(四)

 校門に取り残されてしまったけど、もちろんまだチャンスはある。ムサシ君は電車通学だ。駅まで行ってから電車に乗る。対して彼の腕にしがみついていた北方さんは地元の子だ。駅まで行く途中で交差点を折れて帰るはず。駅まで行っても改札の中には入ることがないだろう。つまり、まだ駅で伝えるチャンスが残っている。

 そう思い、私は足早にムサシ君を追いかけた。

 駅の手前でムサシ君たちの一団に追いついた。駅の改札を抜ける直前まで、北方さんはムサシ君の腕にしがみついたままだったが、能登さんがそれを引きはがし、ようやくムサシ君は改札に入ることができた。サッカー部の男子たちの数も半分になり、ムサシ君とあと二人だけになった。


(続く)

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