4.一次創作と二次創作と文学

 それまで、自分はオリジナル(一次小説)を書くこともありましたが、どちらかというと二次創作にいそしんでいたので、二次小説をネットで読んだり書いたりしていました。


 これも最初は二次創作というものがあること自体を知らなくて、高校時代に友達に一緒に二次のイベント(小規模なコミケみたいなもの)に連れて行ってもらい、買って読んだのが最初でした。


 そんな友達を含めた数人で月刊誌を作るようになって、そこでは数人がお気に入りのゲームをコミカライズしたりノベライズしたり。自分も含めて数人はオリジナルの短編小説やイラストや漫画をかいていました。

 

 ネット時代になってからは個人の小説サイトを運営し(今あるような無料小説投稿サイトはまだなかった)、同じ様な二次創作個人小説サイトを巡回していました(登録すれば同じジャンルでつながれるバナーがあった)。


 その後ブログもあるということから、個人サイトをたたんで、FC2小説様という無料小説サイトにも登録しましたが、やっぱり書くのも読むのももっぱら二次で、そこにある一次小説はあまり読んだことがありませんでした。


 読んでも、理解できないか、途中で読めなくなることが多かったからです。

(いくつかは今でも内容を覚えているくらいお気に入りだったり強烈だったりしたので、今思うと、そこで自分が読んだ一次小説が少な過ぎて、すごく好きだと感じる小説まで行き当たらなかったんじゃないかと思います)


 どうして二次作品を楽しむのかというと、自分でもわけのわからない衝動がくるからなのですが、あえて言語化するなら、原作の感動を自分でも表現したい、感じ続けたいからなのかもしれません。


 書き手としては、原作ではさらっと流されている部分を自分の言葉で補完したい!

 読み手としては、原作では書かれていない部分はきっとこうだっただろうと自分が思っていた通りの二次作品が読みたい!


 のです。

 二次ならすでに登場人物も世界観も知っているので書きやすいし、キャラの解釈が自分と違わなければ読む気になります。


 自分と同じ解釈をしたキャラを使って、原作の世界観を壊さないで、納得できる話を書いてくれているだけで読む気になります。それこそ個人サイト時代は毎日巡回して何百何千と読み、もはや原作の展開がどれだったかわからなくなるほどでした。

(二次作家様は短編が多いからか100作以上書いている方が多かった)


 ところで、自分は小さい頃から小説家になりたかったのに、どうして文系に行かずに理系に進んだかというと、社会科が壊滅的にできなかったのもあるんだけど、「文学とは背景を知らないと理解できない分野だ」と思ったからです。


 例外的に、昔からある名作と言われる子ども向けの児童文学は、自分でも比較的普通に読むことができます。


 でも、大人向けの名作のいくつかは、その時代背景や作者自身を知らないと正確に理解できない。と、説明されたか読んだかした時点で、文学から興味を失ってしまったのでした。

 

 私が楽しみたいのは物語です。


 どうして物語を楽しみたいだけなのに前情報を集めなければならないのか。

 知識がなければ理解できないって、文学とは高尚なものなんだなぁ。

 それは自分が目指しているものとはちょっと違うかも、と。


 現代語訳の枕草子を読んだ時も思いました。

 宮中で働く人たちにとっては、和歌のやりとりをするには漢詩の知識あってこそで、それを知らなければダサい。


 それはわかります。

 でも、宮中で働いていればそうなのかもしれないけれども、和歌を使いこなす必要がない立場の人にとっては、ただ偏った知識でしかないのでは?

 

 たとえるなら、IT横文字を日常でも使ってしまう社会人とか、ネットスラングを普段から使いまくるPCオタクみたいに思えてしまったのです。


 あ、もちろん、正確には違うってわかっていますよ!

 おそらく書いた作家様本人は「俺サマの作品を読むために勉強しておけ」なんて思ってない気がしますし、清少納言様にしても「内輪ネタなんだから、そんなに深く考えなくていいのよ?」とか言ってくれそうです。


 IT用語を否定したいわけではないですし、ネットスラングは自分も使うし、和歌や漢詩は普通に好きだし、オタクは自分にとってはそこまで打ち込めて詳しいことに対する敬称です! どれについても貶めたいわけじゃないんですよ!

 用語は必要でスラングは時代の象徴、知識は力で、古語や芸術的な文学も途絶えさせてはいけないとわかっています!


 ただ、なんていうか「文学って、知っているという一部の人しか楽しめないジャンルなのか」とガッカリしたのです。

 理解できない自分は文学の世界から閉め出されたように感じたというか。


 誰かの一次小説が、自分にとっては思わせぶりでふわっとしていて意味不明な内容だったとしても、誰かからは絶賛されていることがあります。その絶賛される部分を自分は理解できていないということは、自分にはその感覚か知識がないということで。


 それが古典や自分が生きていない時代や国の小説なら「自分が勉強不足で知識がないから仕方が無い」と思えるのですが、最近ネットに書かれた専門的でない一次小説だと、理解できる感覚があるかどうかって話になります。

 残念なことに理解できないことが続いたため、ネットで一次小説を読む気がなくなっていったのでした。


 そんなわけで、他人の一次小説は主に書籍化されたものしか読んでいなかったのですが、今回、かなり趣味のあう友達から勧められたこともあり、再び読んでみることにしました。


 そこで初めて「小説家になろう」サイトに出会ったのです。

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