第51話 上野駅、分岐器との戦い(2)
恋海「フレキシブルレール、届いてる?」
忍 「届いてまーす」
恋海「あとコルク道床もあるのね」
総裁「もう絶版だけど余ってる人からもらってきた」
恋海「じゃあ、ダミー分岐側を作りましょう。まずその前にダミーじゃない分岐と線路の位置決めしちゃいます」
恋海がTOMIXファイントラックレールを手際よく扱う。その間に忍がベースのベニヤ板に図面を接着剤をタップリつけて貼り付けていく。
恋海「なるほど、図面をそのまま模型に使っちゃうのね」
忍 「だって図面から罫描きを写し書きするのってだるいじゃん。そのまま図面をベースに貼って、その上にレール敷いて最後バラストとかで埋めちゃってもいいと思うの」
恋海「なるほど、工数節減ね」
忍 「そゆこと」
恋海「この尾久側の渡り線もダミーね」
忍 「そうです。どうせ使わないし」
恋海「なるほど。じゃ、ダブルクロスとカーブレールとバリアブルレールを組んで」
忍 「釘止めする?」
恋海「私釘どめしない派。接着剤で十分よ」
忍 「なるほど」
恋海「位置はこれでいいわね」
忍 「オッケーです!」
恋海「じゃ。それを基準にどんどんフレキシブルレールを組んでいくわよ」
忍 「うっす! コルク道床もあわせていくね」
恋海「おっけー。端切れ使って分岐のくぼみ埋めるのもやりましょう」
忍 「バラスト節約できていいよね」
恋海「レールカッターある?」
忍 「一般用のワイヤカッターならある」
恋海は忍に渡されたその工具を手に取って見る。
恋海「問題ないわね」
恋海はそれをくるくると拳銃のファストドロウのように回すと、いったん置いてコルク道床とフレキシブルレールを敷き始めた。
忍 「こんな感じかな」
恋海「うん、悪くない」
忍 「コルク道床とかの接着が乾くの待つ間にケータイで施工途中の図を撮影しましょう」
恋海「いい資料になるわね」
そのとき、忍がみんなの視線に気づいた。
総裁「忍ちゃんと恋海、すごくいいペアワークしてたんで、見入っちゃった」
忍 「ごめん。夢中になってて」
香子「ステキです!」
ユリ「私たち置いてけぼりかと思ったけど、工作してるの見るの、退屈しないし私たちビギナーがむりしてやって失敗するよりいいもの」
静 「……手際よくてナイス」
恋海「久しぶりに鉄道模型モジュール作るから、私もつい『世界』に入っちゃった」
香子「鉄道模型ってほんと、いいものなんですね」
忍が笑って言った。
忍 「今頃気づいたの?」
総裁も笑った。
総裁「じゃあ、私たちは図面書きしましょう」
香子「え、でもPCで図面書くなんて」
ユリ「やったことない?」
静 「……私たちは恋海とYouTubeやる関係でAdobeCCの学割持ってるけど」
香子「拙者、そんなの持ってないです!」
総裁「じゃあ、買っちゃいましょう」
香子「え、そんなお金どこに!」
総裁「じゃーん。エビコー総裁から渡された著者さんの魔法のクレカ」
総裁が見せる。
恋海「ええええっ。そんなのクレカの規約的にマズいんじゃない?」
総裁「フィクションの中のカードだもん。そんなのヘーキヘーキ』
恋海「あ、そか」
香子「なんでそこで納得しちゃうんですか!」
総裁「エビコー総裁も散々使って問題ないから私たちもどんどん使いましょう!」
ユリ「その支払って……」
総裁「著者さんがなんとか解決するから問題なし!」
総裁がキリリと言い切る。
香子「だから著者さん夜勤バイトがんばってるんですね!」
忍 「『だから』じゃないよもー。ほんと、そろいもそろってブラック鉄研だなー」
恋海「まあ、でもしかたないっしょ。著者さんの小説ネタになってあげてるんだから、それぐらい」
総裁「デスヨネー」
恋海「もー。これじゃエビコー鉄研と私たち流山鉄研ふたつを著者さんバイト代でまかなうハメになるけど」
総裁「著者さんにはより一層頑張ってもらう。あなた頑張る人わたし使う人」
忍 「またいつのコマーシャルなのよ!」
総裁「これも昭和レトロなのよ」
忍 「ほんと。私たちいったい何歳なんだろう……」
静 「……鉄研の七不思議の一つ」
忍 「んなわけあるかー!」
総裁「まあ、非実在女子高校生☆だもの。私たち。キラッ☆」
香子「もー。自分でそんなこと言っちゃダメだよー」
総裁「もともとこの模型だって著者さん、実際に作って確かめてるんだし」
恋海「じゃ、著者さん、上野駅と新宿駅を一気に一人で作ってるの?」
総裁「Exactly!」
忍 「むちゃするなー、著者さんも」
総裁「それだけ私たち鉄研のみんなを愛してるって事だから」
忍 「てことは、私たちそのうち競泳水着姿とかコスプレすんの? エビコーさんたちみたいに!」
総裁「うっ。その危険は考えてなかった」
恋海「それに私たちに会いにビッグサイト来た皆さん、現実に著者さん見てがっかりしない?」
総裁「それなのよね……。あそこ、私たちの等身大パネル作っておく訳にはいかないから」
忍 「そういう問題じゃないでしょ」
恋海「あいかわらずズレてるなー。もう」
総裁「これでこそ私たち『鉄研でいず!』なのよ」
忍 「そうなの?」
恋海「私聞いてないし!」
香子「拙者もです」
ユリ「ダメだ……ぐだぐだだ……こんなだから全然pvが増えないんだ……」
静 「……マイナー小説ってこういうものだもの。しかたないよ。だからアニメになれないし、絵は著者さんが書くしかないし、ボイスドラマも声優さんと声編集する先生以外は全部著者さんが自前だし」
忍 「なんだか行く先に希望が無いなあ……」
総裁「毎回起死回生って言ってるけど、ぜんぜんうまくいかないよね」
いつのまにかみんなでここまでの「鉄研でいず!」を読んでいる。
香子「こういうメタ過ぎる展開も読者さんを選びすぎてません?」
総裁「選ばれしわが精鋭の読者たちよ!」
ユリ「『風雲たけし城』の谷隊長しないでください!」
香子「ユリさんも昭和レトロ好きなんですね!」
忍 「ああああ、ダメすぎる……」
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