第17話 番外(1)

香子「総裁ー、なにやってるんですか?」

総裁「秘密のケータイで著者さん監視してた」

忍 「もうっ、なにエビコー鉄研みたいなことしてんのっ」

総裁「だってそもそもうちの話、成立するかどうか、このままだとやばいと思う。こんなコロナで緊急事態宣言されちゃってるのに鉄研も生徒会もまともに活動できないじゃない」

恋海「そうね。授業もクラス半分ずつの登校だったりするし、昼休みに駄弁りたくても今は黙食しなきゃいけないし」

ユリ「これじゃ高校生のまともな学園生活じゃないよー。私たちの一度しかない青春を返してー!」

静 「……でも、コロナに訴えても返してくれないと思う」

総裁「この鉄研でいずapprove自身も作品として危うい。それで著者の様子監視してたのよ」

恋海「著者さん古い人で私たちと世代違うから、うっかりクラスの人数40人越えとか書きそうよね。今の高校は30人学級なのに」

総裁「少子高齢化すごく進んでるもんね。で、著者のこと調べてて分かったのが、なんと! 私たちのキャラデザインを外注サイトで外注したらしいの」

ユリ「えええっ!」

忍 「キャラデザイン、自分でなんでやらないのよっ!」

総裁「自分でやるとキャラのバリエーションが限られるから、って」

忍 「それならなんで私たちにもっと取材しないのよ。外注費あるなら私たちに投資してくれればよかったのにっ。なのにまた無駄金使って、もー!」

香子「外注費、いくら出したんですか?」

総裁「%%%%円(検閲削除)だって」

恋海「ええーっ、それだと『ぽちスティック』が7本買えちゃうじゃない!」

 『ぽち』とは有名な中古鉄道模型店で、そこではバラ売りの中古鉄道模型車両をスティック状のパッケージに入れて売っているのだ。それを『ぽちスティック』と呼ぶ。車両模型改造のネタに良いし、またそれを買い集めてひと編成作るのを麻雀の役を作るように楽しむ者もいる。

忍 「恋海ちゃんもそういう私たちと同じ模型テツな単位で考えてるのか……メモ」

総裁「はいそこ変なメモ取る仕草しないー」

静 「……で、どんなデザインになったの?」

総裁「ラフが届いてた」

 みんなで総裁のケータイを覗き込む。

ユリ「たしかに可愛いけど……これ、一枚だけ?」

総裁「相手さんがキャラデザインをこう理解したみたいなのよ」

恋海「どういう意味でこうしたのか、設定については聞いたの?」

総裁「『大人すぎず子供過ぎずを狙いました』ってだけ」

恋海「それ、設定じゃないわよね。何やってんの著者さん! これ完全に発注ミスよ! これじゃ相手の人も大変よっ!」

ユリ「そーです!」

総裁「たしかに。はじめ####円のはずだったのに、見積額がその3倍になってた」

恋海「えええっ! それ、きっと相手の人は発注を断るために値上げしたのよ! それまに受けてそのまま払っちゃうって、著者さん、ほんと何やってんのよ!」

総裁「そういうところよく分かってないのが、いかにもうちの著者らしいというか」

ユリ「それだけお金あったら私たち全員でどっか近場にテツ旅行行けちゃうよー」

忍 「まさに無駄使い……っ。ヒドいなーっ」

総裁「とりあえず、これでいくしかなくなっちゃったのね」

ユリ「でもさー、キャラデザよりも私たち流山鉄研のテツ活動、どーすんの? この状態じゃテツ旅行出来ないし、それどころかリアルで集まることも出来ない」

総裁「鉄道模型づくり中心で行くしかないかなと思ってた」

恋海「でもそれは誰でも思いつく、フツーよね」

忍 「こうやってリモートで集まってやるだけじゃ、何の新味もない」

総裁「こういうピンチをチャンスに変えられれば良いんだけど」

忍 「そこは著者さんはむしろチャンスをピンチに変えちゃう人だもん」

恋海「先行き不安ね」

香子「今の時代、みんなそうだと思います」

総裁「だから! 私たちが少しでもその不安を払拭するような活躍をして、流山鉄研ここにあり! とすべきところなんだけど」

恋海「そういえば、なんで私たちなのかな、って気もしてたの。なんでエビコーの海老名に対しての流山なのか」

総裁「それは、どうやら著者さん、この流山で小さなメディアミックスを計画してたらしいわ」

ユリ「ええっ、マジ!?」

総裁「流鉄の電車にヘッドマーク付けて団体臨時列車走らせようとか、集まった人にお弁当だそうとか、さらには私たち流山鉄研の6人をリアル女の子に演じてもらおうとか」

恋海「正気なの? 私たち非実在女子高校生を現実化なんて」

総裁「そこで予算も立てた。いくら著者が負担するかとか、スタッフはどう確保するかとか」

ユリ「でも……」

総裁「話はお流れになった」

恋海「聴くだけ意味ないと思うけど、なんで?」

総裁「著者さんの考え方がこの流山とうまくいかなかったっぽい」

香子「あ……」

ユリ「たしかに薄々感じてました。これ、なんかあるなー、と」

恋海「同じ理想をいだけなきゃ、こういうプロジェクトは失敗するしかないわね。でも、著者さんからもっと、相手に歩み寄るってことは出来なかったの?」

総裁「歩み寄れなかったのよ。どうしても。ポリシーに反するからって」

恋海「もー。こういうのは大人として割り切ってやるのよ!」

総裁「いかにもうちの著者らしい不器用さで」

香子「健さん(高倉健)じゃあるまいし。その割には著者さん顔も身体もイケてないただのデブですよね」

総裁「今更ながら体重減らそうとダイエットアプリつかったりしてるけど91キロから体重が減らないみたい」

ユリ「著者さんのプライバシーなんてないも同然……」

総裁「流山鉄研特務機関のまえにそんなものはナイ」

恋海「だからってそれやっても読者さんも喜ばないわよ。それより、私たち流山鉄研の今後、どうすんの?」

総裁「うぐう。ほんと、なんか考えないと。このコロナの中でリアルにワイワイ集まってテツ旅行とか鉄道模型工作やっても、読者さんはしらけるしかないものね」

香子「どーすんですか! 残り字数ももう足りないですよ!」

総裁「また次の回でやるしかないわね」

恋海「これじゃエビコー鉄研と同じ! 私たちは流山鉄研なのよ!」

忍 「恋海ちゃんの慟哭とともに次回へ続くっ!」

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