第9話 同居生活(やっと)開始か!?

休日である今日、俺と先輩はアパートを後にし、俺の家である上梨家かみなしけへ向かっていた。理由はもちろん、母たちを交え先輩が同居生活できるかどうかを話し合うためである。


前は勝手に追い出されて、話し合いもできなかったのに比べると少し、前進したと思えた。


「先輩、今日は部活ないんですか?」


「今日は、顧問がいないからみんな自主練よ。」


「そうなんですか。」


「そんな有馬くんはどうなの?」


「どうとは?」


「運動、やってたんでしょ。あんなに強かったんだから」


「そうですね、中学までは空手をやってました。」


「なんでやめちゃったの?」


「・・・いて言うなら、空手をやる理由がなくなったからでしょうか。」


「理由?それてどんな・・・」


「着きましたよ、先輩。」


アパートとは距離が近いため、会話をしているうちに上梨家へ着いたようだ。


「・・・・・」


「どうかしましたか?」


「・・・・なんでもないわ。」


「そうですか、今鍵開けますね。」


昨日、一度家に帰ったのになんだか久しぶりに家に帰ってきた気分だった。


「母さーん、ただいまー」


「お、おじゃましmっ!?」


「おかえりなさい、有馬。それに玲ちゃんもいらっしゃい。」


先輩は玄関に母さんがいるとは思わなかったのかとても驚いた表情をしていた。


連絡してたの?という顔でこちらを見てきたのでいつもこんな感じですとだけ答えておいた。


「二人とも上がって、奥で澪さんが待ってるわ。」


俺と先輩は母さんにうながされ、奥に向かうと椅子に座っていた澪さんが目に入った。


「玲、久しぶりね。有馬くんも急なお願いを聞いてくれてありがとうございます。」


「いえ、全然いいですよ、あれ・・・くらい・・・」


「久しぶり、お母さん。・・・いきなりだけどなんで有馬くんと同居生活しなくちゃダメなのか理由を聞かせてもらってもいい?」


「・・・分かったわ」


それからは、前に俺に話してくれたことを澪さんは先輩にも同じように語り始めた。


「・・・これが玲に同居生活してほしい理由よ。」


「・・・そう・・・だったのね。」


話し終えた空間は空気が重く感じとれた。


「・・・ごめんね、玲。理由も言わずに突然・・・」


「ううん、お母さん。多分、なら理由を言われても考えることもせずに否定していたと思うわ。それに、お母さんがこんなにも私のことでそんなに悩んで、考えてくれてたなんて思わなくて・・・心配かけちゃってごめんなさい。」


「っ・・・!?いいのよ、玲。だって私はあなたのお母さんなんだから・・・心配するのは当然よ。」


「・・・お母さん・・・」


先輩は澪さんに抱きつき涙を流しながら、ありがとうと何度も澪さんに感謝を伝えていた。・・・なぜか俺の隣で母さんが一緒になって号泣していたことは内緒。そしてどうやら話はまとまったようだった。


「・・・有馬くん、玲のこと任せてもいいですか?」


「えぇ、お任せください。」


「ごめんね、有馬くん。私のせいで迷惑ばかり・・・」


「いいですよ、先輩。迷惑なんてこれっぽっちも思ってませんから。それに学校で一番有名な先輩と同居生活するなんて嬉しいですよ。」


「ふふ、冗談がうまいのね・・・・・ありがとう、有馬くん。」


先輩は涙は流れていたが笑顔でお礼を告げてきた。


感傷に浸っていると隣に座っている母さんから一枚の紙を渡された。


「ありま~、これ~~あげる~・・・ヒクッ・・・ヒクッ・・・」


「何、この紙?・・・てかいつまで泣いてんの、母さん。」


紙を見てみるとそこにはでかでかと大きいタイトルと文章がズラッと書かれていた。


タイトルには<”玲ちゃんの男嫌いを克服するぞ~”プランA>と書かれていた。


「・・・へ?ナニコレ・・・」






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