第5話 母親として・・・

私は今日、早く帰れることになった。なので私は玲たちといつもより長い時間一緒に過ごせることに胸を躍らせながら帰っていた。


「今日は早く帰れるし玲の好きなものを作ってあげようかしら。ふふっ」


家につき中へ入ると中は暗く、そして静かだった。


「ただいまー。??」


私は疑問に思いながらもリビングに向かった。


「玲ー、お父さーん。・・・寝てるのかしら。」


呼んでも返事が返ってこなかったので二人仲良く寝ているものだと思った。


リビングに着くと私は衝撃的な光景を目にした。それは泣くことをこらえている玲を上から押さえつけているお父さんの姿だった。


「っ!!なにしてるの!?お父さん!?」


「・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


お父さんは私に一切興味を示さずただ娘の玲を押さえつけながら見つめながら息を荒げているだけだった。


玲は私が帰ってきたのに気づきこちらに顔を向けてきた。さっきまでは角度的に見えなかったが玲の頬は赤く腫れあがっていた。それを見た瞬間、動揺と激昂の感情が同時に高まった。


玲が目をそらしたのを見てお父さんは拳を振り上げ玲の頬にねらいをさだめた。


それを見た瞬間、私の体は前へ行き、そして男の顔面に蹴りをらわせていた。


「お前!!玲になにするのよ!!・・・大丈夫、玲!?」


私は叫びながら玲を抱きかかえた。すると・・・・


「お、お母さん??・・・うっ、うっうわぁぁぁぁぁぁぁん!!」


玲は私の胸に顔を埋め、顔を涙と鼻水で濡らし大泣きした。


「ごめんね、玲。助けるのが遅くなって・・・ごめんね」


男は動く気配がなかった。なので私はいったん家から出て、警察を呼び、念のため救急車も呼んだ。


念のためと医師に言われ病院で入院することになった玲に異変が起こった。玲は病院の男の先生や男の看護師が近づくと体が拒否反応を起こし、動悸どうき眩暈めまいがおき、ひどいときは吐いてしまうこともあった。


それからは少しずつリハビリを行い男性と話しても少しなら大丈夫なくらいまで回復した。しかし、完全に男性に対してトラウマになってしまった心はそう簡単には治らなかった。


さらには玲は私に対して異様になつくようになった。・・・・いや、正確には私の言うことを決してうたがわず、疑問を持つことをしなくなった。つまり、私の言うことをすべて素直に聞くようになったのだ。


これでは私がいなくなったとき、玲は一人で生きていくことが難しくなってしまうかもしれない。男嫌いになってしまったせいで結婚し、幸せに暮らしていくことができないかもしれない。そう考えた私は同じ学校の後輩である上梨有馬くんに玲の男嫌いを直してもらいたいと考えた。


・・・・・・・これが浅葉玲あさばれいが男嫌いになった理由であった・・・・・・・


______________________________________


すべてを話し終えた澪さんは苦虫をつぶしたような表情をしていた。


「これが玲が男嫌いになってしまった理由よ、有馬くん。」


「・・・・・・・・・・・・」


澪さんから先輩の過去を聞いた俺は席を立った。そして玄関に置いてある荷物を持ち家を飛び出した。


「有馬くん!どこに!?」


追いかけようとした澪さんに俺の母さんは澪さんの肩を軽く叩き頷いた。


「大丈夫ですよ。澪さん。」


「し、しかし、有馬くん家を飛び出してっ!?」


「確かに有馬は面倒なことが嫌いです。・・・でも澪さんの話を聞いて黙っていられるほど男がすたっているわけでもありません。・・・それにちゃんと荷物も持っていきましたから。」


「っ・・!!す、すみません。動揺してしまって、気づきませんでした・・・」


「安心してください、澪さん。有馬なら玲ちゃんのトラウマを消すことができます。」


俺の母は自信たっぷりに胸を張って澪さんに宣言した。












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