第8話 この子が私の妹なんです

GM:さて、ラグさんのお風呂シーンを終えたわけですが。

ツヴァイ:別に、という気分です。

ラグ:こっちだって、ありがたみを感じて欲しいとも思ってない。

GM:ツヴァイさん、心なしかゲンナリしてますね。

ルシェド:キングの独壇場ですよ、嬉しくないんですか?

ツヴァイ:だって、私の相手ってば明らかにめんどくさそうな人なんだもん。

GM:ツヴァイも相当にアレだと思うけどなあ。

ツヴァイ:ひどい。

GM:ともあれ、ツヴァイさんの本屋のシーンです、が。

ツヴァイ:が?

GM:開始前にちょっと選んでほしいことがあります。

ツヴァイ:ほほう?

GM:まず現状を整理させてくださいね。

一同:はーい。



GM:まずラグさん。ラグさんは現在、公衆浴場で座長が来るのを待っています。

ラグ:そうです。風呂あがりの牛乳を片手に。

GM:次にルシェドさん。あなたは宿に届いたピジョンメールの指示に従って、ペガサスを本屋に向かわせました。そのあとは宿屋で読書。

ルシェド:豪華な部屋は落ち着かないんで、外のベンチで読みます(笑)。

GM:あ、外にいる?じゃあ資材を持った人達が壁に何か取り付けたり、看板を外したりしてるのが見える。

ルシェド:ああ、例の改装工事っすね。了解。

GM:そして、そのペガサスが、公衆浴場でミエルを拾って本屋さんに向かっている……そこで、どうしようかなあ、と。

ツヴァイ:と言うと?

GM:時系列に沿ってツヴァイとミエルが合流した時点から開始するか、それとも、少し時間を戻してツヴァイの一人の場面から開始するか。

ツヴァイ:断然、一人舞台だな。

ルシェド:お、即決、いつもだけど。

ツヴァイ:いやさ、ドクドック? 例の作家がヤバイ奴なのは明らかなんだけども。

GM:まあ、GMも「変なヤツ」として描写してます。

ツヴァイ:ヤバさの程度を調べておきたいと思う、お姫様に会わせる前に。

GM:(こういうとこは普通に気が回るんだよなこの人)わかりました。では……。




 ラグとミエルが公衆浴場での聞き込みを行っていたのと時を同じくして。

 ツヴァイは町の中堅どころの本屋にいた。ツヴァイの視線の先には、やたらと濃密な緑黒まだら色の服を着て、何やら独り言を発したり、時に壁に頭を打ち付けてはうなっているグラスランナーがいた。




GM:という感じで。

ツヴァイ:変人度が上がってませんかこれ! ええと、この人目立たないのかな?

GM:グラランで背が低いのと、書棚に身を隠すようにしてますからね。まあ、他の客が一見しても「ああ、グラスランナーか」みたいな反応です。ちなみに、彼の視線の先にあるのは、ベストセラー小説のコーナーです。

ツヴァイ:じゃあね、そろーっと近づいてね、まずは彼の独り言を聞きましょう。

GM/ドクドック:彼の独り言はほぼ罵倒で占められています。「何もわからん素人め!」とか「そんなつまらない本を買うな!」とか。

ラグ:ダメなクリエイターの匂いがする(笑)。

ツヴァイ:もう少し眺めてみようかな。本の売れ行きを見てるっぽい?

GM:見てますね。まあ、基本的にはどの本が売れても気に入らないようですが。

ルシェド:なんじゃそりゃ。




GM:ですが……「私を月につれてって」を手に取る人がいると、より激しく罵倒して時に地団太を踏んだりしています。

ツヴァイ:ええ? 自分の本でしょ?

GM:そうです。ドクドックは自分の本が売れる度に、ひどい悪態をついています。

ツヴァイ:ちんぷんかんぷんだなあ。

GM:もう少し見てみますか?

ツヴァイ:このままじゃラチが開きそうにないしなー。話しかけるのはOK?

GM:OK。

ツヴァイ:では……「失礼、著名な作家のドクドック先生とお見受けしますが」と。

GM/ドクドック:「ヴォアァ!?」

ツヴァイ:うわっ! びっくりした、なんだこいつ。

GM/ドクドック:「な、なんだ君は、いきなり! ボクを……誰だと?」という感じで、若干プルプルしながら、あなたを睨み上げています。

ツヴァイ:「えーと……だから、ドクドック先生でしょ?」

GM/ドクドック:「……それだけかね?」と、若干不満げです。小説家のドクドックであることを否定はしていませんが。

ツヴァイ:ははあ、自分の知名度を気にするタイプか? じゃあ、こう言いますよ「かの名作、『私を月につれてって』の作者、乙女の英雄シヴァールの生みの親であると存じておりますが?」ってね。

GM/ドクドック:「……じゃない」

ツヴァイ:「ん?」

GM/ドクドック:「その名前とボクを、セットで呼ぶんじゃない! ヴォアアアアアーー!」と、彼は何かに耐えかねたように吼えますが、ハッ! と我に返って、そそくさと本屋を立ち去ろうとします。

一同:(呆然)




ツヴァイ:おっと、唖然としてる場合じゃない! 「待って下さいよ先生! ドクドック先生ー!」ここはひとまず説得します! GM、ノーブルで振れないかな!?

GM:ノーブルですか……RPの方向性次第かな。

ツヴァイ:えーと、そうだな……ちなみになんですが、「私を月につれてって」以外の著作はあるんですかこの人?

GM:鋭いですよ! あります!

ツヴァイ:じゃあ、そっちの本が上流階級の間で密かにブームということにしよう。

ラグ:完全にウソじゃないの(笑)。

ツヴァイ:ブームは作るものって言うでしょ。作っちゃいますよ、ノーブル技能で。

GM:うん、その感じならOKです。RPでいいところを突いてるので目標値は10。知力+ノーブルでどうぞ……ノーブル、いくつだっけ?

ツヴァイ:ふふふ……輝くノーブル5の文字を見よ! ファンブル以外なら成功!




コロコロ……【3・5=8+8 達成値16 成功】





ツヴァイ:どうかね諸君!

ルシェド:キングだなあ。

ラグ:詐欺師のキングだけど。

ツヴァイ:なんとでもおっしゃいな。



GM:では、ドクドックはあなたのハッタリに気を良くして、その場に留まります。そして……。

ツヴァイ:ん、なんだろう?

GM/ドクドック:「素晴らしい! やはり真に芸術を理解する人々はいたのだ!」とかなんとかわめきながら、手に持っていた本をあなたに押し付けます。

ツヴァイ:え、いらない。まだ読んでないけど、多分いらなそう(笑)。

GM/ドクドック:じゃあ「おっと、ボクとしたことが」って感じで、サインを入れて改めてプレゼントします。

ルシェド:あ、作家のサイン。

ツヴァイ:サインならミエルが喜ぶかな。っていうか、この人は本を持ってたの?

GM:すみません、描写忘れでした。彼は大きなかばんを持っているんです。

ツヴァイ:あ、そうなんだ。

GM:そのかばんには、はちきれんばかりに文庫本が入っています。その一冊を熱心にあなたに渡してくるわけですね。

ツヴァイ:この人の著作なんですよね、これも。

ルシェド:シヴァールの続きとかですか?

GM:「毒殺のダガー」です。

ツヴァイ:は?

GM:はい、毒殺のダガーです。

ツヴァイ:ダ、ダガー……???





――ミエルが本屋に着く前にコンタクトを図ったのは英断だった。今回ばかりは、俺は褒められていいのではないか byツヴァイ

――お疲れ様。 byラグ





ツヴァイ:新しい本ですか?

GM:とっくに絶版された……みたいな感じがします。表紙は安っぽい厚紙。黒い髑髏の図案には共通語ででかでかと『殺』と書かれ、髑髏の目には毒々しい色の液体が垂れたダガーが刺さっています。側面は焼けて黄ばんでる。

ツヴァイ:(爆笑)売れてなさそうですね。

GM/ドクドック:「ン? 君何か言ったかね?」

ツヴァイ:いまのはPL発言なので。

ルシェド:上手く地雷を避けた(笑)。

ツヴァイ:ちなみに、有名な本なんですか?

GM:目にしたことないし、耳にしたこともない。ツヴァイはキャラ的には古本屋って行きますか?

ツヴァイ:まあ、ツヴァイ、こう見えて読書はすると思うけど。

GM:じゃあ古本屋で一瞬視界に入ったことはあるかもしれない。

ツヴァイ:ふぅむ、なるほど。

ルシェド:どんな本なんです?ちなみに。

GM:そうだなあ。ツヴァイは興味ありますか?

ツヴァイ:ええ?まあ、ありますよ。

GM/ドクドック:じゃあ、貴方が興味ありげにすると「……どうだね、読んでみないかね?」とフンスフンスしながら聞いてきます。

ツヴァイ:これ、ちょっと読んでみていいんですか?

GM:もちろん! すぐ公開しますね! 毒殺のダガー読みますよー(笑)これ大好きなんで。

ラグ:リーダー、本当に読みたいの?

ツヴァイ:キャラ的には読みたくない、でもGMが楽しそうだからプレイヤー的には読みたい(笑)




――しぶしぶ、「毒殺のダガー」を読んだ。

主人公は無職の青年で名前は作中では呼ばれない。ページの半分はこの世界に対する罵倒が、もう半分には働かないことを正当化する言い訳が書かれていて、主人公の台詞は全て独り言だった。

第一章から終盤までグダグダとして行動しない主人公だったが、最後のページでいきなり登場した妹に叱られ、結局は妹に救済されるという結末を迎える。

「これは俺を殺す言葉、毒のダガーだ」という台詞が名言のつもりなのか、作中にたびたび現れるが、正直よくわからない。 byツヴァイ




ツヴァイ:え、何かこれ、モデルがあるの?

GM:なにもない。私がすごい売れなさそうな感じで書いた。

ツヴァイ:そうだね……。

ラグ&ルシェド:(笑)

GM/ドクドック:「どうだねキミ、ちょっとそこの台詞読んでみないか」とささやきながら、彼は文中の「これは俺を殺す言葉、毒のダガーだ」という主人公の台詞を指さします。これは名言ですよ!

ツヴァイ:(笑)

GM:ドクドックは耳を傾けてますね。

ツヴァイ:そうですね。ちょっと思ったより……精神的にはバックステップを連打したい。

GM:とうとう謎表現が飛び出しました。で、キング、どうするんですか?さあさあさあ。

ツヴァイ:えー、「これは俺を殺す言葉。毒のダガーだ」

GM/ドクドック:「最高傑作だ~~~~あ!!!! これは俺を殺す毒のダガーだああ~~!!!!」と叫びます。

ツヴァイ:うわ、だいぶやばいやつだったな。

ルシェド:やばいな……。

ラグ:キングが珍しく困っているのを見るのは楽しいけど、たしかにこれはラチがあかないわね。




ルシェド:そういえば、元の目的の方は大丈夫ですかね?

ツヴァイ:……なんだっけ?

ルシェド:サインですよ!

ツヴァイ:そうだった。思考がバックステップしてた。というか、重要なのはこの変なヤツが、大人しく『私を月につれてって』にサインを書くかどうかなんだが。

GM:シーンの目的としてはそうですね。


ラグ:もう、このドクドックというのがどういう人なのか単刀直入に聞いてしまっていいかも。

ツヴァイ:じゃあ「しかし、先生。さっきは一体何を怒っていたんですか?」と。

GM/ドクドック:「知りたいか! あの忌々しいシヴァールと、シヴァールに夢中な女共め! うう、ヴォアアアアアーー!」

ツヴァイ:正直知りたくないんだけど、こいつどうしようもねえな……。本当どうしようか。

GM:ちゃんと名言を言ってくれた分、大分好感度は上がってますよ(笑)

一同:(爆笑)

ツヴァイ:あれで好感度上がってるなら、情報下さい(笑)

GM:そうですね。では、彼の人物像を公開します。RPだといい加減GMも叫ぶのがしんどい。

ラグ:最初は、マイクの故障かと思った。

ツヴァイ:一瞬、張り合おうかと思ったけど虚無を感じてやめたよ!

GM:懸命でしたね。

ツヴァイ:そこは褒めなくていいから、情報をプリーズ。

GM:OK。彼は「自分の書きたい話はさっぱり売れないのに、生活のためにヤケクソに書いた本がヒットした結果、シヴァールの物語を書き続けることになった」という人です。

ルシェド:コナン・ドイルとシャーロックホームズの関係みたい。

ツヴァイ:「この、『毒殺のダガー』こそ、先生の……あー、真髄?みたいな?」

GM/ドクドック:「そうだあ! ボクの魂と言っても良い! なのに、無知な女たちは中身の無いシヴァールの物語にばかり興味を示す! 女なんて! 女なんて……みんな毒だああ!!!」

ルシェド:多方面にこじらせてるなあ。女性ファンが多いのは事実なのにもったいない。




ツヴァイ:彼が恨み節を吐いてる理由はわかりましたよ。ちなみに『私を月につれてって』ってどのぐらい売れてるんですか?

GM/ドクドック:じゃあドクドックの口を借りて「ボクの印税……総売り上げの7%だけで、年間8000ガメルだぞ! つまり世界全体ではそれ以上に馬鹿な読者が買ってるってことだ! ヴヴヴヴヴオオオオオ」

ラグ:えっ、本当に大ヒットじゃないの。何が不満なのか本当に理解できない。

GM/ドクドック:彼は書店の床をたたきながら答えてくれます。「よく考えてみろ。年間で8000ガメル。ちゃんと入るんだぞ!! 書くだろう!! 書くに決まってるじゃないか!!!! 『毒殺のダガー』はそれ以上に売れてなくちゃおかしいのに! 絶ッ……」

ラグ:あ、絶版って言いかけてやめた。やっぱり絶版なんだ。

ルシェド:いや、至言だなぁ……最後以外は。

ツヴァイ:まあ、売るつもりで書いて本当に売れるんなら才能は本物なんですね。

GM:そういうことです。再度、まとめますと「シヴァールのことが嫌いな原作者をなだめすかして、シヴァールの本にサインをもらいましょう」と、いうことです。あと、もてない彼は女嫌いもこじらせています。

ツヴァイ:うーん……ノーブルを使うならここからだったか。あ、GM。

GM:はいなんでしょう。

ツヴァイ:ミエルの到着まで、あとどれくらいですか?

GM:えー、5分です。

ツヴァイ:くそ、さすが我がウインドステップ、快足だな。

ラグ:落ち着いて、こういう時は落としどころをまず決めましょう。

ツヴァイ:そうだな、うーん……こいつとミエルは会わせないほうが良さそうだが。

ラグ&ルシェド:賛成。

ツヴァイ:となると、ミエルを外で待たせて、ツヴァイが本を預かる。その先は徹底的に口八丁で押し切るしかないな。

GM:おっ…では、有利な補正をつけるのでRPどうぞ。ここまで結構長引いたので、概要でお願いします。

ツヴァイ:「『毒殺のダガー』と『私を月につれてって』の両方のファンである病弱な妹がいるんです! 何卒、『私を月につれてって』に先生のサインを!」って感じで。

GM:ふむふむ。他、何かありますか?

ツヴァイ:……んじゃドクドックさんの持ってる『毒殺のダガー』も全部引き取りますよ。

ラグ:燃料代わりに燃やすんでしょ。

ルシェド:ムーンライトマイル号は『毒殺のダガー』で飛んでいたのか。

GM:では、妹という言葉に+1ボーナス入れていいですよ。知識+スカウト技能で、目標値は13!

ツヴァイ:いけ、俺を殺す毒のダガー!




コロコロ……【3・4=7+4+1 達成値12 失敗】




ツヴァイ:ダメだ、変転しても届かない!名言まで言ったのに!

ルシェド(言ったからじゃないかな)

ラグ:え、これ、どうなるの?

GM:失敗となると……。「交渉が長引いた結果」という処理にしますね。

ルシェド:いわゆるピンチってヤツだコレ!

GM:外から、ぱからっぱからっと軽やかな蹄の音がします。そして、その音が鳴り止んだかと思うと……。

ツヴァイ:うげ。

GM/ミエル:小さな興奮した息遣いが接近して来ます。「キング! ありがとう! 私のために頑張って、作家さんを見つけてくれたのね!」と、快活な声と共にミエルが店内に駆け込んできてしまいました。

ラグ:合掌……。

GM:彼女は、ツヴァイの横にいるドクドックを見つけると、両手に抱えていた『私を月につれてって』を突きつけて……。

ツヴァイ:ええい、最後までやるしかない! いったん、ミエルを引き止めて「せ、先生! この子が私の妹なんです! こう見えて、本当にすごい重いヤバイ病気なんです!」って、同情を買う為に言うだけ言うよ(苦笑)。

GM:では、ここは描写で。「先生! サインお願いします! 私も先生の本の中に出てくるようなお姫様なんです!」と、ミエルが顔を輝かせて言います。それを見たドクドックは、馬鹿にしたように「フン」と鼻を鳴らします。

ラグ:再度、合掌。

GM/ドクドック:「女はみんなこれだ。愚かでバカな生き物だ。シヴァールなんかに現を抜かして、アホで、頓珍漢で、俺に振り向きもしない!」

ツヴァイ:「最後のは本人の問題だろ」と、口の中で。

GM/ドクドック:「馬鹿で愚かな生き物なんだ、ウヴァー!」と、突然叫びだしますね

ツヴァイ:「すみません、ドクドック先生。でもこの子は、僕の…私の妹なんです。妹を悪く言わないでもらいませんか?」

GM/ドクドック:「その中でも断トツのアホが、自分を姫だと勘違いしているタイプの女だ! つまらん人生から、お前を都合よく連れ出す王子がいるとでも? いるわけないだろ! ばーーーーか!」と言って、彼はあなたの後ろのミエルにダガーを刺します。実際には持ってませんけど、演劇でブスっていく。

ツヴァイ:じゃあミエルの代わりに刺されて倒れる……ふりをしよう。「どうか……サインを……がくっ」

GM/ドクドック:「なんという悲劇! 見ろ馬鹿女! お前のせいだ! お前の愚かさが、また一人ボクの芸術を理解する人間を殺したのヴォアアアアアーー!」と言いながらミエルから本をひったくって……。

ツヴァイ:やべえ、今回GMが何を言ってるのか、わかるけどわからない、本気で。

GM/ドクドック:「これは……ボクの真のファンであるお前の兄への手向けだ……」と、ミエルの本にサインと罵倒を書きつけ、そのまま何事かわめきながら通りの雑踏へと消えていきました。

ツヴァイ:ええ……サインはするのか(笑)。これ、成功なのか失敗なのか。

ラグ:リーダーに対してって感じでしたけど。試合に勝って勝負に負けた、的な。



ツヴァイ:じゃあ、起き上がってミエルに「サインはもらったぞ!」と声をかけるけど。

GM:ミエルは唖然とした顔で、しかし少しずつ、通りのほうに後ずさりしていきます。手に持ったサインと罵詈雑言が書かれた本と、自分の顔を交互に手で触れてますね。

ラグ:これマズくない? ショックの予兆っぽく見えるけど……。

GM:で、震えて涙をぼろぼろ流し始めます。あらかじめ言いますが、ここはイベントシーンとさせてください。

ツヴァイ:悔しいが仕方ない。

GM:ミエルは本屋の外に振り返って「お姫様なのよ……わたし」と、通りに向かってつぶやきますが、数人の通行人がチラっと見るだけで、彼女が公王の妹であることに誰も気づかず、みな通り過ぎていきます。

ルシェド:ああ……。

ツヴァイ:一応、彼女の肩に手をかけようとするけど?

GM:では、ツヴァイさんは、ドクドックの置いていったかばんに足を取られて転倒します。

ツヴァイ:あの野郎はどこまで迷惑なやつなんだ!

GM:起き上がろうとしたツヴァイさんの耳には「シヴァール……わたしの王子様……」というミエルの悲しげなつぶやきが響き、顔を上げた時には、走り去ったのかミエルの姿はありませんでした……というところで、一度、シーンを終えます。




――後でリーダーから詳しい話を聞いたが、シヴァールの作者はとんでもないヤツだったそうだ。でも、そんなヤツが、しかも嫌々書いた物語の一巻を、俺は宿屋で読みふけってしまった。

素直にいい話だと思った、才能ってのがあるんだろうか。

だが……本当にとんでもないことは、この少し後、俺の目の前で起きたんだ。 byルシェド

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