2.昔話を知っていますか
昔話といえば、
「むかーしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました」
が、思い浮かぶのではないでしょうか。
日本昔話の多くが、おじいさんとおばあさんがなにかして、最終的に正直者なら幸せに、欲深ければ大変なことになるオチです。
主人公がなにかを助ける系もそう。
助けたあとも誠実に接していればそれなりの見返りが、心ないことをすればそれ相応の
子どもたちに何度も読み聞かせていると、覚えるのも忘れるのも早い子どもたちはすっかり覚えてしまいます。
むしろ「おじいさんおばあさん」が「なにかを拾う」か「助ける」かする話をオチまで自分で勝手に作るようになりました。
そして飽きた頃に「別の話が知りたい」と言うので、グリム童話(ex.「白雪姫」「シンデレラ」「赤ずきん」)やらアンデルセン(ex.「人魚姫」「親指姫」「マッチ売りの少女」)やらイソップ(ex.「アリとキリギリス」「羊飼いと狼」「北風と太陽」)やらを読み聞かせました。
子ども向けの絵本は、実際の話はともかくとして、それほど怖くないように書き直されています。
だいたい苦労している主人公がくさらずに頑張り続けることで幸せになりますし、たとえ死んでしまっても、そこに教訓が含まれています。イソップなんて教訓しかない。イソップは童話じゃなくて
それらも覚えた子どもたちは「もっと別の話が読みたい」というので、違うテイストとして、アラビアンな話を読むことになりました。
ここまでくると、けっこう長い話も聞けるようになっていたので、絵本でなく、文字だけの本を買うと、シンドバットの有名じゃない冒険譚とか、自分も聞いたこともなかった話が載っていて面白かったです。
中でも驚いたのが、知っていると思っていた「アリババと40人の盗賊」と「アラジンと魔法のランプ」。
「アリババと40人の盗賊」は、山の中で盗賊団が「開けゴマ!」の呪文で開く場所に盗んだ物を隠しているのを見た貧乏な弟のアリババが、そこから金貨を盗み家に持ち帰ります(まずここで盗品をさらっと盗んでいることにびっくり!)。
「俺にも甘い汁を吸わせろ」と金持ちの兄にねだられ隠し場所を教えたところ、兄はうっかり呪文を忘れて秘密の場所の中から出られず困っているところに盗賊団が戻ってきてズタズタに惨殺されます(酷い状態の死体にされるところにもびっくり!)。
兄が殺されたことがバレると血縁者であるアリババにまで報復されてしまうだろうから、兄が殺されたとわからないように、かしこいお手伝い(女奴隷!)と協力し、日数をかけ病死にみせかけて兄の葬式をすませます。
しかし盗賊団は兄の死体が消えたことから兄の仲間をつきとめようと、執拗に捜査し、ついにアリババをつきとめてしまいます。しかしまたもやかしこいお手伝いさんが、うまいことやって盗賊団の手下をすべて殺してしまいます(女一人で手下全員始末するとか!)。
盗賊団のトップは逃げますが、後日、別の機会を作って屋敷に入り込んできます。そこでもまた、かしこいお手伝いさんが盗賊の正体を見抜き、とどめをさすのでした。
!驚きポイント!
盗賊倒してるの、実はお手伝いさんだけ!!
なかなかスリリングな展開だから丁寧に書いたら10万文字ラノベになりそう!
「アラジンと魔法のランプ」は、親戚のふりをした魔法使いが魔法のランプをアラジンにとりにいかせます(常々なんで魔法使い自身が行かないんだろうと思っていたら、アラジンしか魔法のランプを取れないと先読み占いで出ていたから!)。
魔法のランプを取らせたらアラジンを置き去りにしたかったのにできなかったので、イラッとした魔法使いはアラジンをランプごと閉じ込めて去ってしまいます。
困ったアラジンが手をこすると、魔法使いからお守りとして渡されていた魔法の指輪から精が出てきて家に戻してくれ、持って帰ったランプをアラジンのお母さんが磨くとランプの精が出てきて色々してくれます。
ランプの精のおかげて裕福な暮らしになったアラジンは、通りかかったお姫様に一目惚れし、ランプの精の財力でプロポーズを成功させます。
その頃、魔法使いがランプがどうなったか水晶玉みたいなので見て、アラジンの豪華な生活を知り、ランプを横取りしやがって! と憤り、ランプを取り返しに来たついでにお姫様もアラジンの城ごと奪っていきます。取り返そうにもランプはないので指輪の精に頼んだら、お姫様の元まで運ぶことしかできないと言われ、アラジンは運んでもらいます。
魔法使いが出かけている間にお姫様とアラジンは作戦をたて、うまく魔法使いを酔わせた隙にアラジンはランプの精の力でお城とお姫様を取り返します。
(ここまでは自分も知っている部分でした。でも、この魔法使い、また来そうだなって思いますよね?)
実はアラジンはこの時、魔法使いを誰も行けないし逃げられない崖っぷちに置き去りにして自然に死ぬように仕向けています。
しかし、この魔法使いには定期的に連絡をとりあう兄弟(仲間)がいて、連絡がとれないことから仲間は魔法使いを(水晶玉みたいなので)探し、どうしてそうなったかまでをつきとめます。
仲間は、殺された魔法使いの復讐として、アラジンを殺そうと思います。
しかしアラジンはお姫様と結婚しているため、敷地にも簡単にははいりこめません(アラジンと姫が住む城は王城の向かいに建っている)。
魔法使いの仲間は、ちまたで有名な女性を殺してなりすまし(お国柄、ベールや服で目元しか見えない)、お姫様に近づきます。お姫様にそれとなくランプの精の力をなくす方法を提案し、アラジンからそれを聞いたランプの精がアラジンに忠告することで、有名な女性の中身は復讐に燃える魔法使い仲間だと発覚。お姫様にも内緒で魔法使い仲間を罠にかけ、アラジンは魔法使い仲間を殺すのでした。
!驚きポイント!
アラジンを助けている指輪もランプも、魔法使いが渡すかキッカケを与えたものなのに、なんでそんなにアラジンに肩入れしてくれるの?
まぁ最初にアラジンとランプの力を山分けにしようとか、多大な報酬を与えるから取ってきてと頼まなかった魔法使いが悪いのかもしれないけど、魔法使い不憫過ぎる。
で、これまた、すっごくラノベっぽいなと思いました。
というか、このふたつ、今までの昔話と全然違いますよね?
物語としては山あり谷ありで面白いんだけど、悪人とはいえ人がばんばん殺されるし、なにより、親切だったり正直だったり勤勉だったりが美徳じゃないんですよ。
「油断したら殺されるから、利用できる物は利用して、いつでも気を抜かないようにして生き延びろ!」って感じでしょうか。
国民性的にそういう話が普通なのか、たまたまこのふたつがそういう話なのかは、自分が勉強不足で知らないんだけど、できれば「正直者のおじいさんとおばあさんは幸せに暮らしました」っていう話がまかり通る国で暮らしたいなぁと思いました。
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