3.ゲーム が あらわれた!

 小さい頃はアニメを名作劇場と日本昔話くらいしか見せてもらえず、クラス全員が見ていたボールを集めて願いを叶えるアニメが見たくてたまりませんでしたが、なぜかゲーム機は買ってもらえました。


 新しい娯楽を子どもと一緒に楽しみたいと思ってくれたのかもしれません。


 見たいテレビ番組がない時は、家族全員で七並べや花札やドンジャラをしていたのですが、そこにパックマンも加わり、毎回一番は母でした。


 それまで、PCゲームやカセットテープのゲームは友達の家でさわる機会がありましたが家にはなく、薄暗い喫茶店やゲームセンターではなくて、家のテレビ画面で簡単にカラフルなゲームができるのは衝撃的でした。


 でも、セーブして続きをするようなゲームはしたことがなくて、アイスクライマー、スーパーマリオ、インベーダー、ゼビウス、ドアドア、ちゃっくんぽっぷ、プーヤンといったアクションやシューティングゲームばかり。RPGに触れたのは中学生になってからでした。


 ドラクエもFFも出ていたのに、なぜか最初に買ったのはMOTHER。

 CMを見て気になったからだったような?

 あのメロディを聴くと、今でも反応してしまいます。


 RPGのいろはもわかっておらずレベル上げの概念もなかった自分は、大変な苦労をしてクリアしました。

 その後、友達からFFを借りたりドラクエを見せてもらったりして、だんだん『RPGとはこういうもの』というのがわかってきました。


 どこにでも行けるけど、無作為に進みすぎるとレベルが足りなくて進めなくなる。

 街の人から話を聞いてヒントを頼りに進める。

 聞き逃すと大変なことになることがある。


 自分には自由度が高いロマサガ系はできず(基準がない自分には選択肢が多すぎて進められなかった)、借りたもののクリアできずに返して、あらすじだけ聞きました。


 ゲームは本体もソフトも高く、クリアするまでに長い時間がかかります。

 長時間かかるからか、自分で操作するからか、同じ音楽を聴き続けるからか、高いからもったいなくて何度もプレイしていたからか、ゲームに対しての思い入れが強くなりました。


 音楽好きな友達からはドラクエのCDを貸してもらえ、こちらからはMOTHERのCDを貸すという感じで、自然とゲームCDも買うようになりました。ゲーム関係はとにかく高いので、友達との貸し借りは重要です。


 大変かしこい友達が自分と同じようにゲームをしていることが不思議で、なんでゲームするのか聞いたところ、


「ゲームするのも楽しいけど、ゲームのどこがどうだったと誰かと話すのが楽しい」


 と、答えたのです。


 なるほど、確かにそうだと思いました。


「あー、自分もあそこでつまった」

「あれどうやって解いたの?」

「あのキャラには騙されたよね」


 そんな風に誰かとわいわい言うのが楽しい。


 本来は違うのかもしれませんが、そのとき『ゲームとは、時や場所が違っても共通の思い出を作れるもの』だと自分は認識したのです。


 きっと今までその位置にあったのは物語でした。

 なんとRPGゲームでは、色つき画像で音楽やそのうち音声までついて、物語の主人公を自分で操作できる。


 ハマりました。


 そんな頃に、テーブルトークRPGを好きな友達が手ほどきしてくれ、テーブルトークRPGをさせてもらったことがあります。


 ゲームでなら機械が担当するお話部分をゲームマスター(生身の人間)が語り、物語が進みます。参加者の初期ステータスや敵に与えるダメージ量、宝箱を開けられるか、宝箱の中身はなにか、という確率的なものはすべて参加者やゲームマスターがサイコロを振って決めます。参加者は登場人物になりきって話しながら次の行動を決め、敵の行動や周囲の状況すべてをゲームマスターが語ります。


 だいぶ違うけれど、誰かがシナリオを用意して語ってくれる人生ゲームって感じでしょうか。

 とっても面白いのですが大変時間がかかります。


 数時間用のシナリオだとワンエピソードで、物語的には少なくて物足りない。でも、物語的に満足できるような長いシナリオになると平気で数日かかります。

 数日かかるのはいいんだけど、毎回まいかい同じメンバーで集まらなくてはならないのは難しい。


 なるほど、ゲーム機のRPGができるわけだ、と思いました。

(私はゲームから入りましたが、先にテーブルRPGがあって、それをゲーム機でできるようにしたそうです)


 RPGゲームなら、自分さえいれば後は全部ゲーム機がやってくれます。

 その場で友達と話せないけれども、同じRPGゲームをしている友達がいれば、後から話すこともできます。どこまで進んだ、どうやって攻略したなどを話し合うのは楽しいものでした。


 ゲームはどんどん進化していきました。

 シューティング、アクション、パズル、アドベンチャー、クイズ、格闘、音楽、ノベル、RPG、etcと種類も増えました。


 ホラーノベルゲームを1人でするのは怖いけれど、友達数人ときゃあきゃあ言いながらするのも楽しかった。


 ゲームセンターには大型の画面が設置され、ほぼ等身大のキャラクターが格闘を演じるのは迫力がありました。


 そのうちゲームセンターにプロみたいにうまい人が現れて、あざやかな格闘技に、ありえない数の弾幕よけに、落ち物パズルの大連鎖に、ワンコインクリアに、すごいリズムを刻む両手に、転ばないのが不思議な足技に、その場はわきました。


 普段ゲームをしない友達にゲーム画面を見てもらったら、

「こんなところに最新技術が使われている!」

 と驚かれたこともありました。


 今では見慣れたモーションキャプチャーも、違和感の少ないCGアニメも、自然な水の動きや花びらが舞い散るCGも、最初はカクカクしていて、だんだんなめらかになっていくのを、ゲームをしている人間は、ゲームセンターの大画面や家のテレビで目の当たりにしてきたのです。


 そんな風にゲーム沼にどっぷりつかって、社会人になってからは「やっと連休だ! 買っていたゲームをクリアするぞ!」を楽しみにしていました。

 が。

 そんな生活ができるのは実家で暮らしていたからで、結婚してからは生活のため、子どもとの時間と、自分だけが使える時間は少なくなり、ずっぽりゲームなんてできなくなります。


 ああ、またいつかしたゲームみたいに物語にひたりたいなぁ。

 そう思った自分が最初にしたのはアニメを見ることでした。


 延々とレベル上げしなくても、街の人に声をかけまくらなくても、物語が勝手に進んでイベントムービーが見られる、むしろムービーしかない。なんて楽なんだ!

 

 確かにゲームよりは楽なのですが、当たり前ながら普通に話すセリフを聞くのには時間がかかります。

 こちらの自由時間は短いので、テレビの前にただじっと座ってもいられません。


 だんだん、隙間時間にスマホで無料漫画を読むようになりました。

 漫画ならアニメと同じ時間で倍以上の物語を読み進められますからね。


 そんな時、友達から、

「最近、無料小説サイトの小説ばっかり読んでるわ」

 とメールがきたのです。

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