第47話 解決策、それは

「あ、そうか、あれ、できたの見たら、分岐してなかった!」

「自作ダミー分岐か!」

 忍が気づいた。

「そう。あれ、分岐器つけても地下ホームは作らないから分岐動作しても意味ないし、逆に本当の動作する分岐器だと走らせたときのトラブルの種になるので、レールをそれっぽくおいて実際はダミー分岐器にしてた」

「……上野駅でもそれやるの?」

 静が不安がる。

「ダミーとはいえ数多くて大変じゃない?」

「だからこそ威力発揮よ。ダミー分岐ならフレキシブルレールを切りついで作るんだから、工作の手間はかかるけどめちゃ安く上がる」

「でもうまくそう見えるように作れるかなあ』

「それは私達の努力次第だもん。ひとつがんばるしか」

「そうね。でもダミー分岐、作るの面白いかも!」

 忍が鼻をふくらませている。

「あとは頭端部、車止めのとこを作ればすごく『バエる』と思う!」

「でも昔の上野13番にするの?」

「ラーメン屋さんとアヤしいトイレ時代の?」

「アヤしいトイレいわないの!」

 恋海がたしなめる。

「たしかにほんとは上野トーサンバン全盛期にしたかった。ブルトレがバンバン発着してた時代の。でもTNOS、電車でないとあまりうまく使えないみたい」

「たしかに機関車牽引列車、自動運転だとありえない高速で推進運転しちゃうもんね。かといって自動運転で機関車の機回し運転するのは難しいし」

「じゃあ『トランスイート四季島』と宇都宮線のE231やE233ばっかりの今の上野駅?」

「……それ、面白いかなあ」

「でも考えようかなと。四季島専用ホームと四季島専用ラウンジ『プロローグ四季島』とベックスコーヒーの今の姿、模型で再現してる例は多くないし。あと」

 アユム総裁が話を進めていく。

「あと?」

「エビコーさん、たぶんエビコーさんのフラッグシップのオリジナル周遊列車『あまつかぜ』をこのTNOS線で運転すると思う」

「あ、そうか、だからデコーダー加工しなくていいTNOSにしたのか」

「DCCだとデコーダー積むだけで力尽きる人多いもんね」

 みんな納得した。

「ということは『あまつかぜ』が小田急新宿駅を出て、うちの上野駅にくる?」

「たぶん。それなら『四季島』『あまつかぜ』の発着する上野駅になる」

「豪華列車の発着ホームか……」

「エモいかも」

「『あまつかぜ』密かに知られてて人気あるんだよね。私、このまえびっくりした」

「無名かと思ってたのに、知ってる人は知ってるのよね」

「そこにゲストの『トワイライトエクスプレス瑞風』も入れれば」

 アユム総裁がキメる。

「そっか、豪華列車大集結になる! 実際はまずないけど、それが模型ならではでエモい!」

「でしょ。それになら上野駅が相応しいよね」

「なるほどー!」

 一同納得である。

「エビコーさんたちも、まさか私達が上野駅を選ぶとは思ってないと思う!」

「そうね! エビコーさんたち、うまく私たちが成功すれば、ギャフンって言うわね!」

「ほんとにギャフンって言いそうだよね……あの人たち」

「あと、上野駅13・14番の車止めって、トミックスから出てるのにそっくり」

「エンドレールE・LEDタイプ2ね。たしかにあれ日本車両製の車止めっぽい」

 忍が納得する。

「エビコーさんの車止めはどうなるのかな。新宿駅、RAWIEの車止めだけど、あれ市販してたっけ」

「聞いた話だとトミックス安全側線セットにそれっぽいのが添付されてるらしい」

「でもエビコーさん、ただそれポン付けしないと思う」

 アユム総裁が指をふる。

「自作?」

「自動運転の車止めは運転失敗のオーバーランでも壊れない耐久性と、列車を脱線させないで止める性能が必要だもの。きっとなにかやってくるわ」

「でもさー、ここでようやく対決色出てきたねー。この前YouTubeで私達レビューされたけど、どう対決してるかわかんないって言われちゃってた」

「そうよね。でもそれは著者さんが悪い」

「もー。エビコーさんみたいなこと言わないの!」

 みんなそれでふう、と息を吐いた。

「じゃあ、夏までに上野駅を完成させる、ってことで、がんばりましょう!」

 そう言うとアユム総裁は手を差し上げた。するとみんなははじめは気づかなかったが、それに手を合わせて声を揃えた。

「今日も一日!」

「ゼロ災で行こう、ヨシ!!」

 声が五重奏のハーモニーになった。


 夏へ向けて、流山鉄研の戦いが、始まった。

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