第12話 とっておきの月の髪飾りなのよ

GM:ムーンライトマイル号は衆目の中、迷宮の入り口へと向かいます。

ラグ:「いいの? きっと王国中に丸見えよ」

ツヴァイ:「逃げも隠れもしないものさ、晴天の月ってのはな」

GM:すでに散々目立ってますよ。主にルシェドさんが。

ルシェド:こうなれば何でも来いだ。

ツヴァイ:その意気その意気。

GM:しばしの航行の後、ムーンライトマイル号はカーテンの”裂け目”に到達します。広大な赤い空間が終わり、その先に見えたのは……背景出します。




(背景がダンジョンマップに切り替わる)




一同:おお!

ツヴァイ:BGMの雰囲気いいねー。

GM:「月の息子」っていう曲。いいでしょー。

ラグ:いやあ、背景も凝ってますね、これ、碁盤の目に区切ってる?

GM:はい、区画をわけている細い線ですが、それが移動可能な道です。

ラグ:”部屋”にあたる部分は入れる?

GM:その部分は進入不可です。雲が濃密な領域ということで。

ラグ:雲なのね。

GM:そうです、ここ『オペラムーン』の内部には夜空が広がっています。満天の星、巨大な満月、それにかかる雲。

ラグ:下はどうなってるの?

GM:眼下には森林と大きな湖が広がっているんですが、今回は地上への降下は不可とします。

ツヴァイ:了解。クライマックスだし、かっこいいことしたいね。

ラグ:ね。

GM:ほうほう。

ラグ:ん?



GM:では早速、その取っ掛かりを出しましょう! 見よ! 夜空の彼方にもう一隻の飛空挺!

ツヴァイ:おおっと!

ラグ:さっそく来たわね……!

GM:……しかし、それは間もなく雲の合間に消え、見えなくなりました。

ラグ:……と、思いきや、あらら、逃げたのかしら。

GM:今のニアミスでわかることがあるんですが、そうだなあ、PCの中で一番運転の上手な人は?

ルシェド:ツヴァイじゃないですか? 《航海士》ありますよね。

ツヴァイ:「ふふふ、やはり予想の通りだったな!」……GM、何が私の予想通りだったんですか?

GM:公開されてからかっこつければいいのに!

ラグ:航海士に……公開。

ツヴァイ&ルシェド:……。

ラグ:後悔してるから、あっち向いてて。




(ツヴァイにのみ情報を公開。また、PC側から呼ぶ時の呼称として、敵飛空挺にはツヴァイが『Sシャドウ.マイル』と名づけた)




ツヴァイ:「今回は両方良いニュースだぞ」って、共有しよう。

ラグ:お願いね。

ツヴァイ:「ちらっと見えたんだが、船体下部のフックは何らかの強力な力でねじ切られているようだ。これは推測になるが、ポーンミエルは敵船……『S.マイル』には乗っていないと俺は考える」

ルシェド:「落ちたんじゃないっすね、きっと、だったらああして飛び回るはずがない」

ツヴァイ:無言のサムズアップで肯定。

ラグ:「良いニュースと考えましょう、ポーンミエルを探しているのよ、連中も」

ルシェド:「強力な力か、気になるが、俺はアイツの無事を信じる……!」

ツヴァイ「そしてもう一つ。こちらの船は”速い”」

ラグ:「承知してるってば」

ツヴァイ:「速度差の話さ」

ラグ:「速度差?」

ツヴァイ「やつらの船は隠密性重視のタイプ、もともと鈍足なところに、下手な飾りつけをしたせいでさらに機動性は下がっている」この飾りつけっていうのは、飛空挺ムーンライトマイル号の形を偽装してるってことです。

ルシェド:「下手な細工が裏目に出たってわけか……」

ツヴァイ:「そうだ、風はこちらのほうに吹いている」

ラグ:「出遅れたけど、まだまだ五分ね」

ツヴァイ:「敵飛行船S.マイルに先んじて、この世界のどこかにいるミエルポーンを見つけ、奪う! 総員、配置!」

一同:「ラジャー!」




ツヴァイの号令を皮切りに、ダンジョン探索が開始となった。

迷宮『オペラムーン』内ではこのシナリオ独自の探索ルールを設定してあり、ここには概要を述べておく。


勝利条件:ミエルの救出&敵勢力の全滅

敗北条件:味方の全滅、またはシナリオ進行の停止


以下、このダンジョン独自の判定など


①《人員配置》

事前に船内の各所にPC(フェロー含む)を配置する。

配置する対象は管制室・操舵室・動力室の3部屋。

*操舵室には必ず操舵担当のPCを配置しなければならない。

**管制室には二人以上のPCを配置できる。


②《索敵》

ターンの最初に行う。各PCが任意で【スカウト+知力】のダイスロールを行い、成功した時は自分を中心に周囲2ブロックの存在を察知できる。

失敗orロールを行わなかった場合、察知範囲は周囲1ブロックになる。


③《加速》

《索敵》の後で、移動方向の決定前に行う。

動力室にいるPCが燃料を追加で3消費することで、通常移動後にさらに1ブロックの移動を行うことができる(通常移動は1ブロックにつき1燃料を消費)。

【アルケミスト+器用】のダイスロールに成功した場合、追加燃料の消費は1になる。


④《砲撃》

《索敵》で敵飛行船を発見した時、管制室に配置したPCの人数と同じ回数だけ《砲撃》ができる。

【魔法系知力+器用】または【シューター+知力】ロールに成功した時、敵飛空挺を砲撃によって任意の方向に1ブロック移動させることができる。

実行時には弾薬を消費する(ガメル換算)。





GM:以上になりますが、質問があればいつでもどうぞ。

ツヴァイ:ふむふむ、4×4の16ブロックでこれを行うと。

GM:はい。あ、みなさんの初期配置は南西の角です。

ルシェド:ミエルと、敵飛空挺ムーンガイストの初期位置はマスク?

GM:そうです、相手も同じように動き回っています。先にミエルを奪われないように頑張ってね。

ツヴァイ:先に敵がミエルに到達したらゲームオーバー?

GM:はっ! 考えてなかった!

ラグ:ちょっとGM(苦笑)。

ツヴァイ:じゃあね、「ミエルが奪われた場合、○○ターン以内に敵に追いついて戦闘せよ」ってすると、いいんじゃないですかね。

GM:ははーっ。仰せのままに! へへへ、ありがてえや。

ツヴァイ:苦しゅうない。

ラグ:GMの卑屈さが哀愁を誘う(笑)。

GM:いやあ、正直なところね、このダンジョン探索のルール、急遽作成したものなの。なので、そこらへんも踏まえて、よろしくお願いします!

一同:はーい。

ラグ:では配置決めから始めましょうか。

GM:アルテミシアも頭数なので、配置を忘れないでくださいね。




そして適材適所を考えることしばし。

最終的な配置は……。



GM:点呼ー!

ラグ:操舵室! キング!

ツヴァイ:はい!

ラグ:管制室! 私と、ビショップアルテミシア

GM/アルテミシア:はい!

ラグ:動力室! 動力……。

ルシェド:?

ラグ:動力室、プリンス(笑)。

ツヴァイ:ふふふふふふ。

ルシェド:くそっ(笑)。

ラグ:プリンスぅー。


このようになった。

入念に各人の技能を確認し、ここからダンジョン攻略がスタートする。



GM:では、いざ行かん! と気合を入れたあなたたち。

ツヴァイ:ハイホー、ハイホー。

ラグ:仕事がすきー。

GM:その耳に、語りかける声があります。

ルシェド:おっと? どんな声だろ。

GM:子供が本を朗読する声ですね、聞き覚えのある女の子の声。内容を以下に貼ります。



これは王子シヴァ―ルの最初の物語。

彼は、月の魔力によって穢れていく世界を防ぐために、旅に出ました。

そして、とうとう、《永遠の夜の森》にたどり着いたのです。

シヴァ―ルは警戒して森を進みます。

《永遠の夜の森》は醜い魔女の住む世界。

魔女の持つ《月のゆりかご》という魔道具が魂の流転を妨げ、世界を穢しているのでした。




ルシェド:「これは……!」何かに気付いたようにしてます。

ラグ:大事なことは伝令管で共有してね。三人、別の箇所にいるから。

ツヴァイ:じゃあ、ここはキングからたずねる。「二人とも! 今のは聞いたか?」

ルシェド:「『私を月につれてって』の一部です! そして……ミエルの声だと思います!」と。

GM:ルシェドさんは、ミエルだと確信してもいいですよ。

ルシェド:「いえ……絶対に、ミエルです!」

ツヴァイ:ふうむ、じゃ、ここらで例の物語を共有してもらうのがいいのかな?

ルシェド:あ、そうですね。ええと……「共有はRPで」でしたっけ。

GM:はい!

ツヴァイ:「詳しく説明してくれ、プリンス」って、説明を催促するね。

ラグ:「そうね、きっとあなたが水先案内人よ、プリンス」って、ラグも。

ルシェド:「わざとコードネームで読んでるっすよね?」ほんとに、もう! じゃあ、公開しますけども……。




「私を月につれてって・1巻」の内容が、伝令管を通じて共有された。

以前にルシェドのPCにのみ公開したテキストだが、リプレイ上では初公開となる。

テキストは五つの断片からなるため、通し番号をつけて記述する。




1/5

これは王子シヴァ―ルの最初の物語。

彼は、月の魔力によって穢れていく世界を救う使命を胸に旅に出ました。

そして、とうとう、《永遠の夜の森》にたどり着いたのです。

シヴァ―ルは警戒して森を進みます。

《永遠の夜の森》は醜い魔女の住む穢れた世界。

魔女は《月のゆりかご》という魔道具で魂の輪廻を拒否し、世界を穢しているのでした。




2/5

シヴァ―ルは《永遠の夜の森》の中心に湖を見出し、その水面の中心で、不思議なモノに乗っている少女と出会いました。

彼にはそれが《月のゆりかご》を操る魔女だとすぐにわかりました。

なぜなら、彼女の乗っている小船のようなものは三日月をした寝台で、しかも少女は穢れに染まっていたからです。

彼は、皮膚が崩れ落ち、角さえ生え始めた少女を見て、剣の柄に手をかけましたが、

少女がただ泣き続けるのを見て、動けなくなってしまうのでした。




3/5

彼女は、世界の救い手であるシヴァ―ルを待っていたと言います。

「ああ、英雄シヴァ―ル。あなたに恋焦がれるあまり、寿命をとうに過ぎ去って、私は輪廻に取り残されてしまった」

「罪深く、穢れきっているのも知っています。だけど、生まれ変わりを受け入れてしまったら、この恋心は消えてしまうのでしょう?」

「世界はあなたを英雄と呼ぶけれど、あなたは私にとっては、ただ一人の王子なのです」

人々の賞賛に包まれ、英雄として生きてきたシヴァ―ルは、これほど一人の女性に深く愛されることを知りませんでした。

シヴァ―ルは彼女を救ってあげたいと心の底から思ってしまったのです。




ルシェド:って、感じなんですけど……。

ツヴァイ:ロマンチックぅ。

ラグ:これ本当にアイツが書いたの? ゴーストライターじゃないの。

GM:あれっ?

ツヴァイ:どうしましたGM、豆がハトを食ったような顔して。

ラグ:食虫植物か。

ルシェド:えっと……これですねえ、実はあと二つあるんですよ。

ラグ:ほんとだ、3/5までしか無いわね。

ツヴァイ:残りはこれから拾うとか?

ルシェド:いえ、自分が残りも持っています。そこで、お二人に相談があって。

ツヴァイ&ラグ:はいはい。

ルシェド:残りの文章、土壇場まではルシェド一人で抱えさせてもらえないですか?ミエルを助けるイベントに深く関わるっぽい箇所なんですが……。

ツヴァイ:なるほど。ツヴァイはいいよ。

ラグ:私もいいわよ。一応、こっちからもお願いがあるけど。

ルシェド:……はい!

ラグ:もし、”その瞬間”が来たら、一旦プレイヤー同士で相談はさせてね。

ルシェド:わかりました、感謝します……!




ツヴァイ:では改めて。ゆるりと進軍せよー。

ラグ:ちなみに、ここって宇宙空間というわけではないよね? 

GM:息はできますよ(笑)。

ラグ:まあ、そうよね。

GM:ちなみにこの空間の性質はアビス迷宮に近いです。

ルシェド:領域展開! 的な?

ツヴァイ:アビス迷宮はまんま、領域展開ですよ。

ラグ:でも剣の迷宮なのよね?

GM:そうです。

ツヴァイ:剣の迷宮って、普通は魔剣の意図した試練を課す空間だけど。

GM:ここも基本はそうです「アビス迷宮の性質に似た試練」とさせてください。迷宮の主は魔剣であると同時に、魔剣「迷宮剣」を使ったミエルでもあります。

ルシェド:はーい。

ツヴァイ:アビス迷宮の内部は、作り出した人の精神にすごく影響される。

ラグ:そうなんだ。

ツヴァイ:それこそホントに何でもありなんですよねー。

ルシェド:何が起こるかわからないってことか。

ツヴァイ:トロッコ問題やってたアビス迷宮とかもあったよ、公式で(笑)。




GM:では、ここからターン処理の開始です。

ラグ:手順は《索敵→索敵がヒットしたら追跡→移動先宣言》ね。

GM:目標値12で《索敵》からどうぞ。

ツヴァイ:ほいきた。




コロコロ……

・ラグ  【3・6=9+5 達成値14 成功】

・ツヴァイ【3・4=7+7 達成値14 成功】




GM:ルシェドさんは振らない感じ?

ルシェド:ごめん、思考に沈んでました。ちょっとこの後の展開を考えて。

ラグ:(笑)

ルシェド:すんません、何振るんでしたっけ。

ラグ:【スカウト+知力】よ。




コロコロ……【6・2=8+7 達成値15 成功】




GM:敵の飛空挺も、ミエルも見当たりませんでした。

ラグ:発見できなかったルートにはマーカーを置いておきましょう。

ツヴァイ:外れを除外するのは大事ですね、じゃ、どっち行くかな。

ルシェド:……《ウインドボイス》使っていいですか?

ラグ:おや?

ルシェド:「もしかして!」って思うことがルシェドにはあるので、みんなに伝えようかなって。

GM:船内のやり取りは伝令管で大丈夫ですよ。ノーコストです。

ルシェド:じゃあ、伝令管に叫びます。「中央にいるかもしれない!」

ラグ:「おっと、プリンスが天啓を得たらしいわ」

ツヴァイ:「伝令は、正確にかつ明瞭にどうぞ、オーバー」って、先を促す。

ルシェド:「ここが、ミエルの好きな物語の世界ならば!」と、ちょっと深呼吸して……「あいつはこの世界の中心にいる! 『月のゆりかご』は湖の中央にある!」って、全力で叫びます。

ツヴァイ:じゃあねー……。

ルシェド:……!

ガラガラガラ―って舵をまわします!「了解! 船を中央に!」

ルシェド:「キング……疑わないんスか?」

ツヴァイ:「疑うはずがないだろう?今日のお前は王子様プリンスだからな」

ルシェド:「……ありがとうございます」

ラグ:「ふっふ」って、笑みを溢してますよ、プレイヤーも。




移動の際に、ムーンライトマイル号は《加速》を選択した。

動力室のルシェドがダイスロールに成功。

燃料を消費を抑えつつ、2回移動に成功する。

東→北の航路をとった結果、パーティーは1区画ぶんマップの中枢に近づいた。

ここで、GMによってマップ上に新たなアイコンが設置された。




ラグ:あれ、何だこのアイコン。

GM:星空を行くムーンライトマイル号の行く手に何か漂ってきます。

ラグ:イベント?

GM:2d6お願いします。漂流物の内容ロールです。

ツヴァイ:じゃあこのまま私が振っていい?

ラグ&ルシェド:どうぞどうぞ。




コロコロ……【5・4 = 9】





GM:では前方からふわふわと流れてくる小さな物体。それを船員の一人がキャッチしたようです。彼は「金色の月の形の髪飾り」を拾ったと報告してきます。

ルシェド:あー……。

ツヴァイ:落ち着け落ち着け、ここは普通の空間じゃあないんだから。

ラグ:そうね、本物とは限らないわ……嫌な予感はかなり強まったけども。

GM:再び、幼いミエルの朗読が響きます。内容は先ほど公開した文章の2枚目です。

ルシェド:泣いているのか、ミエル……。

ラグ:「ルシェド! ぼんやりしてないで指示を出しなさい!」って叱責するわ。

GM:あ、そうそう、2d6どうぞ。誰でも良いです。

ツヴァイ:ここはキングが道を拓く……9だ!

GM:じゃあ、モブ船員から報告「例の髪飾りがアビスシャードに変わったっす」って報告が来ます。2個、獲得してください。

ラグ:お金の所の下の所に「アビスシャード×2」と、換金イベントなのね。

ルシェド:今は素直に喜べない……。

GM:そして、敵飛空挺S.マイルの行動も終わり。苦悩の他にすることがなければ、次のターンへどうぞ。

ツヴァイ:苦悩の他に(笑)。

ルシェド:辛口じゃないっすか。




2ターン目に入り、二度目の《索敵》でも何も発見できなかった。

続く移動では、飛空挺ムーンライトマイル号は《加速》を選択し、東→北と航行して中央のブロックへと到達した。

《索敵》がヒットしないことに焦燥を募らせるルシェドだったが、彼に追い討ちをかけるように、テキスト3枚目の朗読を背景に、再度、漂流物と遭遇する。




GM/船員:「なんかぁ、フード付きのポンチョが流れてきたッすけど!」

ルシェド:(げっそり)

ツヴァイ:GMが精神的サディズムに目覚めてない?

GM:目覚めてないよ。あ、2d6どうぞ。

ラグ:じゃ、ここはラグが……また、9ね。

GM:アビスシャードを2個進呈します。

ツヴァイ:どうしようラグ姉さん、ルシェドを気遣うRPを挟もうか?

ルシェド:いや、大丈夫です。

ラグ:そう? ほんとに?

ルシェド:むしろ一刻も早く見つけるほうが心臓に良い。



ラグ:文書の3番目によると……ポーンミエルは王子を待ってるはずなのよね。

ツヴァイ:この世界が物語の世界を正確に模しているのなら、ね。

ラグ:……含みがある言い方じゃない。

ツヴァイ:アビス迷宮の要素として、迷宮内にミエルの精神がどのぐらい反映されているか? そこがポイントかもしれん。

ラグ:そっか、すっかり、シヴァールの物語を踏襲するだけって考えてたわ。

ルシェド:それだとマズイんですよ、ぶっちゃけ。

ツヴァイ:でも、任せていいんだよね? ね?

ルシェド:くっ、期待が重い……でも、そうだな、下調べでできることはない?

GM:ん、質問ですか?どうぞ。

ルシェド:GM、迷宮が現れる直前のミエルの様子って、俺は見てますよね?

GM:見てます。

ルシェド:そこから何かわかりませんか?

GM:では、少し抽象的なヒントになりますが……この剣の迷宮は、ルシェドさんの言葉に決心したミエルが発動させたものです。

ルシェド:うーん、俺の言葉か。

ツヴァイ:「覚えているか? 自分が何を叫んだか」

ルシェド:「諦めるな、そう、言ったはずだ……俺は……」

ラグ:「そう、なら……次の行き先は?」

ルシェド:「中央付近へ。俺を信じてくれ」



そして、迎えた3ターン目にして……。



GM:では3ターン目の《索敵》です。なお、敵の飛空挺もミエルを追跡していることをお忘れなく。

ツヴァイ:ま、焦らず騒がずだ。

ルシェド:粛々と《索敵》しよう。【スカウト+知力】ふりまーす。

ラグ:……出目が悪い! みんなは?

ツヴァイ:んー普通。

ルシェド:こっちも。

GM:ふーむ、では……索敵の結果……。

ルシェド:な、なんですかその、じわっとした”タメ”は。

GM:…………。

一同:ごくり……。

GM:おめでとう! 発見です! 

ルシェド:ぃよっしゃあああ!

GM:船の西側にたゆたう何らかの飛翔体、あなたたちはそれを発見しました!

ツヴァイ:さすがルシェド君なんやなって。

ラグ:発見RPしよう。

GM:そのRP、描写を挟むのでちょっとお待ちを!




3ターン目、ダンジョン中枢から全周を見渡した結果、義賊団は西の空に浮かぶ「天蓋の付いた三日月型の影」を発見した。

ひととき安堵に包まれた船内は、しかし、一転。

北に現れた新たの影に、緊張が走る。

「ムーンライトマイル号に良く似た船影」……『S.マイル』を発見したのだ。




GM:アイコンを「二つ」追加します! 

ラグ:二つですって!?

GM:位置は飛空挺ムーンライトマイル号の西と北、距離、両者とも1ブロック!

ルシェド:くそっ、奴らか!

ツヴァイ:いやー、持ってますね、両手に花です。

ラグ:ここは《砲撃》して先に叩く? 相手もミエルを追跡してるんでしょ。

ツヴァイ:アリっちゃあアリだけど……ルシェドさんの中の人的にはどう思う?

ルシェド:え? そりゃあ、ミエルを優先したいっすけども。

ツヴァイ:ふむふむ。

ラグ:思い切れない理由があると?

ルシェド:、性分でね。敵を放置した場合のリスクを考えてしまうんです。悩む。

ラグ:まあ、相手も砲撃できるもんね……。

ツヴァイ:私はこういう時どうするか、ダンジョン突入時から決めてある!

ルシェド:マジっすか……キング!

ツヴァイ:もちろん、キングだからな!

ラグ:こういう時は、逆に頼もしいというか……ここは、キングの判断に命を預けましょうか。

GM:なんかカッコいいことしてる。キングのくせに。では、発見RPをどうぞ。




ツヴァイ:「何か見つかったか?」とまずは伝令。ひどいことを言われた気がするが気にしない!

ラグ:じゃあ、敵の方をもらうわね「北に船影、敵飛空挺S.マイル!」と伝令を返す。

ルシェド:では、こちらも「三日月……? ……あれはミエルだ! 西!」と返信します。加えて「俺にはわかるんだ!」と、確信を込めて言いますよ。

ラグ:え、そうなの?

ルシェド:2番目にある『月の揺りかご』って、多分ああいうのだと思うんで。

ツヴァイ:じゃあ、いつもの即断で……「航路! 西!」

ルシェド:「キング……!?」

GM:今の発言は、移動宣言と判断していい?

ツヴァイ:当然! 「このキング、後手に回るのは趣味じゃない……前にも言ったよな?」というわけで、西に1マス移動したい。みんなそれでいい?

ラグ&ルシェド:OK!

GM:……では、ぐるりと舳先を回し、夜風を切って進む先。あなたたちの前方を、童話チックなデザインのお月様が横切って行きます。

ルシェド:「見つ……けたっ……!」

GM:もう、公開してもいいかな、これが《月のゆりかご》です。

ツヴァイ:いざ見つかると嬉しいですねえ。

ラグ:ちなみに、これ大きさはどんなもん?

GM:お月様部分は普通自動車ぐらい。天蓋を含む全高は大き目の本棚ぐらい。ゆらゆらした動きも相まって、水面の小船を思わせる感じです。

ツヴァイ:ははあ、これ、ターン毎に動いていたんです?

GM:そうです! 初期位置は中央で、そこからランダムに中枢の区画を動き回っている……予定でした(笑)。結構早く見つかっちゃいましたね!

ラグ:ルシェドの見当は、およそ正しかったのね!

ルシェド:いやいや、信じてくれたみなさんのおかげっす!




GM:では、『月の揺りかご』の描写をしますね。まんま、ベッドなんですが。

ルシェド:ベッドなのか……。

GM:顔のある三日月を模した「船」の部分。その上面には敷布が引かれ、さらにその上には丸まり、盛り上がったシーツがあります。

ルシェド:う。

ラグ:嫌な感じ?

ルシェド:そうっすね、でも、あれ、ミエルですよ絶対……。

ラグ:じゃああえて、ここは……「ルシェド!!」

ツヴァイ:お、なんだなんだ。

ラグ:「私もルシェドの判断を信じてる。だけど、抱えきれなくなる前に必ず胸の内を明かしなさい。いいわね?」これはね、あれですよ。

ツヴァイ:?

ラグ:プレイヤー目線的には、物語のまだ共有されてない箇所についての念押し。実は、そういうテキスト、全部読みたいタチなので。わかる?

ツヴァイ:わかるわかる。

ルシェド:あざっす……! 必要になったら、必ず!




ラグ:ちなみに、ベッドの上にミエルがいると確信できる要素はある? 特にラグやツヴァイの目線で。

GM:一応、シーツの中に「何かありそう」なボリュームはあります。ただ。

ラグ:ただ?

GM:シーツからじわじわと染み出る”淀み”としか言いようのない何か。それが、この空間に拡散しているようです。血痕とかは無いですが。

ツヴァイ:その、淀み? セージ判定の対象なのかな。

GM:対象外です。毒素を含んでいる様子はありません。ただ、周辺の空間が”淀み”に触れると、色彩を失っていくように見えますね。

ツヴァイ:毒じゃないなら、思い切ってペガサスで回収にいくか?

ラグ:最初のミエル誘拐シーンと同じように?

ツヴァイ:ペガサスの積載能力でできるなら、視野に入れたい。

GM:そうだなあ……ちょっと待ってね、敵の飛行船の処理と合わせて考えるから。

一同:はーい。

GM:ちなみに、戦闘の準備は全員良いです?

一同:問題ないでーす。




GM:よし! こうします。現在、飛空挺ムーンライトマイル号は『月のゆりかご』とランデブー体勢です。

ツヴァイ:ふらいみー・とぅー・ざ・むーーーん……。

ラグ:……。

ツヴァイ:……ふふんふーん♪

ラグ:そこしか知らんのかい。

GM:『月のゆりかご』の積載は今回は不可で。代わりにロープなりなんなりで手繰り寄せれば曳航できますよ。

ツヴァイ:大きさ、自動車ぐらいなんだよね、甲板の上に降ろせないですか?

GM:まあいいかな。すごい重たいというわけでもないですから。どんな風に降ろすのか具体的に教えてください。

ツヴァイ:じゃあ、まずは飛空挺ムーンライトマイル号の高度を少し下げる。

GM:はいはい。

ツヴァイ:で、バルーンと甲板の間で掬い取る。どう?

GM:許可しますが、それを行うには減速も行うこと。その後、《航海士》で技能ロールをお願いします。

ツヴァイ:失敗したときはどうなるのかな。

GM:失敗時はターンを消費します、成功するまで「確保」にはなりません。

ツヴァイ:ほいきた「減速ー! 速度、合わせ!」からの……《航海士》!

GM:目標値12でどうぞ。




コロコロ……【4・4=8+7 達成地15 成功】




一同:いえーーーい!

ツヴァイ:ツヴァイは操舵してるから、甲板には誰か行ってね。

ルシェド:動力室のほうから「ミエル!」と叫んで甲板に飛び出します。

ラグ:私も手伝う、一応、薬草を用意しておくわ。あと、気付けの酒。

GM:では、両者の航行コースが徐々にシンクロしていきます。

ツヴァイ:じゃあ、計器類を見ながら、すーっと掬い上げますね。金魚すくいよりももっとソフトなタッチで。

GM:すーっと成功です。あなたたちは『月のゆりかご』を確保しました!

ツヴァイ:「ふっ……失敗は、しない」



引き寄せられた『月のゆりかご』は、鳥の羽を思わせる軽さでふわりと飛空挺ムーンライトマイル号の甲板に舞い降りた。傍目には幻想的で美しい光景であり、物語の姫を迎えるにふさわしい光景だったが……。



GM:青白く光る『月のゆりかご』。そのシルエットにルシェドさんには見覚えがあります。

ルシェド:……髪飾りか。

GM:そうです、ミエルが「シヴァールのファンの証し、とっておきの月の髪飾りなのよ」と自慢していた、あれにそっくりです。もう少し、外観の描写をするね。

ルシェド:お願いします。

GM:近くで見ると、《月のゆりかご》の構成物は、スイートルームのベッドを中心に、家財や外壁が魔法的な力で結合したものだということがわかります。この迷宮が生まれた時に、発動地点だった部屋がミエルを守るために変形したものですね。

ラグ:廃材アートだった。

ルシェド:そういえばこいつ、小説の文章の通りですか?

GM:と言うと?

ルシェド:ええと……印象とか、ツヴァイが言ってたことを思い出して、ミエルの精神がどのぐらい物語に影響を与えているのかなって。

ツヴァイ:『迷宮の主の精神がどのぐらい反映されているか?』ですね。



GM:するどいですよ! 物語の中の《月のゆりかご》は幻想的な美しさの黄金の物体で、魔女が思い人を待つためにしつらえたものでした。

ルシェド:ですね。

GM:ですが、あなたたちの目の前にあるものは青白く光り、歪んだ鉄骨の寒々しい色も相まって、何か、拒絶のするような意志を感じます。

ルシェド:くっ……他には?

GM:さらに目を凝らすと、ベッドから天蓋の間には透明な膜に包まれているようです。その中央に座する白いシーツの塊は……。

ルシェド:塊は?

GM:蠢くたびに”淀み”を撒き散らしながら、時々、忍ぶような泣き声をもらしています。

ラグ:えらいことになってきたわね。

ツヴァイ:じゃあ、ここで一旦号令させて。

ルシェド:うっす……。

ツヴァイ:「みんな甲板に集まってくれ!」操舵室から伝令を飛ばしますね。「目標の確保に成功した!」って言って、ルードに舵を任せます。



GM:さて、ルシェドさん。先んじて、甲板に上がってきたアルテミシアが、あなたの肩に手を置きながら、問いかけます。

ルシェド:……はい。

GM/アルテミシア:「ミエル姫かい? いや、愚問か」

ルシェド:「間違いない、だけど……」すげー絶望した面持ちで、じっと《月のゆりかご》を見つめてます。「こんなにも……待たせちまったかな」

GM/アルテミシア:「君は知っているはずだね。この、彼女がまとっている”淀み”の正体を。そうだろう?」……これもアルテミシアの口から聞こう。

ルシェド:ここは呼びかけてもいいんですか?

GM:いいですとも。

ルシェド:「ふー」っと、深呼吸します。

GM:さ、どうぞ。




ルシェド「迎えにきたんだ!! ……ミエル!!」




ツヴァイ:「穏やかじゃないな、あれは、”淀み”なんて生易しいものじゃない」

ラグ:「いただいていくのよね? ルシェドが名前を呼んだわ」と、ニコッと。

ツヴァイ:「当然だ」

GM:では、あなたたちがそうして、甲板で事の次第を見守っていた、その時……。

ツヴァイ:ラッパかな?

ラグ:ラッパじゃないよ、ピエロだよ。きっと。




義賊団ジャッジメントキングダムは《月のゆりかご》を回収することに成功した。

しかし、その後方、北の方角から接近する影があった。

”それ”は高らかにホーンを響かせ、甲高い声で鳴く怪鳥のように、船尾に近づきつつあった――。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る