声劇台本4人用「判定の抵抗」

コペル

「判定の抵抗」

A:男性


B:女性


C:男女不問


D:男女不問



B:こんにちは


A:…今更こんな所まで…いったい何のようだ?


B:事件の記録読んだわ


A:だから何だ


B:単刀直入に聞くわ、本当に貴方がやったの?


A:やってない!俺はずっとそう言ってる…でもココに居る


B:私の目を見て、もう1度同じ事が言える?


A:あぁ…何度でも言ってやるよ、俺はやってない


B:本当なのね


A:どうせお前も信じないんだろ?


B:最初に私が何て言ったか覚えてる?


A:さぁな


B:ココから出してあげるって言ってるのよ


A:そう言って、実現出来た奴が何人居る?


B:私がその1人よ


A:前にそこに座って「大丈夫だ、もう心配しなくて良い」と言って来た奴が居た


B:そう…それで?


A:ご覧の通り終身刑になったよ


B:その弁護士は今、何処に?


A:さぁな…金が底をついたら姿をくらましたよ


B:私はその人とは違う


A:フン…どう違うんだ?


B:まず再審請求から


A:記録を見たんじゃないのか?


B:撤回させるのよ


A:出来なかったら?


B:刑事控訴裁に上訴するわ


A:それもダメなら?


B:既決囚救済か、人員保護請求して最高裁に行くの


A:そんな夢物語を信じると思うか?


B:夢じゃないわ!


A:もういい…看守さん、話は終わったよ


B:ちょっと待っ…



C:君が最近噂の弁護士か


B:へぇ、どんな噂?


C:民事事件で負け続けた挙げ句、突然殺人事件を扱い出した変人とね


B:褒め言葉と受け止めるわ


C:君に狙われた方も大変だな


B:刑務所から出る準備で忙しくなるからね


C:世迷い言が得意なのは本当だな


B:噂以上だったかしら?


C:それで…十年前の事件を、何故掘り起こす?


B:貧しい人にも司法の支援が必要なのよ


C:いつ沈むかわからない泥舟に、誰が乗りたがる


B:刑務所内に居る、私の未来の依頼人達よ


C:犯罪者全員を相手するつもりか!?


B:ちゃんと精査してるわ


C:奴等は罪も償わず釈放されたいだけだ


B:見に覚えも無い罪を、どう償えば良いの?


C:奴等の話を本当に信じるのか?


B:少なくとも彼はやってないわ


C:じゃあ何故、今アイツは務所に居るんだ


B:前任者が仕事をしなかったからよ


C:詭弁だな


B:あなたは、事件の記録をしっかり読んだの?


C:十年も前の事件なんて覚えて無いな


B:彼の有罪判決には重大な疑問があるわ、見て…この部分


C:証言の記録?


B:えぇ、だからこの真相究明させるのに、力を貸して欲しいの


C:私もこう見えて暇じゃ無いんでね、それに真相なら明らかだよ


B:ちゃんと話を聞いてた!?


C:君こそ理解してるのか?私の仕事は有罪判決の保持だ


B:嘘の証言に基づく判決でも?


C:そう思ってるのは1人だけだ


B:記録を読んだのは、私だけみたいね


C:奴が何をしたかわかってるのか?


B:何もしてないわ


C:この街に居る、善良な市民を傷つけたんだ


B:もう何言っても無駄ね


C:これから君が事件を蒸し返すと、また更に傷つく人が居る事をわかってるのか?


B:私の仕事は依頼者に正義をもたらす事よ


C:もういい、証言の資料を請求しなさい、数日で用意させるよ


B:そうするわ


C:それで、これから君はどう動く?


B:手の内を知りたい?良いわ…会わないといけない人が居る、とだけ教えてあげる


C:徒労に終わらない事を祈るよ



A:おはよう


B:また会ってくれたのね


A:家族に会ったって聞いたよ


B:悪かったかしら?


A:あんな田舎にまで行って、家族の前で闘うと


B:はっきり伝えて来たわ


A:礼を言う


B:当然の事をしてるだけよ


A:家族はなんて?


B:手紙を預かって来たの


A:読んでも?


B:その前に座らない?


A:それもそうだな


B:それで…改めて聞き込みして来たんだけど


A:何か掴んだのか?


B:あなたを事件現場で目撃した証言が、もうデタラメだったわ


A:あぁそうだ、あの時私は家族と一緒に居たんだからな


B:私も聞いたわ、あなたの庭でフリーマーケットしてたのよね


A:それでも証拠が無くて、家族もグルだろうと


B:その証拠を持ってきた…と言ったら?


A:あったのか!?


B:えぇ、新証拠として再審請求出来るわ


A:この手紙にも似たような事が書いてある


B:あなたの無実を信じてるのよ、勿論…私も、だから裁判をさせて


A:君は俺や家族の事を知ってるが、俺は君の事を知らない


B:例えば?


A:なんでも良い、君を信じる材料をくれ


B:そうね…私の目的はお金だった、あなたの前の弁護士と同じ、ね


A:じゃあ何故こんな一銭にもならない事を?


B:役割に気付いたの、間違えてる事を正せないのに、このバッジを付ける資格はあると思う?


A:生き方は、人それぞれじゃないか?


B:だから私は、私が恥ずかしく無いように、これからの私を誇りに思いたいから、正しい事をするの


A:綺麗事だな


B:嘘に振り回されるのは、ウンザリでしょ?


A:…分かったよ


B:分かった?


A:裁判をやろう


B:必ず無実を証明してみせるわ



C:調子はどうだい?


B:まぁ悪くは無いわ


C:何やら本格的に動くらしいじゃないか


B:あら?最初からそのつもりだったわ


C:相変わらずだね


B:それより、請求した資料は何処?


C:どうぞ、目撃者の2度の証言記録だよ


B:コレだけ?私は全調書と証言のコピーを頼んだのよ?


C:だから、それだよ


B:冗談は辞めて、残りは何処?


C:それで十分なハズだよ


B:開示請求したのよ?


C:十年も前の事件なんだ、仕方無いだろ


B:仕方無いって…1人の人生が掛かってるのよ?


C:ココで私に吠えても、無い物は無いんだ


B:…分かったわ…次に会うのは法廷ね


C:君が、判決を覆す材料を揃える事が出来たらね


B:新証拠はもう提示してあるわ


C:でっち上げてないと認められるまでは、何も変わらんよ


B:そんな事、本気ですると思ってるの!?


C:犯罪者に肩入れするような弁護士のやる事は、予測出来無いんでね


B:真実に見向きもしない弁護士も同じね


C:もう用は済んだろ?


B:えぇ、これからこの証言を確かめに行くわ


C:ご勝手に



A:おはよう


B:おはよう


A:挨拶はいい…今どんな状況だ?


B:…あなたを有罪にした証言人に会ってきたわ


A:なんだと?


B:怒らないで、それしか手が無かったの


A:奴が何をしたか、わかってるのか!


B:自分が助かる為に…あなたをハメた


A:アイツのせいで…俺はココから出られなくなったんだ


B:あの時は…ね


A:今になって改心したとでも!?


B:彼が今どうなってるか知ってる?


A:知らないし聞きたくも無いっ!


B:死刑囚よ


A:なんだと?


B:聞こえなかった?彼にはもう時間が無かったの


A:それじゃ…俺の証人は……


B:ただ…この裁判で真実を話すなら、あと1年は生きられるよう、手配したわ


A:それでも…奴はウソしか言わないぞ


B:いつ死ぬかわからない状況で、ウソをつくメリットが彼には無いのよ


A:俺をココに閉じ込めるメリットも、無かっただろ!?


B:それが…あったのよ


A:どういう事だ?


B:十年前も彼は捕まってたの、クスリでね


A:だからどうした


B:検挙率を優先して住民の信用を得たい警察と、司法取引したいヤク中…凄く匂わない?


A:まさか…そんな事の為に


B:そう…利用されたのよ、あなたをハメる事で自分の罪を軽くして貰う変わりに、犯罪者を作り上げるの


A:ふざけるなよ!それが警察のやる事か?


B:それが公になるのが怖くて、間違いを認められないのよ


A:それじゃ…なんの為の組織だ


B:そうね…だから私のような、弁護士が必要なの


A:来週の裁判…本当に勝ち目はあるんだろうな


B:新しい証拠と彼の証言があれば、問題無いわ


A:ココから出るには、それしか無いのか


B:悔しいのはわかるわ


A:やめてくれ…


B:そうね…でも最善を尽くしてるの…信じて


A:クソっ!!!


B:ココだけで良いから堪えて…お願い…


A:奴がまたウソを着いたら…今度こそ殺してやる


B:わかってくれて、ありがとう


A:ココだけだからな


B:えぇ、じゃあ裁判の準備に戻るわ


A:次会うのは法廷だな


B:そうね、ココから出る準備も忘れないでね


A:いつでも出れるさ


B:その調子よ



D:今日の審理で扱うのは感情的な問題です

もし適度な礼儀を保て無いという方がいれば

直ちに退廷して下さい

宜しい、始めましょう

では、弁護人


B:はい、裁判長

検察側の証拠は、記録にもあるように

ここに書いてある証人の証言だけです


D:有罪を確定させる他の証拠も

物的証拠も無いと主張するんだね?


B:えぇ、動機も何もなく1人の男の証言のみです


D:だが、判決に値する価値があったと、ココには記載されていますが?


B:それが本当に真実であれば、です


C:裁判長


D:検察側の意見はもう少し後です、弁護人続けて


B:それで、もう一度彼を証言台へ


D:宜しい、召喚しなさい


B:ありがとうございます


A:奴は来てるんだろうな?


B:勿論、あの警官が居るのがその証拠よ


A:………


D:証人、あなたは神にかけて、真実を語ると誓いますか?


A:前回も奴は誓ったよ


B:私に任せて

記録によれば、あなたは十年前もこの証言台に立ちましたね


A:あの顔を忘れた事は1度も無い


B:陪審員に何を証言したか覚えてますか?


A:……忘れたとは言わせないぞ


B:覚えて無いですか…大丈夫

しっかり記録文書が残っていますので


A:ふざけるなよ……


B:十年前、あなたは意思に反し、犯罪に巻き込まれ、そこで被告人が銃を持って被害者を見つめて居たと


A:お前のせいで…私は……


B:単刀直入に聞きますが、この裁判でのあなたの証言は真実ですか?


A:………


B:分からない?


A:覚えて無いだとっ!?


B:もう一度改めて聞きます、被告人はご存知ですか?


C:裁判長


D:異議申し立ては、後ほど聞きます


B:わかってるなら、指で指して貰えますか?


A:私の目をしっかり見るんだなっ


B:では、質問を繰り返します、あなたの証言は真実ですか?


A:……そうだ…全部嘘なんだよ


C:裁判長!


D:静粛に、静粛に!


B:デタラメなら事件の当日、彼に会ってませんね


A:そうだ


B:銃を持ってる所も、ましてや被害者すらあなたは見た事が無い…違いますか?


A:お前は何も知らない


B:正直に話してくれてありがとう…質問は以上です、裁判長


D:わかりました、続けて検察側から証人に質問を


C:はい、証人に質問します

あなたは司法取引に不満があり、考えたんではありませんか?


A:何を考えるって言うんだ…


C:もし、今日ここで証言を翻せば死刑は免れると


B:裁判長


D:今は検察側の質問です


C:もしくは、被告人に有利な証言をする事で、大きな見返りがあると


B:彼は死刑囚よ、命の岐路に立って過去の過ちを精算したいだけよ


D:静粛に!弁護人、許可無く発言するのは控えなさい


B:…失礼致しました


C:私が語るより、今の弁護人の態度が何よりの証拠ですね


B:………


A:何やってるんだ…


B:…ごめんなさい


C:私からは以上です


D:宜しい、では弁護人…他に何か?


B:はい、裁判長、事前資料に基づいた新たな証拠の提出をさせて頂きたいのですが、宜しいですか?


C:そんなもの聞いてないぞ


B:郵送した資料にしっかり明記してありますが?


C:そんなもの届いてないぞ!?


B:おかしいですね…裁判長の元には届いてるようですが?


C:私の所には来て居ない


B:おかしいですね…郵送のトラブルですか…ココには確かに2通送った控えがあるんですが…


C:裁判長、コチラに提示されて無い証拠は無効です


D:弁護人、控えを見せなさい…確かに同じ日に2通送ってますね…仕方ない、許可します 


C:そんな、裁判長!


D:弁護人側は然るべき対応しております、確かに届かなかった事は問題ですが、今回は弁護人に非が見受けられませんので、承認します


B:ありがとうございます

こちらは、事件当日被告人が開催したフリーマーケットに立ち寄った警官の日誌です


A:そんなもの…何処で?


B:後で説明するわ、この日誌によると弁護人は家族と共に居たことの証明になります


A:それがあの時言ってた証拠か…


B:更に先程の証言人の記録では被害者は仰向けで店の入口とありましたが


A:奴は嘘だと認めただろ


B:事件を担当した元刑事の報告で、遺体は店の奥でうつ伏せに倒れて居たとの記録があります


A:そこまで調べたのか…


B:また、元警官によると、検察が弁護人に遺体は店の奥にやったと偽証するよう迫り、それを断った事で解雇されたとも


C:それこそデタラメだ!


D:静粛に!


B:被告人が無罪を証明する記録はまだあります


C:そんなもの、全部そちらが用意した偽装書類じゃないのか


B:いいえ、何故ならコレは検察側が裁判で開示しなかったものよ


C:なんだそれは!


B:弁護人が精神科へ通った報告書と、そこでの医師とのやり取りの内容です


A:そんなものまで…


B:この内容によると、弁護人は死刑になるとひどく怯えております


D:なるほど


B:秘匿は開示義務違反であり、弁護人の人権侵害です


D:検察側、何か意見は?


C:事実確認が取れておりませんので、発言は改めて文書で報告させて頂きます


D:わかりました


B:真実が闇に葬り去られてから十年の月日が流れましたが、まだ正義は間に合います


A:………


B:裁判長、我々の請求に認め、再審を願います


D:今回の審理で起こった全てに精査し、後日判決を下します…起立



A:…ありがとう


B:私は私のやるべきことをしたまでよ


A:この裁判で驚くことばかりだった…


B:正直に言うと…私も驚いたわ


A:良してくれ(笑


B:初めて笑ってくれたわね(笑


A:お互い様だよ



D:前回の審理より2週間の期間を置きました

判決の前に本法廷において、礼儀が保たれる事を期待します

前回の証人による証言の関連部分については

全てでは無くとも大部分を撤回した

それにより、過去の裁判と今回の裁判での

どちらかが偽証であると発覚した

精査により、彼が過去の裁判で偽証したと言う

決定的な証拠は提出されていない

また、今回の出廷が教唆によってもたらした

可能性があると判断し

前回の証言に信憑性が欠けるとの結論に至った

よって、本法廷では次のように決定する


A:オイ…コレはどういう事だ…


B:静かに、最後まで聞いて


D:過去の裁判での証言は偽証で無いと認め

再審請求を棄却するものとする


A:なんだ…コレは…


D:被告人は刑務所に再収監とし、刑期を全うする事


C:当然の結果だな


A:ふざけるなっ!


D:静粛に


B:ダメ、今はまだ落ち着いて…


A:コレが落ち着いてられるかっ!偽証したのは過去の方だろ、どういう事だっ!!


D:被告人、静粛にっ


A:何故、犯しても無い罪を償い続けなければならないっ!


D:静粛に、聞こえないのか?コレ以上続けると法廷侮辱罪に課しますよ


B:私がなんとかするから…お願いっ!ここで捕まったら、全てが無駄になるわ


A:クッ………


D:本法廷はこれにて閉廷します、起立



B:ごめんなさい…


A:あんたが謝る事じゃない


B:それでも…


A:逮捕された時、軽く考えてたよ…


B:……


A:俺はやってないんだから、すぐ出られると


B:…そうね


A:でも…警察は俺がやったと言い、赤の他人が俺が殺すのを見たと言う


B:可笑しな話だわ


A:ニュースも、判事も、陪審員も、俺がやったと


B:あなたはやってない


A:十年もココに居ると、世の中の全員に疑われてる気がして、自分がわからなくなる…


B:そんな事無いわ


A:でも、奴が証言台で真実を語った時…俺は自分を取り戻した


B:もう一度掛け合ってみるわ


A:もし…ココから出られなくても、俺は笑って過ごして居られる…真実を取り戻したから


B:なんとかするって言ったじゃない


A:あんたが真実をくれたんだ…もう、誰にも奪わせない


B:私はまだ降りないわよ、最後まで闘うわ…それに、私が最初に何て言ったか覚えてる?


A:ココから出してあげる


B:そうよ、その為に私が居るんだから


A:なら、今は謝る必要なんて無い


B:もう少しだけ、待っててね


A:あぁ、わかってる



C:今更なんの用だ?判決は出たじゃないか


B:審理が終わっただけよ、まだ最高裁が残ってるわ


C:もう結果が見えてる事を、何度繰り返す?


B:最高裁に証拠を提出して、再審を開かせるのよ


C:いくら権限があるからといっても、最高裁が動くとは限らないだろ?


B:外部の裁判所なら、今回のように証拠を無視出来無いわ


C:それで、君の思うように、仮に全てが上手く行っても奴は、釈放された後が地獄だな


B:どういう事?


C:1度染み付いた殺人犯のレッテルは消えないからさ


B:そんな事させないわ


C:どうやって?言うは易しだが、他人の印象なんて思うように変えられないぞ?


B:メディアで事実を流すわ


C:奴が殺した事実なら、もう知ってるよ


B:今回の審理で起こった事、彼の下された判決…その全てよ


C:そんな事して、どうなるかわかってるのか!?


B:今も尚、収監されてる彼の気持ちを、考えた事がある!?


C:……私に何を求めてるんだ


B:再審よ、その為に必要な事をして欲しいの


C:本気で最高裁に提出するつもりか?


B:その為にあなたに会いに来たのよ


C:少し考えさせてくれ


B:明後日までね、あまり長くは待てないのよ


C:わかってる



B:調子は…どう?


A:良く見えるなら、眼鏡をオススメするよ


B:昨日、検察にアプローチしたの


A:それは俺の望む結果に繋がるのか?


B:恐らく…ね、あちらが動かないとメディアに出るって脅してやったわ


A:そんな事したら、君も危うくなるんじゃないのか?


B:私の面子なんて、元から無いに等しいわよ


A:どうして…そこまでして……


B:あなたは、真っ直ぐ私の目を見て、やってないと言ったわ


A:ココから出たい奴は、皆そう言うさ


B:そんな事無いわ、後ろめたい人に、あんな目は出来無いもの


A:どうかな…


B:とにかく、明日もう一度検察の所に行って再審の手続きに取り掛かるわ


A:今度こそイケるのか?


B:もう、失望させないわ



B:準備は、出来た?


C:その前に、1つ言いたい事がある


B:いつでもどうぞ?


C:私は、この街の住民の安全を守るのが仕事なんだ


B:1つ聞くけど、その住民の中に彼は入らないの?


C:それは…


B:あなたは前に言ってたわね、自分の仕事は有罪判決の保持だって


C:あぁ、それは今も変わらんよ


B:違うわ、あなたの仕事は正義の実現なのよ


C:何が言いたいっ!


B:2人で協力しないと、あなたの守るべき街で真犯人は野放しのままなのよ


C:この状況で、私に説教するつもりかね?


B:違うわ、あなたは善悪の区別が付く人なのよ


C:知ったふうな口を


B:現にあなたは、彼が無罪なのを本当は知ってるもの


C:それは…


B:そうじゃ無ければ、メディアの脅しも効かないハズだもの


C:私の仕事に余計な評判を付けたく無いだけだ


B:この起訴の取り下げ請求に、あなたも加わるべきなのよ


C:そんな事、出来る訳ないだろ!!


B:ここまで来て、出来る、出来無いの話じゃないわ


C:とにかく、最高裁への審理に必要な書類だけは、まとめてやったんだ、これ以上贅沢言うな


B:本当に、一緒に闘わなくて良いのね?


C:あぁ、次は最高裁での審理でな



B:通知が来たわ


A:……どうなった?


B:最高裁での審理が認められたわ、今までの証拠が生きたのよ


A:良し!!


B:今度は前のようには、いかないハズよ


A:あぁ…そうなるよう祈るしかない


B:神頼みは止して、2人で掴み取るのよ


A:そうだな…やってやろう


B:えぇ、頑張りましょう



D:只今より、被告人に対する起訴の取り下げ請求の審理を開廷致します

まずは弁護人の陳述から始めて頂きます

弁護人の発言が終わった後、検察側の見解を求めます


B:コレは、1人の男性の冤罪裁判に思えます


A:……


B:有罪の根拠も、薬物使用者の証言のみで無実の証拠は隠匿され、真実を語る者は脅迫を受けた


A:そうだ…何も正しく無い


B:コレは選択の問題です、恐怖と怒りによる支配を取るか、法による支配を取るか…答えは明白です


A:法を守るのが…この世界の義務だろ


B:真実を明るみにし、法と秩序と正義の為に

即刻起訴を取り下げるよう求めます


A………


D:続いて、検察側はどのような見解を述べますか?


C:裁判長…少し前に出させて頂きたいのですが、宜しいですか?


D:こちらに?どうぞ


C:実は…困った事になりました


D:困る…あなたが?


C:えぇ…とても


D:どうしたのです?


C:この街の皆様は、毎日安全に暮らしたいと願って居ます


A:アイツ…どうした?


B:私にも、分からないわ


C:もし大きな事件が起きても、必ず解決して罰してくれると信じています


D:検事?


C:今回の事件においてもう一度、くまなく調べてみたのです


A:どういう事だ?


B:最後まで聞きましょう


C:証拠を見てみると……被告人の取り下げ請求に異議がありません


A:なんだって!?


B:…信じてたわ


D:検察側にもう一度、改めて確認致します

起訴の取り下げ請求に加わるのですか?


C:そうです、裁判長


A:オイ…って事は


D:静粛に


B:まだよ、まだ終わって無いわ


D:静粛にっ!


C:裁判長、判決にはどのような裁量を?


D:そうですね、今回の被告人対検察側の裁判において、両方とも同じ見解を述べました

従って、本法廷は被告人側の請求を認め

懲役刑を取り消します


A:本当に!?なぁ、オイ聞き間違いじゃないよな!?


B:えぇ、ココに居る皆が聞いたわ


C:もうコレで君は、あそこに戻らなくて済むんだ


A:どうして…何が起こったんだ…


B:あなたが勝ち取ったのよ


A:そんな…いざこの時が来ると…なんて言えば良いか…


D:長い間、よく頑張りましたね


A:ありがとうございます…ありがとうございます


D:いいえ、私も今日は仕事が楽に済んで良かったです、では本法廷はこれにて閉廷致します


A:本当に、君が頑張ってくれたおかげだよ


B:最後まで諦めずに居てくれたからよ


A:検事さんも…真実を伝えてくれて…本当にありがとう


C:私は自分の仕事を、したまでだよ


B:わかってくれて良かったわ


C:君の為じゃない、この街の住民の為だ


B:ほら、いつまでココに居るの?


C:家族が待ってるよ


A:もう…行って良いのか


B:あなた人生を取り戻したのよ、好きに生きて良いの


A:ありがとう


C:これから君は、どうするんだ?


B:まだやっと1人よ?他にも救いの手を待ってる方は沢山居るわ


C:奴等は釈放されたいだけだよ


B:本当に無実なら、私だってそう思うわ


C:変わらないな


B:あなたは変わったわ


C:変わらないよ、ただ…思い出しただけだ


B:なら、もう忘れないようにね


C:あぁ、そうさせて貰うよ


fin


























































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