第13話 君が望むなら、月まで連れて行こう!
GM:では、ラグとツヴァイの二人が、甲板で事の次第を見守っていた、その時……。
ツヴァイ:ラッパかな?
ラグ:ラッパじゃないよ、ピエロだよ。きっと。
GM:折り重なる雲の影から、荒々しい戦闘ラッパの音が鳴り響きます!
ラグ:ラッパでピエロだった。
ツヴァイ:戦闘ラッパ?
GM:なんか、パラリラパラリラ~♪ みたいなの。
ラグ:珍走団やんけ、まあ、ラッパのほうを向くわね。
ルシェド:そっすね、GMの描写を待ってみよう。
GM/ルード:では、続いてルード君から報告が来ます「北! ケツにつかれた!」
ツヴァイ:おっとと。
ラグ:後ろを取られるのはまずいわね。
GM:そして一瞬、ルード君が、息を飲む気配がします。
ツヴァイ:まさか。
GM/ルード:「砲門が開いてる! 回避行動を取るぞ!」
ツヴァイ:その、まさかだったか! まずい!
敵飛行船『
ホーンも高らかに、ムーンライトマイル号に射撃を繰り返しながら接近してきた。
本格的な交戦状態に至るには、まだ距離が空いていたがー……。
GM:と、いう描写から始まります。ここからが、真のクライマックスになりますが、準備はいい?
一同:さあ来い!
GM:では、シーンの説明から。現在、
ツヴァイ:でも、うちの船のほうが速いんだよね?
GM:万全なら。
ツヴァイ:というと?
GM/ルード:「あんたらが甲板にいるから、手荒な操縦ができねーんだ!」
ツヴァイ:ルークくんが言うなら納得するしかない。
GM/ルード:「全速全身でなけりゃ、さすがに追いつかれる。どうするか決めてくれ!」
ツヴァイ:ふーむ、これはつまり……。
ラグ:ここで、連中と決着ですかね?
GM:そうです、その直接対決の前に何をするか? ですね。
ルシェド:考える時間はあるんすね。
ラグ:そのようね。
GM:まずは、この場面でとれる行動を二つ公開します。
①ミエルを救出する。
②砲撃で応戦し①のための時間を稼ぐ。
GM:このようになっております。これらの行動の解決後、ルード君が船体をぐいーーーっと水平転回して、相手の船と対峙します。
ラグ:そこで決戦という流れなのね。
ルシェド:だーっ!
ラグ:わ、驚いた。
ルシェド:この時が来た、来てしまった!
ラグ:ご愁傷様、戦闘より大変よね、ある意味。
ツヴァイ:ルシェドが①に行くことは確定みたいなもんだからねぇ。
GM:で、ここの進行なんですが……どうしましょうね?
ツヴァイ:はい?
GM:いやね、ここターン制で進めようかどうか、迷っててね。
ツヴァイ:ふむふむ。
GM:でも、ぶっちゃけ、ルシェドさん、このシーンの主役でしょ。
ツヴァイ&ラグ:異論無し。
ルシェド:……無いですね、もう。
GM:だから、参加者の同意を得た上で、シーンの進行をルシェドさんのRPに一任したいなあって。
ルシェド:……。
GM:GM的には、彼がどうするか見届けたいんですが、みなさんは?
ルシェド:自分は、ここ、シーンをもらいたいです。
ツヴァイ:喜んでゆずるよ、キングだってそうする。
ラグ:同じく。
GM:ありがとうございます。じゃあ、敵の船からの逃走は、ターン処理ではなく背景での演出にしますね。シーン中のプレイヤー同士の相談は自由に行ってください。
本来のシナリオチャートでは、ここから各人の手番を消費して3~4ターン程で①&②を解決していく予定だった。
しかし、卓内での話し合いの結果、シーンをルシェドとミエルのRPのみで展開し、その他はイベント的に解決することになった。
合意確認ののち、しばしセッションを小休止。
休憩明けの点呼後、さっそくルシェドのプレイヤーが宣言する。
ルシェド:ミエルの救出RPをします!
ラグ:YES!
GM:おっけー。
ルシェド:休憩したら元気でてきた。
GM:この勢いで始めちゃいますか、他のみなさんは?
ツヴァイ:問題なしよ。
ラグ:あ、じゃあ質問あります。
GM:はい、ラグさん。
ラグ:ここ、背景では敵に砲撃されてるのよね?で、RP上ではこちらからの《砲撃》で、迎撃してる風にならない?
GM:一方そのころ……的な感じ?
ラグ:そそ、ルシェドに甲板を任せて、ツヴァイと時間稼ぎのために《砲撃》してたい。ただ逃げ回るのは、シャクなの(笑)。
ツヴァイ:だねえ、私とラグさんが時間を稼いだ演出をさせてもらえると非常においしいよね。
GM:了解です。じゃあ、演出内容は二人にお任せしますね。
ツヴァイ&ラグ:頑張ってねー!
ルシェド:了解!
ツヴァイ:じゃあ、『月のゆりかご』とぐるぐる巻きのルシェドを見て「はーっ……」てため息をつく。
ラグ:そんなに巻いてないでしょ、え、まさか。
ルシェド:その、”まさか”のほうのイメージでお願いします。ここは、あえて。
ツヴァイ:で、ルードに伝令を「煙玉を主砲に装填しろ、俺が撃つ」と。
GM/ルード:「頼む! 相手の誤差修正がもう終わる、じきに直撃が来るぞ!」っと、煙玉ね、スモークボムと同じ効果の砲弾ですね。
ツヴァイ:で「プリンス……」と、ちょっと怖い顔で、珍しく(笑)
ルシェド:「ん、なな、なんだよ! 俺、真剣にやってんだよ!」って。
ツヴァイ:「そんなにデッキが好きか?
ルシェド:息を飲みます、怒ってないんだろうけど、珍しい感じに驚くかも。
ツヴァイ:「
ルシェド:え、そうでしたっけ。
ラグ:今作ったんでしょ、団長特権で。
ツヴァイ:「
GM:ひゅー! 伊達男だ! 伊達男が出たぞ!
ラグ:であえー!
ツヴァイ:「構わんだろう? ナイト殿」
ラグ:「おおせのままに」
ツヴァイ:じゃあコートの裾をひるがえしながら、団長専用の主砲座に行きます。
ラグ:私も、砲弾を撃ってきた船の方を不敵に笑います。乱れた髪を整えてから「ルシェドの背中に発破をかけたいけど、いいかな」
ルシェド:え、いちいち聞かなくてもいいですよ、やってやって。
ラグ:最後のはね、PCの台詞なの。「プリンス殿の許可をいただけますか? ってこと。姫の御前よ、ナイトらしくね」。
ルシェド:あー、はい。じゃあ、「お、思いっきりお願いします!」
ラグ:”おねがー…”のあたりで、ばちんっ!
ルシェド:「おねっ、ごへぇ!!」……何やってんだこれ!
一同:(笑)
GM:アルテミシア嬢、どうしようか?
ルシェド:迎撃のほうに行ってください。ルシェド一人で大丈夫です。
GM:OK、じゃあ軽く仮面を上げて、目礼して去るね。
ルシェド:「次は、ミエルと一緒に劇場に行きます!」って、声かけますね。
GM:さーて、みんないなくなってしまいましたねー。
ツヴァイ&ラグ:(いるけどね)
GM:ルシェドさん。
ルシェド:はい。
GM:いまやデッキの上には……ルシェドさんと『月のゆりかご』があるのみです。準備はいいですか?
ルシェド:やりますよ、俺……『義賊』ですからね!
ツヴァイとラグは、対空迎撃に向かい、同行したアルテミシアもそれに続いた。
長く続いてきた「私を月につれてって」のセッションは、ここに最大の山場を迎える。
GM:主砲発射を皮切りに、使用可能な砲門から轟音とともに砲弾が……。
ツヴァイ&ラグ&アルテミシア:てぇーーーーーっ! どっかーん!!
GM:放たれました!では、しばし安全を確保したものとします。
ツヴァイ:スモークボム、ルールブック準拠なら3ターン有効だけど。
GM:もっと長いことにするよ。砲弾だしね。
ラグ:地獄に仏、夜空にGM。
ツヴァイ:じゃあね、特製の砲弾ですし「雲を生み出すかのごとく」って演出で。
ラグ:「月に群雲」ね、粋じゃないの。
ツヴァイ:「ふっ……伊達!」
ラグ:粋(息)が続かない。
GM/アルテミシア:「おあとがよろしいようで……」
ツヴァイ:「道は作ったし、こっそりと一服……」と思ったけど、とっておきのラム酒は景気づけの時に割ってしまったので……こっそり、しょぼくれてます。
ラグ:「船に飲ませちゃったわね」って、あっかんべーしちゃう。
一同:(笑)
先代から受け継いだ特殊砲弾、その一つが炸裂し、瞬く間に
……そして、甲板には『月のゆりかご』とルシェドがたたずむのみとなった。
GM:スモークが月光をも遮り、辺りの光量は急激に低下します。デッキ上には『月のゆりかご』のみが、スポットライトのように青白く光っています。
ルシェド:やる、とは言ったものの……GM、ルシェドはどうやって進めたら?
GM:基本はミエルの質疑と、ルシェドの応答です。
ルシェド:ふむ?
GM:会話の流れの中の、ポイントになる箇所でミエルから核心的な質問をします。それはOK?
ルシェド:ん、わかります。
GM:……それに対して、適切に返答してください。
ルシェド:なんとファジーな。
GM:まあねえ。でも、ルシェドさんの気持ちは固まっているわけですよね。
ルシェド:ですね、それはもう、例の叫んだシーンから。
GM:なので、「気持ちの見せ方」を選んでもらうことになるかと……できるだけ明確な返答ができるように、GMも工夫しますので。よしなに。
ルシェド:了解す! じゃあ、まずは……近づいて呼びかけてみましょう。
ルシェドは『月のゆりかご』に改めて対峙、GMの描写によって、天蓋と寝台部分にある透明な壁は進入を阻む結界であることが判明した。
続いて彼は音声までは遮られないことを期待し、『月のゆりかご』に呼びかける。
果たして声が届いたか、シーツの塊が翻り小さな影が姿を現したがー……。
GM:シーツの白い色とは対照的な、泥のような肌、角が生えた姿。しかしあなたには、この目の前の存在がミエルであることがわかります。と、同時に……まずは小手調べの質問からいきますね。
ルシェド:どうぞ。
GM:彼女に『この迷宮で与えられた役柄は何か?』ルシェドさん、わかりますね?
ルシェド:……湖の魔女……だけど。
GM:ふむ。
ルシェド:さすがにそれは口には出せないな。
GM:了解です。まあ、こういう感じでやっていきますね。……で、ミエルから、か細い声が漏れ出します。
GM/ミエル:「やっぱり、王子さまなんて、迎えに来ないのね……」と、うつろな瞳があなたを見据えます。その目には、失望と諦めが浮かんでいます。
ルシェド:「そんなわけあるか!」って叫びます。
GM/ミエル:ややあって、ゆっくりと上体を起こしたミエルでしたが……。
ルシェド:「ミエル!」
GM/ミエル:直後脱力し、彼女は崩れ落ちます、汚泥が地面に広がるように。そして、あなたに問いかけます。『私の身体を蝕むモノが何か? あの本を読んだあなたにはわかるでしょう?』
ルシェド:頭ではわかってるんだけども……ちょっと、答え方を考えますね。
GM:了解です。
GM:そろそろいい?
ルシェド:ん、決めました。
GM:じゃあ、こちらから「ねえ、どうして、何も返事してくれないの?」と。
ルシェド:ふーっ。ここは、引用で「”彼女の乗っている小船のようなものは三日月をしたベッドで、しかも少女は穢れに染まっていたからです”」って。
GM:ふむふむ。
ルシェド:「へへ、どうだ? 小説とか、苦手だけど、ちゃんと読んだんだぜ」って、得意げ。
GM:一瞬、うつろだったミエルの目が生気を取り戻します。
ルシェド:「やっ……」あっぶね、まだ言わないですよ、”やったか”なんて!
GM/ミエル:「私、諦めるなって聞こえたから、心から祈ったわ『私を月につれていって』って」
ルシェド:「それで、俺を待っててくれたんだろ、だから、迎えに来たんだ」
GM:膝立ちになったミエルの小さな手が、結界の境界面にぺたりと張り付きます。
ルシェド:……自分の手をそこに重ねます。
GM/ミエル:「迎えに来たって言ったの? 今……」
ルシェド:「あったりまえだろ」
GM:"ミエルを迎えに来た"……そういうことですよね?
ルシェド:え、そうですよ。当然……。
GM:では、『月のゆりかご』に変化が起こります!
ルシェド:!?
青白く光る廃材の塊だった『月のゆりかご』は、突如として金色の光を纏った。
三日月形の船体は見る間に美しい装飾に磨かれ、天蓋から垂れた飾り紐には星辰を模した水晶が輝く。
物語で語られた『黄金の月のゆりかご』がそこに姿を現した。
ルシェド:え、これは……状況は好転したのか?……わからねえ。
GM:ミエルの描写、しますか?
ルシェド:お、お願いします。
GM:彼女の顔は今や老人のような白髪に覆われていますが、その隙間から陶然とした瞳が爛々と、あなたを見ています。何かを期待しているような眼差しです。
ルシェド:ここはあえて踏み込むか……?
GM:どうしますか?
ルシェド:……機を伺います。
GM/ミエル:「魔剣の力が……私の願いを聞いて物語の迷宮を作り出したの……だからこの迷宮は……私の望んだ、心から望んだ世界なの……」
ルシェド:続けてください。
GM/ミエル:「見てよ……魔女そのものだわ。痛くて、苦しくて、お城から逃げて、テンデからも逃げて、逃げ込んだ先は大好きな物語だったのに! ここにも、楽しいことは無かった! 私には、キングが言うような自由も、ラグお姉さまが言うような自由も手に入らない!」と叫んだ彼女は一息置きますが?
ルシェド:まだ、お願いします!
GM:では、次に変化が現れるのは、あなたのほうです! ルシェドさんの身体が金色の光りに染まり、別の姿に変化します!
――銀の髪
――湖のような青い瞳
――すらりとした長身
――口元を覆うターバン
GM:あなたの姿は、シヴァールに変化しました! そして、胸元にしまっていたハート型の砂糖菓子は、鋭利な三日月を思わせる曲剣へと変化します!
ルシェド:「これも、迷宮の力がそうさせているのか!」と、叫ぶ。
GM/ミエル:「……ああ、来てくれたのね、シヴァール……」と、再びうつろな瞳が、シヴァールと化したあなたを見つめ、かすれた声が問います!
『私を迎えにきた
ルシェド:ここで来たか……! GM! ”RPで”ということでしたよね? シヴァールの物語の4番目を読み上げます!
4/5
……しかし、気高いシヴァ―ルの愛をもってしても、穢れきり、泥のようになってしまった彼女を救うことは不可能でした。
シヴァ―ルは、彼女の魂を魂を月に帰し、また輪廻の中で再開することを誓います。
「君が望むなら、月まで連れて行こう」
魔女は、シヴァ―ルの剣を受け入れ、輪廻へと旅立ったのでした。
GM/ミエル:「そうよシヴァール! その剣で穢れた私を……輪廻に送り出して!」
ルシェド:ここだ!割り込んで発言します!
GM:どうぞ!
ルシェド:「ここが魔剣が作り出した物語だったとしても、お前は魔女ってワケでもないし。俺だって、シヴァ―ルじゃないッ!」
GM:そのまま続けてください!
ルシェド:「色々な人の助けでここまできた、
GM:……。
ルシェド:「でも、物語の主人公みたいに腕っぷしがあるわけでも、すごい魔法が使えるわけじゃない。シヴァールじゃないんだ、お前を迎えにきたのは、俺だ! だから、
GM:……では。
ルシェド:どうだ……。どうか!
GM:黄金色の光りが少し弱まった気がしますね。そして、手の中の重みがふっと失われます。
ルシェド:ちらっと、掌中を見るよ……。
GM:あなたの手にあるのは、三日月の曲剣ではありません。小さな、ハートの形の砂糖菓子です。
ルシェド:ぃよしッ!
GM:では、なおも問います!「教えてよ! 私を迎えに『月のゆりかご』を訪れた人!」
GM/ミエル:『あなたは、誰なの!?』
ルシェド:「俺はルシェドだ、ミエル」
ルシェド:「俺はビショップでもシヴァールでもない、義賊のルシェドなんだ」
GM:では……弱まった黄金色の光は、『月のゆりかご』から新たに染み出した青白い輝きに塗りつぶされていきます。
ルシェド:とうとう、名乗ったな、俺……。
GM:『月のゆりかご』は再び、ガラクタを圧し固めた、無骨な姿に変化しました。鈍く光る金属面には、元の姿に戻ったあなたが映っています。
ルシェド:ち、ちょっと、深呼吸しますよ。
GM:私もめっちゃ緊張してますね。
ルシェド:これ、上手く行ってるのかな。ぶっちゃけで聞きたいんですが。
GM:折り返し地点ですね、ある意味。
ルシェド:マジで?
GM:ここまではミエルの問いに”守り”の回答を行ってきました。しかし、ここからはあなたのターンです。
ルシェド:んじゃ、次はルシェドが質問する側?
GM:ミエルが問い、ルシェドが答える、そこは変わらないです。
ルシェド:ん、わかりました。
GM:ミエルと魔剣が生み出した迷宮、その世界を支配する物語に呑み込まれず、あなたは自分自身を保っています。
ルシェド:こんな時、キングならなんていうかな……いや、やっぱいいや。
GM:ここからは”攻め”の回答です! 「悲劇の物語に囚われたミエルを救い出す」・・・…それが、あなたの目的です! 準備はいいかー!
ルシェド:おっしゃー! 来い!
GM:と、いうわけで……ルシェドさんと『月のゆりかご』は元の姿に戻りました。しかし。
ルシェド:しかし?
GM:一方で、ミエルは明らかに戸惑っています。アドリブに対応できない役者のように、何か言おうとしては言葉にならず、それを繰り返した末に……どうします?ルシェドさん、割り込みますか?
ルシェド:うーん、じゃあ、ちょっとだけ、アクションしたい。
GM:ん、どうぞ。
ルシェド:少し笑ってやろう「落ち着けって、屋台でもそんな顔してたな、そういえば」って、例の型抜きを、指先でクルクルと。
GM:(おっ)では、ミエルは意を決して、言葉を紡ぎますね。
ルシェド:お願いします!
GM/ミエル:「……それ、私が大事にしてたもの……宝物……あなたと遊んだ……」
ルシェド:「落としてたからな。届けに来たんだよ」
GM:では、ここで問いますね。
GM/ミエル:『わたしは、それをどうやって手にいれたの……?』
ルシェド:「屋台の親父に内緒で、リペアラーで直してやったろ! 俺たちだけの秘密だぜ?……あれって、ズルだから」
GM:ではミエルの瞳が、今度はまっすぐあなたを見ます。
ルシェド:こちらも、見つめ返してます……!
GM:ミエルは再び、くず折れた身体を持ち上げ……あなたの眼前まで顔を上げます。漏れ出していた穢れはいつの間にか静まり、彼女の両手は結界の向こうのあなたの顔に添えるような位置に置かれています。
ルシェド:結界をコンコンってします! 「開けてくれよ、ここ。宿屋のときみたいに、悪い奴に攫われちまう前に」
GM:では再度、問います!
ルシェド:おう!
GM/ミエル:『私の大切なものは、この世界には無いのね?』
ルシェド:「そうだ! こんなところから連れ出してやる! 義賊の俺が、お前を攫ってやる!」
GM:さらに問いますよ! 「私のことを誰も知らない国! 私のことを誰も迎えに来ない物語! 私、どこに行けばいいのか、自分ではもう……わからない!……だから教えて!」
GM/ミエル:『私は、どこへ帰ればいいの!?』
ルシェド:GM!
GM:はい!
ルシェド:このシーン、魔法は使えますか!?
GM:え。魔法。
ルシェド:ほら、リペアラーの時みたいな。
GM:ああ、予想外の質問だった。はい、そういう感じの魔法なら、いいよ。
ルシェド:ハルーラの特殊神聖魔法なんですが。
GM:内容次第かな? どれですか?
ルシェド:俺が選ぶ魔法は……《スター・ガイド》!!
GM:ちょっと効果を確認しますね……。ほうほう、ほーう!
ルシェド:剣の迷宮だけど、夜間、星空なので。
GM:使用条件は満たしてますね。
ルシェド:……どうですか?
GM:面白そうな予感がしますね、この魔法、本来は信徒にハルーラの神殿の場所を示す効果とありますが。
ルシェド:お願いします!
GM:むむむむむ……!
ルシェド:フレーバー的に、帰るべき場所がわかるっていう効果で。この魔法で、彼女に帰るべき場所を啓示します!
GM:よし、許可します。では、RPから……魔法を使う口上かな、お願いします。
再度、RPの再開。
決然とした表情のルシェドが、迷子の子犬のような顔をしたミエルと対峙する。
ルシェド:「自由ってなんだろうなって、最初、船内を案内した時に話したっけ」
GM:ミエルの顔が、「ハッ!」となります。
ルシェド:「……今でも、自由ってことはよく分からない。でも、1個だけ」
GM/ミエル:「わかったの? 自由って」
ルシェド:「”自”分の行動に、理”由”を問う……俺はきっと、手の届くとこにいるヤツを見捨てることができないんだ、だから、ここに来た」
GM/ミエル:改めて問います!『教えて、私はどこへ帰ればいいの!?』
ルシェド:「俺は、義賊! その”義”を
ダイスロール【1.3】
ルシェド:……。
GM:……成功、ですね。
ルシェド:成功ですよ! 《スター・ガイド》成功ー!
ツヴァイ&ラグ:緊張したあああああ!!
ルシェド&GM:わあ、びっくり。
ツヴァイ:いやー、ここまで盛り上げて、《ウインドボイス》の悪夢が? って。
ラグ:そうそう、出目に赤丸があるって思って。
ルシェド:正直なとこ、1が見えてメッチャ焦ったなぁ……。
GM:私もです、呼吸を整えたい……あ。
ラグ:どしたの?
GM:この魔法、流星が帰るべき場所に向けて流れるんですよ。
ツヴァイ:ですね、普段なら神殿の方角を指すんだけど、今回はどうするのかな?
ルシェド:ああ、それなんですけど、考えてあります。流星がどこに降るべきか。
GM:すごいよプリンス!
ツヴァイ&ラグ:プリンスぅ~!
ルシェド:この人たちには
GM:では、続きから。他のお二人も、ここから加わってもらって大丈夫ですよ。
ラグ:え? ほんと?
GM&ルシェド:ふふふ……。
ツヴァイ:なにやらワクワクしますねー。
GM:《スター・ガイド》は果たして、ルシェドさんの祈りに応え、魔剣とミエルの願いが生み出した空間に流星を降らせました。ここから、ルシェドさんからもらった演出プランです。
ルシェド:「見てくれ、ミエル」
GM:流星は降りました……ただし……無数に!
ツヴァイ&ラグ:!?
GM:ツヴァイの上に、ラグの上に、この船に乗る、全ての命の数だけ。空から零れ落ちた輝きが、
ルシェド:はい。
GM:これは何を意味するのか? 答えてください!
ルシェド:回答します!
GM:どうぞ!
ルシェド:「帰る場所はいくらでもある! この船の全員が……お前を迎えにきたんだ!」
ラグ&ツヴァイ:おおー!
GM/ミエル:「ルシェド! それでいいの? 穢れた魔女の帰る場所なんて……」
ルシェド:「うちのリーダーはあのキングだ。魔女だって受け入れてくれるさ」
GM:では、ミエルは再度、崩れ落ちます。しかし力尽きたのではなく、生命あらん限りの力で、涙を流し叫んでいます。そして二人を隔てる透明な壁の気配が……。
ツヴァイ:「決めろよ、ルシェド」と、主砲の脇で。
ラグ:「素直なエールじゃないの、珍しい」って、同じく、汗を拭いながら。
GM:……壁の気配が、消えました。
ルシェド:決めますよ!「泣くなよ……不満か? そうだな、じゃあ……」
一同:……。
ルシェド:「君が望むなら、月まで連れて行こうッ!」
一同:やったああああああ!!
今や、光りを失い、完全にガラクタの塊へと姿を変えた《月のゆりかご》。
その傍らに、ルシェドに寄り添い、しゃくり上げるミエルの姿があった。
落ち着きを取り戻しつつあるミエルに、ルシェドがハートの型抜きを手渡す。
ルシェド:「じゃあほら、今度は落とすなよ」
GM/ミエル:「いま食べて良い? 何でもいい、少しでも元気になりたい」
ルシェド:「だったら、俺も食べるかな……」と言って、横に座ります。
ラグ:頑張れ男の子!
ツヴァイ:ひゅーひゅー!
GM:二つに分けますよね?
ルシェド:もちろん!
GM:では、砲撃戦の最中にも関わらず、神聖な静寂に包まれた空間に、さく、さくと砂糖菓子を食べる音が刻まれます。
ルシェド:「全然おいしくねぇなコレ、俺も久しぶりに食べたけど」と、プレイヤー的にもそう思うので、素直なもんでいいかな。
GM/ミエル:「ファンタスティックでも、ロマンティックでも、マーベラスでもない感想ね! 呆れたわ、ルシェドって、本当に……」と言いかけ、ミエルはハッと、あなたを見ます。
ルシェド:「え、なんだよ」
GM/ミエル:「あなた、ルシェドっていう名前だったのね」
ルシェド:「義賊ってのは、名前隠さないとやってけないこともあるからさ……ああ、やっべえなあ」
GM/ミエル:「なあに?」
ルシェド:「……まーた勝手に名乗っちまった、キングが怒る」って、苦笑いです。
しばし、笑いあう二人。
すると、遅れて落ちてきた流星に撫でられたミエルの身体も白金の光に包まれー……。
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