(四)-2

 私も改札を抜けた。そして階段を上って行く途中でムサシ君に追いついた。

「小杉君」

 そう言いかけたけど、上り階段で先を歩いて行くムサシ君はいつも以上に背が高く、声をかけづらかった。二人の男子とも談笑していたし。なおさらだった。

 心臓がどきどきした。お礼を言うだけなんだから、ドキドキなんてする必要ないのに。

 でも、これが最後のチャンスだ。階段を下っていき、ムサシ君がホームに降り立ったとき、私はムサシ君に声をかけた。この時点なら、私もまだ階段にいて、背の低い私と背の高い彼との身長差はあまりない。その分、話しかけやすい。まさしく今しかない!


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る