98 パメラの初風呂
「一緒にって?」
キョトンとした顔のパメラがニコラに問いかける。
「ニコラとお兄ちゃんとパメラちゃん!」
「ええっ、そんなの無理!」
途端にパメラが大声を上げた。そりゃそうだ。
「大丈夫だよ、ほら!」
いきなり脱衣所でスポポポーンと裸になるニコラ。そして仁王立ちするその平面体の大事な部分は、謎の光に照らされて見えなくなっていた。ニコラの光魔法『
「ほら、この魔法をパメラちゃんにもかけてあげるからね!」
「えー、えー、でも……」
「僕はあとか『今いいところですから黙っててくださいね』」
お、おう……。
「お兄ちゃんの作ったお風呂はすっごいよ。お肌がつるつるピカピカになっちゃうんだから。今よりもっとかわいくなれるよ!」
ニコラが笑顔で断言するとパメラは俺の方をチラリと見た後、
「そうなの? ……そ、それじゃあ入ろうかな……」
途切れそうなほどか細い声で答えた。それに満足げに頷いたニコラが俺の方を見ながらニヤリと笑う。
『ほら、これで逆にお兄ちゃんが入らないなんて言ったらパメラの勇気を無駄にしますし、私と一緒に入るの嫌なのかな? なんて思っちゃうかもしれませんよ』
『えっ、うーん。そうなるのか?』
『そうです』
逃げ道を塞がれた感があるが、まぁいいか。大事なところが隠れてるなら温水プールみたいなものかもしれない。浴槽も大きいし。
そしてニコラがパメラに『
「ニコラ、僕にも『
『仕方ないですねー。チンカラホイ』
ニコラが俺の前で指をくるくる回すと、指先から光が飛び出して俺の体に定着した。
恐る恐る服を脱いで確かめてみると、たしかに俺の下半身は光の帯が横切る形で見えなくなっている。……んだが、乳首も光で隠れている。俺には別にいらないんじゃないのかなコレ。
ニコラの方を向いて無言の抗議をすると、
『三点セットなのです』と念話が返ってきた。
……俺だけ乳首隠しの光がハート型なのは悪意しか感じないんだが。
ニコラと一悶着している間にパメラは脱ぎ終わったらしい。着ていた服を胸に抱えて所在なさげにそわそわとしていた。まぁ実質裸みたいなもんだしな。
俺は脱衣所に土魔法で棚を作り、パメラに指差してみせた。
「服はここに置いておけばいいからね」
「う、うん」
服を棚に置いたパメラは胸と下半身を腕で隠す、いわゆる手ブラ手パンツの構えだ。そしてなんだかもう見慣れてしまった感があるが顔も真っ赤である。
「大丈夫だよ、見えてないよ。今からお湯をかけるからしゃがんでもらえるかな」
浴槽に入るまえに軽くかけ湯をしてもらおう。パメラにしゃがんでもらい、右の手のひらから水魔法と火魔法のお湯を出してパメラの頭にお湯をかけてやる。パメラの青みがかった髪が濡れて肌にぺったりとひっつき、お湯の流れに沿ってゆらゆらと揺れ動いている。
「そのままちょっと浴びててね」
「うん」
「お兄ちゃんニコラもー」
「はいよー」
左手で同じようにお湯を出す。温度を左右で変えろと言われると少し難しいかもしれないが、両手で同じ様にお湯を出すのはそう難しくはない。それにしても人間シャワーにでもなった気分だ。
そして最後に自分もお湯をかぶり、三人で空の浴槽に横並びに座った。
「少しだけ待ってね」
浴槽にお湯を注ぐ。空の浴槽に裸で座っているのはなんともシュールな絵面だな。
そうして胸のあたりまでお湯がたまった頃、パメラは指先からちょろちょろと水魔法の水を出しながら呟いた。
「……お母さんもこのお風呂くらい出せるのかな?」
「どうなんだろうねー」
あまり他人の魔法を見る機会がないのでなんとも言えない。セリーヌから子供の頃は酒樽半分くらいの水がせいぜいだった言う話は聞いたことがあるけど、大人ならどうなんだろう。
少し考え込んでる間に肩までお湯が溜まった。最後の仕上げにE級ポーションを10個分ほど入れる。
「それはなに?」
「ポーションだよ。これを入れると体にいいんだ」
「ふーん?」
どうやらよく分かってないようだが、わざわざ10個で金貨10枚の価値だよとドン引きさせることもあるまい。
なんにせよ、これでようやく落ち着いた。さすがに働き詰めの後で小屋を作った上に浴槽をお湯で満たすのは少々疲れたね。しばらくはお湯に浸かって疲れを癒そう。
――しばらくじっとしていると、ずっと黙っているニコラがふと気になった。ニコラに顔を向けてみると、ニコラは三角座りでお湯に浸かるパメラをじっと見つめていた。……うん? なんだかニコラの目の辺りがボヤけて見える。マナが流れているような?
『ニコラなにやってんの?』
『おっと気づきましたか』
こちらを見ずにニコラが答えた。
『私の目を覆っているのは「
『はあ、お前の欲望の対象って大人の女性だけじゃなかったのな』
『これはちょっと違いますね。ほら見てください、パメラは見えてないことを信用して、ついに三角座りを解いたでしょう? でも私には見えてるんですよ、あの未成熟な果実がね!』
ニコラはパメラの方を向いて鼻息荒く両手を握りしめている。パメラはそんなことには気付かず、目を閉じてお湯に全身と溶かしているように身を任せていた。
『もしもですよ、私が「全部見えてるよ」と言えばパメラはどんな顔をするんでしょうね? おっと、本当に言ったりはしませんよ。しかしそれを想像するだけで……、私はもう萌え死にそうなんですよ!』
ほんとこいつ何言ってるの? 俺の理解の及ばない変態行為は止めていただきたい。
それにしてもパメラもパメラで気を抜きすぎじゃないのか。今は何とか顔だけをお湯から出して、体を大の字にして湯船に身を任せているんだが。恥ずかしがり屋のパメラにしてはありえない格好だ。心配なので声をかけておこう。
「パメラ、お湯の加減はどうかな?」
「ふにゃ? 気持ちいいよお~」
パメラは何だかすっかり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます