牡牛座の、白黒な気持ち 上

私が生まれたのは、一般家庭よりは少しだけ裕福なお家で


地道に努力を重ね、家業を大きくした柔らかい笑顔で笑うお父さまと


病気がちだけど、優しく妻としての責任を全うするお母さまと


家業をいつでも継げるよう、小さい頃からちゃんと勉強に取り組み、父や母を支えながら、5歳年の離れた私を可愛がってくれた兄の、4人家族だった。


お家は少し大きかったから、お手伝いさん達もいて、その人達も家族としてカウントしても良いのなら、ざっと10人程。


私は小さい頃からのんびり屋さんでマイペースだったみたいで、そんな私を両親は笑って許してくれていた。兄が私の分まで頑張っていたから。



「お兄さま、いつもすごいねぇ」


今日も家庭教師と勉学に取り組む兄の部屋に入り、ちょっかいをかけにいっていた。


邪魔をしに来ていたにも関わらず、お兄さまは優しく私の頭を撫でてくれた。


「僕が父様と母様の役に立ちたいから、こうして頑張っているだけだよ。でも、こうして勉強するのは楽しくて好きだなぁ。」


にっこりと笑ってくれるお兄さまに、私も笑顔になる。


「お兄さまが頑張ってくれてて、きっとお父さまもお母さまも喜んでるよ〜」


「それはうれしいなぁ。さて、僕はこれからもう少しお勉強するからね、カノンはお庭で遊んできなよ。もうすぐ花を咲かせそうな蕾があったよ。」


「わぁ、見に行かなきゃだ!お兄さま、がんばれ〜」


お兄さまの部屋を後にして、庭に出る。


お兄さまが言ってた花ってこれかな?

蕾の状態だと、どんな花が咲くのかわからない。


「素敵な花が咲くのを楽しみにしているからねぇ〜」


私は小さな蕾のこれからが楽しみになっていた。




数日後の事、お兄さまが体調不良で寝込んでいた。


最近頑張りすぎていたのかなぁ。


私は毎日お兄さまの部屋に通っていた。


「休んでも中々良くならない。困ったなぁ。勉強が進められないや。」


お兄さまの黒い大きな瞳は、少しばかり疲れを滲ませている。


「お母さまも、心配性だから体調良くなさそうだねぇ」


「大丈夫だよ。僕が元気になれば、安心してくれるはずだからねぇ。」


私の言葉に、お兄さまは目を閉じて答え、ふぅ、とため息をつく。


「お兄さま、お休みの邪魔をしてごめんなさい。私もう行くね…また明日、おやすみなさい。」


身をかがめてくれるお兄さまの頬におやすみのキスをして、部屋を出る。


早く良くなってほしいなぁ、そう思いながら部屋に戻る。















それから1ヶ月後、お兄さまが不治の病にかかった事を知る。

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玲瓏たる星 あめ @ame_627

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