契約の儀をしないと貴女はやがて消えてしまうでしょう。それこそ世を呪う存在になります」

「世のために犠牲になるの?」

「違います、目の前の貴女さえ救えずに何が騎士王の孫でしょうか」

 そう言ってハンスロットは笑って妖精の手を取った。ガラス細工のような今でも壊れそうな小さな手はもう震えてはいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る