第10話 良いように利用されたみたいね!

GM:プレイヤーから要望が無いようでしたら、宿屋内に移りたいのですが。

ツヴァイ:いいですよ、ラグさんが色々と調べたいことがあるとかで。

ルシェド:宿のおっさんは?

GM:彼も一味なので強奪イベントの直後に姿をくらましています。

ルシェド:してやられたなあ。



GM:あと、アルテミシア座長のイベントなんですが。

ラグ:あ、合流してますよね、じゃあ強奪イベントの一部始終を一緒に見てた。

ツヴァイ:どういう風な出会いにしたの?

ラグ:ヨモギの匂いに我慢しながら、メリアとしての人生観と芸術論を最後まで聞いた……とか。

ルシェド:匂いがやばそう。

ラグ:何か?

ルシェド:いや別に。

GM:彼女のデータは、この後のとあるイベント後に出しますね。

ツヴァイ:データ? もしかしてフェローかな。

ラグ:同行するんだね。

GM:しますよー。ですが、今は彼女を含めず三人での行動宣言をどうぞ。それが完了したら、ダンジョン突入前の準備です。

ラグ:ここ、調査パートって感じでいいんですよね?

GM:はい。

ラグ:テンデが糸を引いてたのはわかったけど、それだけではね……。

ツヴァイ:我々の嫌疑を晴らすようなモノも見つけたいですね。

ルシェド:うーん、どうしようかなあ。

GM:おおまかに言うと、部屋跡の調査orアルテミシアと話す、ですね。

ラグ:アルテミシアと?

GM:彼女はシヴァールに関する知識を豊富に持っています。

ルシェド:専門家がきた。

GM:ちなみに、今回の同行理由として、彼女もまた、例の絶叫を聞いてあなたに興味を持ったというのもありますが。

ルシェド:勘弁してくださいよ!




その後、部屋での調査はラグが率先し、ツヴァイもそれに追従。

一方、「私を月につれてって」の一巻を読んでいるということもあり、ルシェドはアルテミシアとの対話イベントを担当することになった。




GM:では部屋のシーンから……と言っても。

ツヴァイ:部屋ないしなぁ。綺麗な青天井ですね。

GM:そんな中でもいくつか、原型をとどめた家財の残骸があります。そしてどこかから音が鳴ってる感じが。

ラグ:さては……蓄音機!

GM:正解! 蓄音機はだいぶ傷ついてますが、辛うじて音楽を再生しています。

ラグ:どんな音楽かしら。

GM:イージーリスニングっぽい平坦な楽曲に乗って、歌唱が聞こえます。で、歌唱の内容ですが。

ツヴァイ:まさか呪歌?

ラグ:まっさかあー……え、どうなんだろ。

GM:これ、人語ではありません。でもラグさんにはわかります。魔神語です、魔神語で歌が流れてます。

ラグ:これはテンデがかけてたレコード?

GM:そういうことになります。

ルシェド:魔神の手先だったか。




《ラグに対してのみ、歌唱の内容メモを公開する》




GM:結構長いんでゆっくり読んでください。で、読み終わったら教えてください。

ラグ:了解です、ふむふむ……。なるほど、これが暗殺段との連絡手段か。

ツヴァイ:ラグさんの解読を待つ。瓦礫でジェンガでもしながら。

GM:暇とはいえ、なんか他にないの?




GM:では、ルシェド&アルテミシアのほうに視点を変えましょう。

ルシェド:うっす!

GM:一座の花形役者であるアルテミシア嬢、長身の彼女が、ルシェドさんのほうに真っ直ぐつかつかと近づいて来ます。

ルシェド:緊張してます。

GM:ちなみに外見はこんな感じ(アルテミシアの描写メモを渡す)。

ルシェド:あー……うん。

GM:あれ?

ルシェド:いやあ……苦手なタイプかもしれない。掴みどころがない(笑)。

一同:(笑)

GM/アルテミシア:「事情は、お仲間のラグという人から聞いた。お姫様を奪われたそうだね」と、性別を感じさせない澄んだ声で、しかし慰めるように語りかけますね。

ルシェド:「なんにせよ。取り返してみせますよ」

GM/アルテミシア:「女の子を取り戻す。いいね、男の子の夢じゃないか」ちょっとほにゃほにゃしたしゃべり方です。

ツヴァイ:ほにゃほにゃ、て。

GM/アルテミシア:「だからこそ、僕に力になれることがあるんじゃないかと思ってね」あ、この人は一人称”僕”です。女性ですが。

ルシェド:「力に……?」まずは聞き返す。

GM/アルテミシア:「もちろん、ミエル姫が負った心の傷に、君が立ち向かうんだろう? そう聞いたよ」

ルシェド:ただ助けるだけじゃダメってことか……。




GM/アルテミシア:「シヴァールの物語を読んだんだね」と聞きます。

ルシェド:「一巻までだけどね。面白いけど、最後に避けられない別れが来るって、悲しいお話っすね」って神妙な面持ちで答えます。

GM/アルテミシア:「乙女たちがどうしてシヴァールを求めるか分かるかい?」

ルシェド:「それは……」うーん、わからん!

GM/アルテミシア:「では、質問を変えよう、いいかな?」と、一旦GMとのやり取りで進めますね。

ルシェド:あ、はい。

GM:ミエル姫がどんな子だとルシェドさんは思っていますか?

ルシェド:その……なんというか、不器用で、何かあったらすぐ人を頼って、いろんなところで目ざといし、からかってくるし。まあでも、優しい子ですね。

GM:ふむ……ふうむ。

ルシェド:なんかおかしかったかな今の。

GM:いえ、「普通の女の子」という印象なのかなと。

ルシェド:ですね、そういうシーンしか見てないかも。

GM/アルテミシア:OK! では、再度RPで……「ミエル姫、謎の人物と言われる割に君の目に映っていたのは、実に普通の女の子だったようだね!」

ルシェド:謎の人物っちゃ、確かにそうか。

ツヴァイ:想像以上に徹底してましたからね。

ルシェド:ある意味、最大の国家機密かもしれない。

ツヴァイ:お姫様は……女の子だったんです!

ラグ:そりゃそうでしょ(笑)。いや言いたいことはわかるわよ。

GM/アルテミシア:「ルシェド君! 聞きたまえ!」と、ガバっと肩をつかみますね。

ルシェド:おわわ!

GM/アルテミシア:「君は、彼女を救う大きなヒントを持っている! ……だが、実現のためには、シヴァールについてさらに知る必要があるだろう」

ルシェド:「……! お、お願いしまっす!」




――アルテミシアさんから、シヴァールという人物についてより詳しく学んだ。シヴァールは、世の中にいる、種族も、身分も、年齢も違う色々な女性……その人達が共通して持っている、乙女の部分をくすぐるように描かれているんだそうだ。

そんなことができるものなのか? byルシェド




ルシェド:「そう、ならないといけないってことっすか……」

GM/アルテミシア:「そうだけど、そうじゃない」と、アルテミシアは指を左右に振って、どちらともつかない返答をします。

ルシェド:あ、はい。

GM/アルテミシア:「シヴァールの役者が仮面を被るのは種族を特定させず、見る人々にそれぞれ、自分のシヴァール像を見て欲しいからだ」

ルシェド:あー、これはわかる。

GM/アルテミシア:「でもね、劇は必ず終わるんだよ、君の読んだ本のように」

ルシェド:「……」

GM/アルテミシア:「劇場に背を向けて帰る女性たちの背中は、小さくて悲しい。みんな、夢の終わりが来ることを本当は知っているから。劇場の外に広がる、昨日と同じ今日から逃げられないから。僕はそういう背中を幾千、幾万と見てきた」

ラグ:映画見終わった後とかにあるやつ。

GM/アルテミシア:「だからこそ、夢の終わりに迎えに来て、帰り道を共に歩く、『本当の王子』が彼女たちの数だけいたらいいのにって、僕は思っているよ」と、あなたを指差します。

ルシェド:「本当の王子? それはシヴァールとは違うのか」と、困惑します。

ツヴァイ:私は本物のキングですけどね。

ルシェド:ノーブル詐欺師のくせに……。

GM:整理しますね。ミエルの心のケアに必要なのは、『お姫様という身分に関係なく、本当のミエルを迎えに来てくれる人』です。

ルシェド:まさか、俺か……?

GM:次にミエルに会った時、具体的にどのように行動するか? それが彼女の運命を左右するということです! 

ツヴァイ&ラグ:頑張ってね!

ルシェド:あああ、また外堀が埋まった!




ルシェド:「俺、あいつに会った時、どうしたらいいんすか?」これは具体的なことがあるなら、ちゃんと聞いておきたい。

GM/アルテミシア:「君がミエル姫の王子になりたいと、真剣に思っていることは知っている」

ツヴァイ&ラグ:知ってまーす。

ルシェド:何とでも言って、あれはファンブルで正解だったんだ……多分。

GM/アルテミシア:「だから、ミエル姫も、きっと君が迎えに来ることを信じているはず。だから、まずは」

ルシェド:「まずは?」

GM/アルテミシア:「まずは、相手の前で仮面を取るんだ。しっかりと、『君』を迎えに来たと、『台本』では無い言葉で伝えるんだね」

ルシェド:「仮面……ビショップでも、シヴァールでもないとしたら」

GM:はい、ここは以上! あとは、進行しながら自分で考えて!

ルシェド:げっ、まぁそれもそうか。




――このあと、アルテミシアさんが役者になった理由も話してもらった。

「短命種の自分に残せるものはあるか?」と考えた時に、「役者になれば自分の演じたシヴァールの姿を大勢の人の中に刻める」と思い至ったんだそうだ。

ミエルにも聞かせたいって言ったら、驚くほど大げさに喜んでくれた。

誰かの中に残るって、大事なことなのだろうか。誰にも知られず生きてきたミエルも、そういうことができたら嬉しいんだろうか。 byルシェド




GM:そうそう、このイベント以降、アルテミシアはフェローとして正式加入します。技能を公開しますね。



●プロフィール 名前:座長アルテミシア 種族:メリア MP:33

1~2 アトリビュート(風) 達成値13

3~4 キュア・ハート 拡大数 k30@10+8 MP4 達成値16

5 フィールドレジスト 魔法収束 炎 MP4 達成値17

6 バラード 達成地16



ツヴァイ:メインヒーラー来た!

ラグ:危険だけど、同行してくれるの?

GM:良い人なので……。

一同:(笑)

GM:まあ、ミエル姫が救済される場面に立ち会って、芸の肥やしにしたいとか。

ラグ:肥やしって。

ツヴァイ:とりあえず役者根性の人としておこう。




GM:さて、ルシェドさんが物語を〆るキーを入手しました。

ツヴァイ:いやあ、これでこのシナリオも終わりですね!

GM:対応する扉を見つけてから言って。で、こっちはそろそろメモを……。

ラグ:「良いように利用されたみたいね!」って言いながら、蓄音機の横のツボを叩き落しますよ。

GM:ツボが割れました!

ルシェド:小さいメダルとか出ない?

ツヴァイ:「おーおー、高いのに。多分」って、欠片を足でつんつんする。

ラグ:キングの後ろに立って頬を膨れさせてます。メモの内容は共有でいいんだけど……不真面目な態度が頭に来たので、RPを挟みたい。

ツヴァイ:あ、そうか、魔神語を聞き取ったわけで、書面じゃないのか。

ラグ:書き写したことにしてもいいかしら?

GM:じゃあ、改めて公開しますね。ルシェドさんもどうぞ。

ルシェド:どれどれ。




【テンデへの指令】

ミエル姫を殺害するにあたり、例の邪魔な義賊団を利用せよ。

そのための支援の物資は飛空挺とともに手配した。

手紙も活用すれば取り入る事は容易だろう。

姫が成人すれば奈落の予言の力を持つものが公王に続き二人になる。

ミエルが力を発現する前に攫い、葬ってしまうこと。


鉄面皮で知られるリジヤ公王も、いつまでも心理的な孤独と不安は隠せまい。

そこに追い討ちをかけるべく、移民を扇動して隣国との関係を悪化させよ。

ミエル姫を殺害すれば、スフバール聖鉄鎖公国と隣国との血縁は切れる。

移民が裏で糸を引いたとすれば、スフバール国内を国交断絶論に導くのはたやすい。


王家は永らく、近親婚による純血で血の力を継承してきたが、問題はミエルだ。

例えリジヤ公王に及ばない才能であっても、混血の女児が力を発現することが知られれば、他の国はこぞってスフバールと姻戚関係を求め、同盟を築くだろう。


スフバールの陥落は、魔神の世界の到来に一歩近づくだろう。

我ら、ゼガンの名の下に




ルシェド:ぐえ~……。

GM:SANチェックですかね?

ルシェド:マジかこれ……ミエルが不幸すぎる。

ツヴァイ:「まぁそんなことだろうと思っていたさ、義賊として許しがたい行為だ。いずれは魔王軍の殲滅も国の指針に加えねばな」

ラグ:「今後の指針とか言っている場合!? 今まさに、ポーンミエルが攫われて殺されそうになってるのよ!?」

ツヴァイ:「分かっている。が、あまり肩入れし過ぎるなよ。我々はあくまで国外の人間、それも義賊だということを忘れるな」

ラグ:「……分かってるわよ」

ツヴァイ:「その気持ちはお前が思う敵にぶつけろ。こちらはそのための準備をしよう」




GM:あ、ラグさんはもう一つ。判定できる箇所があります。

ラグ:え?どこかな。

GM:「そのための支援の物資は飛空挺とともに手配した」この部分ですね、メモでは省略しましたが。とある固有名詞が聞いてとれます。

ラグ:はいはい、あ、魔物知識ね。あー、聞き取りか。

ツヴァイ:ん、問題でも?

ラグ:目視じゃないし、ドルイド能力の対象にはならないだろうから……。

GM:ですねえ。

ラグ:セージで振るしかないなーってね。GM、目標値お願いします。

GM:対象は一体、11と14。




コロコロ……【4・2=6+6 達成値12 成功】




ラグ:成功はしたわね。

GM:名前だけわかります。『バルバ(3巻 P397)』……なんですが、その上に『強襲型』とついてます。

ラグ:それは……うーん、判断しづらい。

ツヴァイ:強そうな感じはある。

GM:これは公開します。基本的には『バルバ』なんですが、砲弾形態になれます。で、飛空挺から戦場にどーーーん! って、飛んでくる。

リシェド:そんなことある?

ラグ:ど真ん中に着地されて乱戦になると厄介ね、それが知れただけでも収穫はあったわ。




ラグ:ここまでRP混じりだったから、一度、情報をまとめるわね。



・テンデは魔神側の勢力で、ミエルの狂言誘拐と暗殺計画を立てた(いつからかはわからない)

・私たちにミエルの手紙が届き、暗殺計画に義賊団ジャッジメントキングダムが割り込むことになった(これはまったくの偶然らしい)

・ミエルは混血でも奈落の気配を感知する力を持ち、魔神勢力の脅威となる

・暗殺団の目的はミエルの暗殺に移民の過激派が関わっていることを演出し、内乱を起こしてスフバールを孤立させること




ラグ:「あのルーンフォーク、どこまで仕組まれてたのか操られてたのか。いずれにせよ、随分と馬鹿にされたものね!」と、床にあるツボを蹴飛ばします。

GM:ツボが割れました!

ルシェド:薬草とかないですかね。ないか。

ツヴァイ:かわいそうなツボ。

ルシェド:この指令書、「例の義賊団」って俺たちですよね?

GM:そうです、この邪魔モノキングダムめ。

ツヴァイ:ああ、そうね、この指令の変更って、我々と同行しながら臨機応変にテンデ側が対応した結果ってことですね。

ラグ:宿屋の親父も手先って言いました?

GM:言いました。

ラグ:じゃあ、どうにかしてこちらの動きをリアルタイムで仲間に伝えてたのか。

ルシェド:うーん、でもどうやって? なんか、描写あったかな……。

GM:ラッパです。音で、移民街に潜んでた仲間や飛空挺と逐一連絡を。

ルシェド:うわ、ずっと吹いてたな。マジか。

ツヴァイ:面の皮の厚い奴だ、ピエロだけに。

ラグ:GM、ツボはまだあります?

GM:ありますよ、窓際に。

ラグ:「なめた真似を!」とツボに攻撃。

GM:ツボが割れました!

ルシェド:……1ガメルくらいなら出たりしない?

ツヴァイ:出ない出ない。




――偶然が偶然を呼んで、大仕事になってしまった時は正直いって困惑した。

……だけど、ちっとも嫌な気分じゃなかった。

私たちがいなかったら、橋の件でミエルは死んでいたわけで、そのことを思うと王国ジャッジメントキングダムの『ナイト』として誇らしい気持ちになる。

この手で救った命を、目の前で奪われるなんて、そんなの許せない。 byラグ



――ラグの怒りはもっともだが、我が王国の立場もかなり危うい。

相手は我々を移民に雇われた暗殺団に仕立て上げるつもりらしい。

ムーンライトマイル号のニセモノまで仕立てるとは、念の入ったことだ。

視界の片隅でルシェドが蓄音機のレコードを回収するのを見た。

良い判断だが、無罪を確実にするには、やはりミエル自身の口から公王陛下に説明してもらうのが最良だろうな。 byツヴァイ




ラグ:このあとは、どうなるの?

GM:戦闘準備をしてもらって……で、確認がすんだら、飛空挺でダンジョンに突入してもらいます。

ツヴァイ:「さあどうした? 追いかけるぞ、我々は義賊だ、モノを盗まれる側ではないからな」って、シーンを〆ちゃう(笑)

ルシェド:あ、美味しいとこを……。

ラグ:ツボはある?

GM:もうないです。

ラグ:……ここが引き時のようね。




――みんながみんな、何かを無くした気分だった。

今までだって、飛空艇のメンツが変わる事はあったけど、それで絶対に会えなくなるわけじゃなかったしな。

でも、騒がしい半日を過ごして、俺たちの何かが変わったのかもしれない。

この喪失感は、今までのとは何か違う気がするんだ。 byルシェド

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