第11話 では舞台の幕を上げるとしよう

シナリオ中の主要イベントを通過し、義賊団一行はシナリオ終盤に到達した。

苦楽を共にした飛空挺に乗り込み、蒼空にはためく赤いカーテン……文字通り、クライマックスの舞台へと突入する算段である。

決戦を予感し、各々、粛々と装備&所持品の確認と消耗品の購入を行う。




GM:HEY!ツヴァイっち。

ツヴァイ:なんです?

GM:RP的にはどこで何をしてます?

ツヴァイ:ウインドステップの世話です。この子にも活躍してもらわにゃ。

GM:じゃあ、あなたはちょっとしたことを思い出します。

ツヴァイ:ちょっとしたことを思い出しました。

GM:前のリーダーから引き継いだ弾丸があったなあ。

ツヴァイ:あるある……そういえば、あったなーって思い出した。

ラグ:おー。

ツヴァイ:私の持ってる武器も大砲の丸い砲弾を改造したものですからね。

ラグ:そうだったんだ、ユニーク。

GM:今、メイン欄にデータを張りますね。


《4発の秘蔵マギテック砲弾、先代から受け継いだ》

 内訳……スーパーノヴァ(相当)×1

     他、選択式      ×3




ツヴァイ:選択式? 選べるの?

GM:5レベル以下のマギテックボムから3つ。選んだら持ち物欄に追加してね。



(ルールブックを眺めること、しばし)



ツヴァイ:オーダー! グレネード1つ、レジスト・ボム1つ、スモークボム1つ。

GM:ご注文ありがとうございます。

ツヴァイ:これ、使う時は飛空挺に指示を出すのかな?

GM:これらは団長専用の”主砲”に装填されます。撃てるのはツヴァイさんだけです……なにせ専用なので。

ツヴァイ:きっとペガサスの形をしてるんでしょう。なので、ライダー+器用度で撃てる感じにしてください。

GM:それでいいですよ。

ツヴァイ:「これを使う時が来たかもしれないな」ってな演出で撃ちたい。

ラグ:そういうことだったらド派手に行きましょ。全部使いきっちゃお。

ルシェド:ド派手に行こうぜ、賛成!




ラグ:良かったわねリーダー……あっ、そうだGM!

GM:はい?

ラグ:今回飛行船に乗って準備してるわけですよね。

GM:ですね。まあ、町に行っててもいいけど。

ラグ:船員の中にね、レンジャー技能持ち、いませんか?

GM:なるほど、じゃあ、5レベル相当の600ガメルで雇える人がひとり。

ラグ:じゃあ600ガメルで雇って、代わりに魔香草をロールしてもらう。

ルシェド:おお、かしこい。

GM:器用度は3でいいですよ。レベル5、ボーナス8でどうぞ。 



コロコロ……【3・4= 2+6(威力+レンジャー器用) 8点】



ラグ:8点で全快かぁ、レンジャー技能を取ってなかったから、威力ゼロで振るところだったのよね。

ツヴァイ:後にファインプレーになるかもですね。

ラグ:1点に泣く可能性を考えると妥協できないわ。



ツヴァイ:さてはて、我らが王子の様子はいかに。

ルシェド:……。

ツヴァイ:あれ。

ルシェド:…………。

ツヴァイ:キング視線の効果で石化したんですかね。

ラグ:バジリスクがでたぞー。

ルシェド:してませんよ(笑)。GMに「私を月につれてって・1巻」の全文をもらったんです。裏で読んでました。

ラグ:ほほう?

ルシェド:この後どうしようってなってます、自問自答。

ツヴァイ:ショッキングな内容だったの? まあ、あの作者だしな……。

ルシェド:GM、これはみなさんと共有できる?

GM:できますし、しなくてもいいです……が。

ルシェド:が、とは?

GM:共有する場合の処理ですが、これはルシェドさんの口から、みんなに伝えることにしてください。シナリオ的に重要なファクターなので。

ルシェド:そうか……じゃあ、これは今はルシェドの胸のうちに秘めておくことにします。

ツヴァイ:ここは暖かい目で見守ろう。

ラグ:賛成、自分のことは自分で、ね。

GM:ただし、プレイヤーは適切と思われるタイミングで公開して、共有してくださいね、そこ、忘れないで!

ルシェド:はーい了解です!




GM:じゃあ、準備完了かな? 思ったより早かったねー。

ツヴァイ:前の戦闘で消耗してませんからね。義賊、スマート、怪我しない。

ラグ:何かしたいね、こう……何か!(笑)

GM:景気づけ?

ラグ:そうそう、作戦開始前の。

ルシェド:ミドル戦闘は買い物帰りにそのまま突入したもんね。

一同:(笑)

GM:次は、飛空挺必須ですからね!




ラグ:何か……あっ! ねえ、ツヴァイってどんなお酒飲んでるの?

ツヴァイ:ツヴァイ君ですかあ? 海賊だったら相場はラム酒とかミード酒だけど、空賊も同じようなもんでは?

ラグ:じゃあラムがいいな。ツヴァイがいつも飲んでいる酒棚から1瓶を拝借して。

ツヴァイ:おお。

ラグ:……とびきり高い秘蔵の奴を。さっきの腹いせに。

ツヴァイ:おおお!?

ラグ:「昼間は忘れてたものね」と、ラッパ飲みで一口。そして、にっこりとツヴァイに差し出します。

ツヴァイ:じゃあツヴァイも仏頂面で一口飲んで、ビショップに。

ルシェド:「絶対に……!」って決意しながら、一口。

ツヴァイ:ここ、アルテミシアさんにお酒を渡すと、どんな反応を示すんです?

GM/アルテミシア:「公演の前は酒を飲まないのが普通だけどね」て言ってます。

ツヴァイ:「俺は仕事の時しか飲まない主義だ」と負けじと。

ラグ:いつも酔っ払ってるようなもんでしょ、まったく。

GM/アルテミシア:「だが、今は義賊の仮面をかぶろう。これが君たちの仕事のやり方なら」と、ゆっくりと瓶をあおり……「ほんとは、仕事中のお酒が美味しいことは知ってるんだ」と、悪戯っぽく笑います。

ラグ:「スリリングなお酒になるわよ」って、好戦的な素振りを示す。

GM/アルテミシア:「お手柔らかに、お願いするよ」って、苦笑い。

ラグ:荒事で食べてる人たちですからね、「あら、失礼……」とこちらも苦笑い。

ツヴァイ:じゃあ、酒瓶を甲板にぶつけて割るよ、えいっ!

GM:皆の結束を確認したところで、出発ですね!




――ラグの奴! 酒棚の隠し板に気づいてたとは。 byツヴァイ

――下手に隠さずに堂々と置いておけば、飲まれなかったかもね! byラグ





ここで、ツヴァイがフェローであるアルテミシアに仮面を手渡す。

ささいな外見変化のみなのでGMは許可、アルテミシアも今回に限り、義賊団の一員としてミエルの奪還作戦に協力することになったのだが……。



GM/アルテミシア:仮面をかぶります。「どうだい?」と気取って見せますね。

ツヴァイ:「なかなか様になっている、だが、もう一つ足りない」

GM/アルテミシア:「そう? どこかだめなのかな……」とキョロキョロ。

ラグ:「コードネームよ、何て呼ぶ? 貴女のこと。それ以外は完璧」とフォロー。

ツヴァイ:言ってはみたが悩みどころなんだよな、どうしようか。

ラグ:コードネーム欲しいもんね、臨時加入でも。

ツヴァイ:よし、じゃあ、ルシェド君!

ルシェド:?

ツヴァイ:「お前の『ビショップ』を彼女に貸してやってくれ」

ルシェド:「それは別にいいっスけど……」

ツヴァイ:「そして、君には新しいコードネームを設定しよう。団長権限で」

ルシェド:「まーた思いつきで……で、俺は何になるんすか?」

ツヴァイ:「プリンスだ」

ルシェド:「は?」


一同:(笑)


ルシェド:「あのー……ラグ姉さん。キング、頭打ったりしてません? 落馬とか」

ラグ:「いつも打ってるようなもんじゃない?」

ルシェド:「それもそうですね……」

ラグ:これって、なんか理由付けとかキング的にはあるの?

ツヴァイ:え、ある、と思う(笑)

ラグ:ないんかい。

ツヴァイ:あるよ、ありますよ「もちろん、シヴァールだからだ」って。

ラグ:そこはアレだね、ちゃんと語らせた方が面白い気がする。

ツヴァイ:そっか。




ラグ:「キング。思惑ぐらいは説明してあげないと納得できないんじゃない?」という感じで振るわね。

ツヴァイ:ちょっと待ってね、考える……よし、じゃあね、ルシェドにこう言う。

ルシェド:どきどき。

ツヴァイ:「説明の必要があるようじゃ、まだまだだな」

ルシェド:「は? あの、は、はい?」

ツヴァイ:「今回、我々ジャッジメントキングダムの役割はあくまで”露払い”だ」

ルシェド:「つゆはらい……っすか?」

ツヴァイ:「姫を迎えに行くお前こそが本命だろう、つまり、王子プリンスが必要だ」

ラグ:「らしいわよ」って乗っかりますね。

ルシェドプリンス:「俺にはルシェドって名前があるんだけどなー……」

ツヴァイ:「よろしく頼むぞプリンス」

ラグ:「よろしく頼むわねプリンス」

ルシェド:「二人とも正気ですか!?」




ツヴァイ:というわけで、アルテミシアさんを以降はビショップと呼びます!

GM/アルテミシア:「多少なりとも魔法の心得はある、足手まといにならないように頑張るよ」あと、ちょっとルシェドさんを見て、小声で話しかける。

ルシェド:え、何だろう。

GM/アルテミシア:「私と話したこと、しっかりと覚えておいて。キングさんが考える通り、今の君はシヴァールに相応しい……」

ルシェド:「いい迷惑っすよ、プリンスだなんて……」って、げんなり。

GM/アルテミシア:「だが、『ミエル姫に、果たしてシヴァールは相応しいのか?』とね」あと、先ほど渡した「私は月につれてって」のテキスト全文も、心にとどめて置いてください。

ルシェド:「難しいこと、考える暇なんて無いと思います。全力で、やるだけです!」実際、このあと何が起こるかはわかってないですからね!

GM/アルテミシア:「その度胸さ。道が違えば、君も良い俳優になっただろうね」




ツヴァイ:じゃあ、最後にもう一度発破をかけます。いいかな。

一同:よっ、リーダー!

ツヴァイ:「役者は揃ったが、脚本には修正の必要がある、そのためには、プリンスの活躍が要となるだろう! あの姫には悲劇のヒロインは似合わない!」

GM:いいね。ヒューッ!!

ルシェド:「ウ、ウス。了解っす」

ツヴァイ:ルーク君に指ぱっちん。

GM/ルード:「俺はルードだ!」

ツヴァイ:「航路、オペラムーン! 主機、点火!!」

GM/ルード:「主機点火! 舌を噛むなよ、最大船速だぞ!」 

一同:「とっつげきー!」




GM:ムーンライトマイル号は、隠しドックを飛び出すや、スフバールの空を裂く矢となって一直線に疾駆します。目指すは……天空の劇場!

ルシェド:「俺、やられっぱなしは大ッ嫌いですから」

ラグ:「盗るのは好きだけど盗られるのは大嫌いよ」

ツヴァイ:「では舞台の幕を上げるとしよう」





――これまでの手記を、ふと読み返す。

俺は……俺たちは”ここ”まで来た。

もしかしたら、今書いているこの手記が最後になるのかもしれない。

時間がないから、最後にただ一言。



「君を迎えに行く」 byルシェド



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