第7話 先輩のために
(あ、あいつなんで!?)
「お前、何してんだ。」
「今取り込み中なんだ。邪魔しないでくれねーか・・・あー、お前コイツの彼氏とか?」
「違う」
「なんだ。彼氏なら彼女の
男はクソみたいな発言したと思ったら、いきなり私を離し
「グハッ!!」
鈍い音とともに唸り声が聞こえた。男の拳が届く前に上梨有馬の足が男の腹部を蹴り上げていた。男はお腹を
「・・・っ!?」
「て、テメー何しやがる!!」
「何ってそっちから殴りかかってきたんだろ。」
「女の前だからっていい気になりやがって!!」
男はまたしても上梨有馬に殴りかかろうとした。すると上梨有馬は男の手首を後ろにもっていき、後ろ首を掴み地面に押さえつけ、自分の体重を男に乗せ、男の自由を奪った。
「っ・・!?イッテ!!」
「先輩、大丈夫ですか?」
「え、えぇ大丈夫よ。・・・あなた、そんなに強かったのね。・・・それになんで来たの?」
「・・・それよりも先輩、服を直してください。・・・あと、警察呼びましょう」
「っ・・・!?わかってるわよ!!」
私は目の前で起こったことに頭が追い付かず、こういう時の対処すらままならなかった。
それからは警察が来て、男は捕らえられた。私と上梨有馬は少し事情聴取を受けて解放された。
そこからはまた二人の時間が流れた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
二人とも話したいことがいっぱいあるのに少し気まずいのか話せずにいた。
「・・・先輩」
「ひゃ、ひゃい!!」
先に口を開いたのは上梨有馬の方だった。私はびっくりしすぎて先輩なのにも関わらず敬語でしかも変な声が出てしまった。
「っ・・・!?コホンっ。で、何かしら?」
「先輩、お互いいろんなことを聞きたいとは思いますけど今日はもう遅いから別の日でもいいですか?」
「そうね、わかったわ。」
私はすぐに冷静さを取り戻し答えた。
「先輩、今日は実家のほうに戻った方がいいのでは?」
「えぇ、そうさせてもらうわ。」
「わかりました。それじゃあまた休みの日に。」
「・・・・・・・」
「・・・・先輩?」
先輩はチラチラと俺の顔を見て、何故かもじもじとし、耳まで真っ赤になっていた。
「あ、あの有馬くん・・・・きょ、今日はありがとぅ。それと、ごめんなさい」
「・・・・・・」
俺は先輩の言葉を意外に思いポカンとしてしまった。
「ちょ、ちょっと!?何か言ってよ!?」
「い、いやまさか先輩からお礼と謝罪を受けるなんて思っても見なくって」
「っ・・・!?あ、あなたは私のことをなんだと思っているのよ!!」
「男嫌いの猫かぶりの先輩?」
「ぐぬぬっ・・・あってるせいで何も言い返せない」
初めて会ったときは先輩のペースに飲み込まれていたけど、今は立場がガラッと真逆だった。
「ぷっ・・・ははは!冗談ですよ、先輩。」
「全然冗談に聞こえなかったけど・・・まぁいいや、それじゃあね」
ちょっと怒った先輩はスタスタと歩いて行ってしまった。俺はそのあとを追いかけ先輩の隣に並んだ。
「なんでついてくるのよ!」
「先輩、今しがた襲われたばかりじゃないですか。家まで送りますよ。」
「いらないわ。・・・それに男と一緒にいすぎて少し気分が悪いの」
「分かりました。それなら澪さんのお迎えが来るまで待ちます。」
「はぁー、分かったわ。」
先輩はスマホを取り出し澪さんにお迎えしてくれるように頼んでいた。メールをし終えた先輩は俺にお願いをしてきた。
「・・・私から少し離れてくれると助かるのだけど」
「どれくらい離れればいいですか?」
「・・・うーんと、50メートルくらい?」
「それじゃあ先輩が見えなくなりますよ!?」
「冗談よ。3メートルくらいでいいわよ。」
「まぁ、それなら・・・」
さっきのお返しとばかりに冗談を言ってくる先輩に俺は先輩が本当に気分が悪いのか疑問になってきてしまった。
ブゥーブゥーブゥー。二人のポケットに入っているスマホからメールが届いた。
俺はスマホを確認すると同時に隣から悲鳴の声が上がった。驚いた俺は咄嗟に先輩の方に振り向いたら先輩はこちらを睨んでいた。
「ど、どうしたんですか、先輩!?・・・へ?」
先輩は俺にスマホの内容を見せつけてきた。そこに書かれていたのは澪さんからのメッセージだった。
「えーっと。・・・
玲へ
今、有馬くんと一緒でしょ?それなら今日はもう遅いから二人でアパートのほうに帰りなさい。あとお礼もしっかりとして、話し合って、それでもダメならまた連絡をして来て。
お母さんより
・・・マ、マジか。」
俺のスマホのほうも確認してみるとお母さんから「good luck」とだけ送られてきていた。
「マジか、母親よ。」
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