第7話 俺たちはランプの魔神かなんかですか
GM:では、一方そのころ。ということで……キング&ラグさんお願いします。
ルシェド:頑張ってください!
ツヴァイ:心得た。
GM:あなたたちは、テンデの案内で移民街の中でも、比較的上等な宿屋がある区画にやってきました。
ラグ:移民街の区画?
GM:崖のあちこちに点在してるって言ったでしょ。で、それぞれの集団というか、集落ごとに特徴がある。種族で固まってたり、信仰だったり。
ラグ:あー。
GM:「剣の町」に近い上層ほど治安は良い。
ツヴァイ:ふむふむ。
GM:まあ、そこまで詳細に作りこんでるわけではないです。プレイヤーの質問に答える形で設定を盛っていこうかと(参考画像を出す)
ラグ:(参考画像を見て)ははあ、蜀の桟道ね、なるほど……。
ツヴァイ:隠れ橋、相当危険な代物だったんですね。PL的には1000ガメルもらっても渡りたくない。
GM:ちなみに宿自体はそこそこの数あるんだけど……。PCがしらみつぶしに探す?それとも、テンデがリストアップした中から選ぶ? どっちでも良いよ。
ツヴァイ:それぞれのメリットを聞きたいな。
GM:テンデ君任せにするなら、その間、PCはあちこち散策できます。
ラグ:テンデはどういう風にリストアップしてるのかしら?
GM:比較的”まとも”な宿を、値段の高い順に。
ラグ:わかりやすい(笑)。
ツヴァイ:義賊気分を味わってもらうなら、すごく汚い宿を選びたいけど(笑)
ラグ:私は本音を言うと、移民街に興味があるのよねー。
ツヴァイ:そうだなあ、屋台村楽しそうだったし、我々も観光がしたい……ということで、GM!
GM/テンデ:「はいはい、ではこの中からお選びいただければ、ようございます」と、宿屋のリストを公開しますね。
テンデのリストアップした宿屋は、最低でも一泊一人50ガメルという、なかなかの値段だった。自分たちの懐事情を思い出し、眉間にしわを寄せる義賊団の面々だったが……。
GM/テンデ:「費用は全額、王室がお持ちいたしますです、ハイ!」
ラグ:高いところ(一泊一人250ガメル)にしましょう!
ツヴァイ:賛成。
ルシェド:はい。
GM:というわけで、移民街の高級宿です。名前、どうしようかな……「犬の舌なめずり亭」で。
ツヴァイ:ひどい名前だ、高いのに(笑)
GM:いやね、宿屋の主人の設定を決めてあってね、リカントなんだけど。
ラグ:ほほう
GM:「よく舌をしまい忘れる」ってシナリオテキストに書いたのよ。
ツヴァイ:街の人が勝手につけた名前でしょ、絶対。
ルシェド:ついでに値段も忘れてくれたらなあ。
GM:では、三人は「犬の舌なめずり亭」を訪れます。リカントの主人らしき人物が、あなたたちに話しかけます。が。
ツヴァイ:が?
GM:……何を言ってるかわかりません、リカント語なので。
ラグ:人間に戻る方法も忘れてるんじゃないの、大丈夫なのこれ。
ツヴァイ:仕方ないなあ、じゃあ思い出させてやろう「主人、一番高い部屋を頼む……サービスも全部つけてな」
GM/宿の主人:では主人はキョトンとしたあとで、しゅるるん~っと人間の姿に戻りますね。そして耳をかきながら改めて挨拶をします。
ツヴァイ:まさか人語も忘れてるってことは。
GM/宿の主人:「いやあ、年を取ると、どうにも忘れっぽくていけねえや、へへへ……」
ツヴァイ:なかったか(笑)
ラグ:人間状態だとどんな人?
GM:スケベそうなおっちゃん。舌は相変わらず出てる。
ツヴァイ:「あー、主人。このあと、やんごとなきお方がここに宿泊される。金は弾むから、丁重にもてなすように」と言って、チップを掴ませておこう。
GM/宿の主人:「えっへへ……間違いなくこの街で一番のスイートですぜ。運がいいよ、お客さん、今日は値引きできますぜ……えへへ」
ラグ:「値引き?本当に大丈夫なのこの宿。覗き見とかされない?」
GM:ええと、彼が言うには、今日はこの宿に改装工事が入るのだそうで……騒音ぶん、値引きしてくれるそうです。
ツヴァイ:「改装工事だって? ちゃんと泊まれるんだろうな?」と念押ししますよ。
GM/宿の主人:「外装の補修さ、部屋でヨロシクやるジャマになったりはしねえよ。な、泊まりなよ、いい酒もつけるからさぁ」もみ手、もみ手。
ラグ:「泊まりましょう」
ツヴァイ:「はい」
このあと、値切りRPのスイッチが入ったラグと宿の主人の交渉を経て、最終的に150ガメルまで値段は下がった。
――補修工事のついでに「ラグの舌なめずり亭」に看板を変えたほうがいいのではないだろうか。 byツヴァイ
ルシェドと合流するまでは少し時間があるので、部屋の予約を済ませた二人は荷物の運び込みとペガサスの世話を宿に任せ、ミエルのお願いを叶えるために街の下見に出かけた。
――《「私を月に連れてって」の作家からサインをもらいたい》
「よくわからないものを見た」というのが正直な心境だ。結論から言えば、件の作家の足取りを追うのはそんなに苦労しなかったのだが。大きい本屋の何件かで聞き込んだ結果、簡単に彼を見つけることができた。
作家の名は「ドクドック」。変てこな名前の人物だが、輪をかけて妙ちきりんなことに、ドクドックは自分の本を買う人間を物陰から見ては、ぶつくさと独り言を呟くのが趣味なんだそうだ。そのために「ドクドック」は朝から晩まで街中の本屋を巡回しているらしい。
実際に彼がそうしてるところに遭遇したが、実に厄介そうな人物と判断し、今回は遠巻きから眺めるだけにとどめておいた。 byツヴァイ
――《劇の主演俳優にファンレターを送りたい》
例の大劇場であれば、公園前の劇団員がすでに会場入りしているはず……そう見当をつけて直接交渉を試みることにした。
裏の無い、純粋に芸に身を捧げたメリアとグラスランナーの集団。ミエルの身分を隠した他は、こちらの事情をできるだけ素直に伝えたところ快く話を聞いてくれた。(遺跡ギルドの言うことを鵜呑みにするのは考え物だけど、今回は正解だったみたい)
肝心の座長にして花形役者「アルテミシア」が留守だったのが残念だったけど、居場所の手がかりを得ることには成功した。
……したのだけど、これまた、私にしかできないことが増えてしまった。次に行くべき場所が「公衆浴場」だなんて。 byラグ
GM:では、ほどよく時間が経過しましたので屋台村組も合流してもらいます。ここで「犬の舌なめずり亭」が誇る高級部屋の全景をばばーんっ。
ルシェド:「おおー! めっちゃ豪華じゃんっ!」
GM/ミエル:「ドメスティック! 最高に狭くてほこりっぽいわ!」
ルシェド:「え、嘘だろ、これで狭いのかよ」
GM/ミエル:「ああ!シヴァ―ルの訪れを待つ、町娘の気分……」って言いいながら、窓枠に頬ずりしてますね。
ルシェド:これ、GMの出した画像、相当高級な感じの部屋ですよね……。
GM:パンピー基準ではちゃんと高級な部屋ですよ。宿の主人が奮発したのか、調度品も中々です。高そうなツボがあります、窓辺にも、床にも、棚にも。
ルシェド:ツボばっかりじゃないっすか。
GM/テンデ:「おや、これは良いものがありますね」とテンデが窓際にてけてけと歩いて行きます。
ルシェド;「お? なんだ?」
GM/テンデ:「一曲おかけしましょう」と、窓際に置いてある蓄音機に、お腹から取り出したレコードを乗せます。
ルシェド:「へえ、蓄音機だって、すごいっすね! ね?」……あれっ?
ツヴァイ:「……」
ラグ:「……」
ルシェド:「キングもナイトもどうしたっすか?」いやまあ、同席してるから、事情は知ってるけども(笑)
ラグ:まあね(苦笑)。じゃあ、こちらの町探索で得た情報を共有しますね。かくかくしかじかで。
GM:かくしか、OKです。
ルシェド:「はあー、それは何というか、面倒な話で……」ちらっとミエルのほうを見ますよ。
GM/ミエル:「ビショップ~! お願いがあと二つ! 二つも残ってるのよ!」と。あ、型抜きはテンデに預けておきます。
ルシェド:「はいはい聞きますよ……俺たちはランプの魔神かなんかですか」
ラグ:「そうね、叶えてしまいましょう。『三つにして!』って言われる前にね」笑いながら、気持ちを切り替えます。
ツヴァイ:「ジャッジメントキングダムに不可能はない、とだけいっておこう」しかし、ペガサスがないとやる気が出ないな―。
GM:ウインドステップちゃんは、宿の馬小屋にて待機です。
ツヴァイ:そうそう、クエストの達成順についてラグと相談したんだけどね。
GM:はいな。
ラグ:「まずは、花形役者のアルテミシアさんに会いに行きましょうか」とミエルに声をかけますよ。
GM:あ、そっちから。
ラグ:なんかね、リハーサルとかあるだろうし、早いほうが先方にも迷惑じゃないかなって。
GM:なるほど。
ラグ:で、付け加えて「例の役者さん、劇の公演前に、必ずお気に入りの浴場に行くらしいの。……私の言ってること、わかるわよね?」って言う。
ツヴァイ:はいはい、脱げばいいんでしょ。
ラグ:デバフかけて殴るわよ。アルテミシアさんは女優なの! 女湯にて男子禁制! ……ってことよ!
GM:(建物の前で待てばいいと思うんだけどなあ)
紆余曲折を経て、ミエルの第一の願いである《自分で自由に宿を取ってみたい》は達成された。
義賊たちは、新たに知った二名のNPCの情報を元に、次の目標として、《劇の主演俳優にファンレターを送りたい》という願いを叶えるべく、ラグとミエルの二人で浴場へ向かうことにした。
GM:ちなみに、他の二人はその間どうしますか?
ツヴァイ:例の作家……「ドクドック」を見つけて本屋で待機しますよ。
GM:あ、なるほど。
ツヴァイ:もし、劇の開始に間に合いそうになかったら、無理やりさらって連れていく(笑)。
GM:では、ルシェドさんは?
ルシェド:序盤で買った「私を月に連れって」を最後まで読もうかと。
GM:このシーン、ほぼ待機になるけどそれでもいい?
ルシェド:さっき見せ場を貰ったので……ぶっちゃけ、長いRPでガス欠になったので、充電時間をください!
GM:OK、では「私を月に連れてって」の残りのテキストを渡しておくので読んで置いてくださいな。
――「おうちにお帰り、君には果たす役目がある」
シヴァールには、別れの間際に少女たちを家に返すための決め台詞がある。
その言葉は、ひと時の自由な夢を見せる義賊シヴァールが、しかし、最後の最後までは彼女たちの自由を保証できない、王子としての未熟さから出ている……。
俺はそんな風に思った。別れの言葉の中に彼の無力感を感じてしまう。そんな気がしたんだ。 byルシェド
GM:さて、公衆浴場の一つにやってきました。目的はここに訪れる座長のアルテミシア嬢に会うことです。
ラグ:劇団員が言うには、『気合を入れるために、座長は公演前にお気に入りの浴場を訪れる』って話だったけど。
GM:そうです。で、道具係のグララン君はちょっと含みのある感じでした。「団長は美人だよ……見た目はね」と、こんな感じでした。
ラグ:うーん、引っかかる言い方だわ。
ツヴァイ:グラスランナーの言うことだし、イタズラ心はあっても、悪意は無いと思うんだけどね。個人的には。
ラグ:よし、まずは建物を見てみます。
GM:建物なんて立派なものではないですけどね。掘っ立て小屋みたいな番台と男女に分かれた脱衣場。周囲から浴場を隠す高い木製の囲い。
ラグ:ここでも汲み上げた水を利用してるわけね。
GM:露天風呂ですので、囲い越しに上る湯気が風車によって空に散っていきます。
ラグ:じゃあGM、とりあえず中に入ります。
GM:あ、入る。(施設の)中で待つんですね。
ラグ:はい! お風呂に入って待ちます!
GM:(ええー! 風呂の中で!? 暗殺の危険は!?)あのう、ラグさん。
ラグ:はい?
GM:一応、警告。当然丸腰ではいることになります(戦闘に不利だよ)。
ラグ:それはそうだろうなぁ。
GM:あと、露天風呂です(上から狙われやすいよ)。
ラグ:ああ、そっか、天井が無い。
GM:(よし、警告は効いたようだ)で、どうしますか?
ラグ:露天なら明るそうだし、例のアルテミシア嬢を見逃すことは無さそうですね、お風呂に入ります!
GM:(マジか、姫様は同行させないよね?)ち、ちなみに、ミエルのことは……?
ラグ:あ、男装か。でもフード脱いで髪の毛を解けば問題ないか。
GM:(問題はそこじゃなーい!)んんー、そのまま一緒にはいるのね!?
ラグ:ミエルが露天風呂を嫌っていわなければ。
GM/ミエル:ミエルは喜びますよ「実は私、リジヤお姉さまとも一緒にお風呂に入ったことないのよね。だからちょっと緊張するわ……」みたいな感じもありつつ。
ツヴァイ&ルシェド:(にこにこ)
GM:(この人たちもダメだー!)ふがー! じゃあ、お風呂のシーンに移動します! 外した装備の数値は修正しておいてくださいね!
ラグ:GMは何を焦ってるんだろう?
結局PT全員、「護衛対象と共に丸腰で居る」という危険性にはシナリオ終了まで気づかなかったが、それはまた別のお話。ラグとミエルの仲を深めるRPを交えつつ、浴場の利用者からアルテミシアの情報を聞き出していく。そして、有力な情報を持つメリアの利用者を見つけ出した。
ラグ:じゃあ、そっちのサウナの中にいる人影とお話してみます。かくかくしかじか~な人を探してるんですが。
GM:白樺のメリアが保湿液をぺちんぺちんと顔に馴染ませながら、苦笑交じりに答えてくれます「役者のメリア? あの迷惑モノのこと?」と。
ツヴァイ:なんで白樺?
GM:外国のサウナに置いてあるから。白樺の枝で体をぺちぺちするんだって。だからこの子もぺちぺちしてる。
一同:ぺちぺち(笑)
GM/ペッチ:名前、ペッチでいいか。「私なら、あの子が来る前にさっさと湯船から出るね」だそうで。
ラグ:「あら、そうなの?まさか、お茶でも煮出すとか……」
GM/ペッチ:「それならまだいいよ。何せ、あの子はヨモギのメリアだから……匂いが、ねえ?」
ルシェド:ヨモギ(笑)
ラグ:これは予想外だった。でも確かにヤバイかも(笑)。
GM/ペッチ:「本人に悪気は無いし、薬草風呂が好きな人もいるだろうから、あんまり悪くは言わないけどね」
ラグ:「も、もし一緒に入ったら、どうなるのかしら」
GM/ペッチ:「まあ二、三日はヨモギのにおいが取れないね」と、くわばらくわばらという様子です。肌の色も変わるかも。
ラグ:ゲーム的なペナルティは無い?
GM:無いです。
ラグ:無いんだ(笑)。でもシリアスな場面に支障が出そうなのは困るかも。
GM:爽快とした登場シーンに漂うヨモギの香り……。
ルシェド:そこまでだGM。
ツヴァイ:ウィンドステップちゃんには好かれるかもしれん。
ラグ:これ以上話が膨らむ前にやめておこう(笑)。
GM:ちなみに、アルテミシア座長……ヨモギのメリアはまだ来てません。ここで待っていれば確実に会えますが。ミエルは「どうしましょう? ナイトお姉様」と尋ねますよ。
ラグ:「時間が勿体ないわよね……となると」GM、ピジョンメール、いい?
GM:いいですよ。どこに送りますか?
ラグ:宿のルシェドに飛ばして、ペガサスをここに着けてもらうわ。そこからツヴァイのいる本屋さんにミエルを届けてもらいます。
GM:それはOK。で、ラグさんは?
ラグ:問題なければここでアルテミシア嬢を待ちます。正確には脱衣所で。
GM:了解です、では、ペガサスが浴場の前に迎えに来たものとします。
ツヴァイ:「ひひーん!」
ラグ:騎手のほうが来てどうするの! ……じゃあ、ミエルを送り出します。で、その前に。
GM:ん、何かな。
ラグ:「
GM/ミエル:「わああ! エキゾチック! これ、とても素敵! お姉さまが作ったのね」と、鼻血を。
ラグ:「体に悪いから、もう少し自分を抑える方法を学びなさい!」と、叱るけど満更でもない。「喜んでくれるのは嬉しいけど……」ってポツリと。
一同:(笑)
ツヴァイ:はー、材料で買ったのは手作りのためか。やるじゃないですか。
ラグ:宿探しの合間に作ってたことにしてもらったわ。形状は……考えてなかった(笑)。小さな袋に入ってて、外からは見えないってことにさせて(笑)。
ルシェド:和風のお守りっすね、これ。
GM:用途は同じようなものですしね、アルテミシアには会えませんでしたが、ミエル的には大喜びです。
ラグ:うふふ……しかし、私は何のためにお風呂に入ったのかしら?
GM:(あなたが勝手に入ったんでしょ!)
――振り返ってみればこの時の私は明らかに浮かれていた。
妹のようなミエルと関わるうちに、見通しが甘くなっていたのかもしれない。 ヤツはずっと傍にいた。私たちの目の前で手下に合図を送り続けていた。のうのうと、いつも通りの顔で嘲笑いながら。
私の中の怒りは、全てが終わった今も完全には消えないでいる。 byラグ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます