第16話 風雲!恋海城!(4)恋海の場合

 ついに『風雲!恋海城』攻略の最後、本丸、恋海の説得の段に入った。

(著者注:というか、『風雲!たけし城』知ってる人いるかなあ。今思うととんでもない番組で良かったんだけど、1986年の番組だもんなあ。ひい、ネタが古すぎるよ……)


「恋海ちゃん、もう時間がないよ」

「そうみたいね」

 恋海はそれでもそっけない。

「もう静ちゃんもユリちゃんも陥落したよー」

「陥落って……」

 静とユリも恋海ちゃんの説得に早速参加している。

「この子たち、思ってたより面白くてステキだよ」

「私もそう思います」

 口々にいう静とユリ。

「それに、高校生コンベンションとか旅行、めちゃ楽しそうだし」

「あのコンベンションをYou Tubeでとりあげるの、鉄道系YouTuberがすこしいるぐらいだもの。恋海ちゃんがやれば、すごくいいコンテンツにできると思う」

「鉄研旅行もきっと良いコンテンツになる!」

「あら、You Tubeのネタにするために、あなたたち鉄研作ったの?」

 恋海はそう皮肉る。

「それもそうだけど」

 そこで私は言った。

「私はそれより、恋海ちゃんと一緒に旅や模型がしたい。鉄研がだめだったとしても」

 彼女はハッとした。

「私は、あなたと友だちになりたいの」

 彼女はちょっと戸惑ったあと、微笑んだ。

「ド直球で来たわね」

「ええ。あなたには直球で行きたい。断られたとしても、そうアプローチしたい」

 私は言った。

「それぐらい、あなたが本当に好きなんだもの」

 彼女は、すこし間をおいた。


「そこまで、私に好きって言ってくれたひと、久しぶり」

「そうなのかも。でも、あなたにも、高校生活を楽しむ権利も資格もあること、思い出してほしい。どんな事情があっても。そもそも事情のない子なんて基本いないんだから」

 彼女は考えている。

「あなたとはいろいろ意見が違うところもある。でも、同じくテツと高校生活を楽しむ上では、それは些細なこと。ものごとの大きさを判断できずに、ただいちいちこだわったら、ここのつまんない大人たちと同じになってしまう。私は地域おこしとか考えてるわけじゃない。ただ、私はそういうつまんない恥ずかしい大人になるのには精一杯抵抗したい。でなきゃ、私が私じゃないもの。そんなつまんない争いに迎合してここで暮らしていくなんて、まっぴら」

 彼女はなおも聞いている。

「だから、このみんなに、どんな事情があっても、一緒に受け止めたい。私はそういう仲間になりたい」

 私はさらに熱を込めた。

「そういう仲間と高校時代が過ごせたなら、それはきっと人生の大きな宝物で有り続けると思う。まして自分たちでちょっと工夫すれば、それは面白くできるものなんだもの。もし大学に行ったとしても、それでも高校時代は高校時代で特別だもの」

 恋海ちゃんは、突然笑い出した。

「え、どうしたの? 私、変かなあ」

「いや、そうじゃなくて」

 彼女は笑い終えて、声を整えて言った。

「昔、そういうこと言ってくれた先生がいたなあ、と思って。高校進学にぜんぜんやる気出さなかった私に、中学の先生がそう言ってくれた。私、その頃まだそれ、よく理解できてなかった」

 うなずく彼女。

「うん、今なら理解できる。だってあなたたち鉄研一味、ほんとにこの学校での生活を楽しくしようとしてるもの」

 彼女は微笑んだ。

「そこまで考えてるんだから、きっと大丈夫ね」

「え」

「鉄研、入部するわ。私も仲間に入れて」

「ほんとう?」


「私も、あなた達見てて、高校生したくなったわ」


 私達は歓声を上げた。


「じゃ、職員室に部の昇格の書類持っていきましょう!」

「恋海ちゃん、さっそくだけど入部届けにハンコ押して」

「え、押すけど、みんなで?」

「ええ! もちろん!」

 みんな、笑った。

「だって、私たち流山鉄研の、これがホントのスタートなんだもの!!」


 ついに私たち流山鉄研が、本当に始動した。

 どんな冒険や苦難が待っているか、それはまだわからない。

 でも、確実なことが一つある。

 それは、このみんなでなら、何も怖くないし、きっと乗り越えられるということ。

 そして、それもきっと楽しいことだということ。


 ゴールデンウイーク前、桜がすっかり散って新緑になったその日、私たち流山鉄研は、こうして部に昇格したのだった。



恋海「ええと、ところで、ここまで真面目に青春ストーリーになっちゃってるのは、そもそも大丈夫なの?」

総裁「いやー、著者さん、ぎりぎりでこう書くしかなくて、いつものメタ展開できなかったっぽい」

忍 「しなくていいよー。あれ。ヒンシュクもんだもん」

香子「拙者も正直、そう思います」

静 「だいいち、エビコーさんのほうではメタ展開しまくったあげく、向こうの総裁が大気圏突入してましたよ!」

ユリ「うっ、さっぱり話がわかんない……。『鉄研でいず!』っていつもそうなの?」

総裁「きっと大丈夫! うちをエビコーみたいにはしません!」

忍 「ほんとかなー」

総裁「えっ……ちょっと不安になってきた」

忍 「もー。なにここで弱気になってるの。また『みさいる』するよ!」

総裁「それはヤメて!」

恋海「という具合にグダグダで字数制限で終わるのは同じなのね」

総裁「あ、そうなっちゃった……」

香子「あーあ。読者の皆さん、呆れてますよ」

ユリ「うわあ、ほんとだ!」

総裁「ともあれ、次回から鉄研の活躍篇! ようやくテツ活動しますので、よろしく!!」

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