(三)-5

 すると、ムサシ君の体がバランスを崩して少しよろめいた。

「先輩! 好きです!」

 気づくと北方嬢がムサシ君の腕にぶら下がっていた。

「だから先輩! 一緒に帰りましょう!」

 そういうと、北方嬢は腕をひっぱりムサシ君と行ってしまった。

 その二人を、同じく後輩の能登ナナオが「先輩はあんただけのものじゃないんだよ!」と追いかけていった。

 能登さんは今年サッカー部にマネージャーとして入った女子生徒だった。ムサシ君狙いというわけではないみたいだったが、先輩のことをカッコイイとは思っているようだった。

 そうして彼らは行ってしまった。

 こうしてまた、私はムサシ君にお礼を言いそびれてしまった……。


(続く)

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